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16.少女は狩りで新たな魔法を習得する

場面は森の中で教育開始の日。教育方法を確認しあった後、食糧調達の訓練をする。

 それから二人は、お互いに無言で森の中を進み、目的地の狩場に到着した。


 デイビードは、いつものように風向きを確かめてヌタ場を中心に少し回り込んだ後、隠れやすい場所に位置取りした。ユリアは、デイビードの後を着いていきながら、デイビードの動作や仕草、目つきや視線などを注意深く観察して、いつものようにデイビードの側に位置取りした。


 しばらく待って、イノシシの親子連れ5匹がヌタ場に現れて、あたりを警戒した後、5匹そろって泥浴びを始めた。


 デイビードは、ゆっくりと短弓に矢をつがえて弦を引き絞り、イノシシの方を注視してしばらく待った。すると、すぐに親イノシシの動作が少しぎこちなくなり、何かを探すように頭を回してデイビードの方を向いた瞬間、イノシシの動きが止まった。


 デイビードは、その瞬間を見逃さず矢を放った。矢は軌道を追えないほど速く正に矢のような速さで飛んでいき、正確にイノシシの喉元に突き刺さった。


((お父さん、いつも一発必中ね。見事な腕前だわ。))


 ユリアは、教育方針通りに、デイビードの一挙手一投足と合わせてイノシシの様子を目を皿のようにして観察していた。ユリアは、これまで見てきたデイビードの狩りでの弓猟(きゅうりょう)の様子と今回の観察結果を比較して得心したようにガッツポーズをとった。


((うん、うん。これで、金縛り魔法いただきかも。))


 デイビードは、イノシシが倒れるのを見て、あたりを警戒しながらヌタ場の方へゆっくり進んだ。イノシシは、体重100kgはありそうな巨体だった。少し息があったがすぐにデイビードが狩猟刀で止めを刺した。デイビードは、この巨体を担ぐことはあきらめ、両足をロープで括ってヌタ場から離れるように引き摺って行った。50mほど行ったところで、木の枝にロープをかけてイノシシの下半身をできるだけ浮かせて体を傾斜させ、二人は血抜きを行いつつ水魔法と氷魔法を使って巨体の冷却をした。


 冷却と血抜きが完了した後、ユリアは、デイビードに目配せをしてデイビードの応答を待った後、自ら進んで収納魔法でイノシシだけを収納した。イノシシが消えた場所にはロープだが残されていた。デイビードは、感心するように頷きながらユリアに向かってサムズアップをした。


((はい。お父さんに、これを担げとは言いません。))


 二人は、十分な食肉が確保できたことに満足して狩りを切り上げ、塩漬けの燻製肉で簡単な昼食をとった後、すぐに来た道に沿って引き上げることにした。


 デイビッドは、ユリアを見ながら確認するように言った。


  「ユリア、俺の一挙手一投足をよぉーく観察したか?」


 ユリアは、デイビードにサムズアップをしながら言った。


  「ええ。ばっちり観察させてもらったわ。これまでに、あたりを付けていた発動方法らしき動作を再確認できたから、仕掛けた括り罠に獲物が掛かっていたら実践してみるね。でも、考えてみると、精神的にも、おそらく、肉体的にも、これは相当に過酷で厳しい教育方法かも知れないわね。」


  「おやおや、もう、早速、弱音の愚痴かい?まだ、甘えまで行ってないだけましだが。お前の得意とする方法で教育してあげているんだけどな。」


  「弱音でも愚痴でもないわ。一般的な話として言ってみただけ。だって、師匠というお手本があっても何が正解か誰も教えてくれず、下手をすると自分で延々と探し続けることになるでしょう?」


  「なるほど。最後の弱音と甘えは、師匠に懇願して、言葉で動作や理屈を教わった上で手取り足取り実践で手直ししてもらうことか。」


  「そうなるわね。でも、お父さんは、そんなことしてくれないでしょ?心配しなくても、魔法の訓練としては今のやり方の方が私に合っていると思う。生活魔法なら発動方法も含め基本的なことは理解しているし、きっと新たな魔法もその応用で発動方法までたどり着けるわ。」


  「俺も、そう信じてこのやり方で教育をやっている。お前のその覚悟は頼もしい限りだ。」


((えー。おとうさんは、初めから知ってて括り罠で実践しろとか言ったのかしら。))


  「それにしても、その話し方を、もう少し幼い方へ下方修正してくれたらありがたいんだが。俺の目に見えるお前の幼い姿と、耳に聞こえてくる大人びた話しぶりとが不整合を起こして頭を混乱させるんだ。」


  「わかったわ。善処します。あっ、油断した。言い直すわね。うん。ユリア、しゃべり方がんばる。」


  「おう、ありがとな。なんか、そのしゃべり方もわざとらしいが、気にしないことにする。それじゃー、頑張って帰るぞー。」


  「おぉー。」



 二人は、ユリアを先頭にして、帰りの途中で薬草採取訓練をすることにした。


 ユリアは、草むらから生える植物の姿および周りの環境と、スピノザ神父に見せてもらった薬草図鑑の絵や説明書きとを頭の中で見比べた。そして、確認が取れたものについて、名称と効能をデイビードに説明しながら小刀とスコップで採取して、収納魔法に収納していった。


 デイビードは、ユリアが次々に採取する植物の実物と説明内容を自分の記憶と照合して、すべて間違いないことを確認して、その度にサムズアップをして見せた。



 そして、二人は、往きにユリアが仕掛けた3カ所目の括り罠に、大きな鹿が掛かっていて必死に逃れようと暴れているのを発見した。



少女は狩人の男が短弓で弓猟するのを観察して、それまで当たりを付けていた魔法発動方法が間違いないことを確信したようですね。そして、帰り道、括り罠に鹿が掛かっていました。少女は、自分が確信した方法で魔法を発動できるでしょうか。楽しみですね。それではまたお会いしましょう。


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