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13.少女は狩人と森を抜け街道を歩き町に出て買い物をする

二人は、森の小屋から出て森を抜けて町で買い物をします。二人は、周りの人が親子連れと思うように工夫をします。どんな工夫でしょうかね。

―――場面は再び少し前に遡りの森の小屋に戻る


 デイビードとユリアの二人は、朝食を食べた後、手紙を書き終えるとすぐに少しの荷物を担ぎ、大部分の荷物はユリアの収納魔法に収納して小屋を出発した。


 1日目は、念のため小屋の位置を発見されにくいように迂回した方向に向け、デイビッドが森の道なき道を狩猟刀で切り開きながら進んで、ユリアがそれに続き、少し開けた場所に出たところで野営した。


 2日目は、はじめ森の獣道を進み、夕方近くに地面が踏み固められ左右の木々が薙ぎ払われている森の人道に行き当たり、その人道をスピードアップして進んで小さな野営地で野営した。


 3日目には、昼前に森の人道から森の縁に沿った街道に行き当たり、その街道を快調に進んで夕方近くに中規模の町エルブライドの入り口に到着した。


 デイビードは、ユリアの前に屈んで目線を合わせて言い聞かせるように言った。


 「ユリア、これから町や村では私の名前はエヴァンだ。君は私のことを、お父さんと呼ぶように。そして、これから当面の間は君の名前はクロエだ。ユリアという名前は一旦捨てろ。わかったな。わかったら復唱してみろ」


 ユリアは、その意味を汲み取り頷いて言った。


 「お父さんはエヴァン、私はクロエですよ。」


 デイビードはユリアの目をしっかり見て言った。


 「よーし、忘れるなよ。」


 二人はすぐにエルブライド町のジビエ(しょくにく)買取所に行って運んできた肉類を換金した。その後、商人ギルドでデイビードが2通の手紙の配達を依頼した。


 その日は、二人で街中を少し歩き安宿を探して泊まった。宿帳には、もちろん、エヴァンとクロエと記帳し、二人部屋をとった。


((えーん、改名されちゃったよぉ。))



ーーー 少女は買いものに満足するがしゃべりでやりすぎる


 翌日、二人は、初めに、ユリアの衣類を調達しようと衣料品店に入った。


 デイビードは、女店員にユリアを見せ、娘の今のサイズよりやや大きめの上下外着と下着類を見繕ってくれるよう頼んだ。店員は、少し店内を回って、冬用のブラウスと上っ張りとスカートをいくつかと下着類を数組出してきた。


 ユリアは、ブラウスと上っ張りとスカートを試着して恥ずかしそうにデイビードにくるりと1回転して見せた。


  「お父さん、どう?似合うかしら?」


 店員は、デイビードとユリアの両方に向き合いながら言った。


  「可愛い娘さんですね。よくお似合いですよ。」


 デイビードは、客あしらいのうまい店員だと思いながらも、まんざらでもない表情で印象付けるように言った。


  「クロエ、よく似合っている。かわいいぞ。さすが、俺の娘だ。」


 そして、そのうちの似合う方の一組と下着類全部を取り置くように言い、次に、男の子用の秋冬用アウトドア向き上下上っ張りを出すよう頼んだ。


 デイビードは、出された男の子供向け上下をユリアに渡して言った。


  「クロエ、これも試着してみろ。」


 ユリアは、


  「うん。」


と言って渡されたものを試着し、デイビードにどや顔でポーズして見せた。


 デイビードは頷き、


  「うん、お前にぴったりで動きやすそうだ。」


と言って、これらと取りおいてもらったものを購入する支払い手続きをした。


((狩りには男の子の衣服が向いていますものね。))


 二人は、次に、日用品店で鍋や食器、石鹸や歯磨きなどを購入した後、金物店を探して歩いた。


 道を歩きながらデイビッドは言った。


  「クロエ、罠猟(わなりょう)でお前が獲物の止めに使う槍を探してみよう。」


 ユリアは、喜んで言った。


  「わぁ、お父さん、覚えていてくれてありがとう。どんな槍があるか楽しみだわ。」


 デイビードは、感心して言った。


  「クロエ、先ほどからのお前の話しぶり、完璧すぎて心配だ。大丈夫か?それともそれがお前の素の話し方か?」


 ユリアは、返すように冗談ぽく言った。


  「素のままじゃないけど、私はこれで何の問題もないわ。お父さんこそ、いきなり俺とかお前なんて言って、その髭面といいワイルドでかっこよすぎよ。大丈夫?」


 デイビードは、言い負かされたように感じて悔し紛れに言った。


  「あぁ、なんだか、お前が人誑し(ひとたらし)の達人のように見えてきた。」


 ユリアは、ほっぺを膨らまして言った。


  「お父さん、ひどぉーい。今日はご飯作ってあげなぁーい。」


 デイビードはわが意を得たように負けずに言い返す。


  「そ、それだ。それこそ人誑し(ひとたらし)の言い方そのものじゃないかぁ。もっと自重しろ。」


 二人は、お互いに顔を見合わせて大笑いした。


((人誑し(ひとたらし)がしっかり身に付きました。))



ーーー 少女は娘役を無難に熟し(こなし)て優れ物の武器を手に入れる


 二人は、金物屋を探し当てて中に入った。店内には接客の男店員がいてすぐに近寄ってきて言った。


  「いらっしゃいませ。お客様。親子お二人連れ様とお見受けいたしました。今日はどのようなものをお探しでしょう?」


 デイビードは、店内を見渡しながら言った。


  「近く、娘が罠猟で狩りを始めるんだ。獲物に止めを刺すときの槍のような刃物で、俺の娘の手や体格に合うものはあるかな?」


 店員は、少し考えて言った。


  「あぁ。そう言った類の刃物でしたらあちらの方にございますよ。」


 店員は、店内の壁際を先導して少し歩き、そのあたりの壁一面に複数展示してある槍のような刃物の並びを手を指して示した。


 店員は、


  「これなどはいかがでしょう?」


と言って、展示品の中で最も小ぶりな、長さ約1.5m、穂先約20cmの両刃の笹穂槍のようなものを手に取ってデイビードに手渡した。


 デイビードは、穂先を丹念に調べたあと、柄の太さと重さを確認してユリアに手渡して言った。


  「クロエ。これを持って太さや重さと構えやすさなどを確認してみろ。」


 ユリアは答えた。


  「うん。お父さん。やってみるね。」


 ユリアは、握りができる太さか、全体の重さと構えた時のバランス位置はどうか、構えて突き出す動作など、いくつか慎重に確認して言った。


  「お父さん。使うときにはちょうどしっくりくる感じだけど、移動するときには私にはちょっと長すぎて扱いにくいかも。」


 店員は、ユリアの槍の取り扱いや確認動作が、既にすっかり様になっていることに感心しつつ、ユリアの指摘にも心得たように言った。


  「お嬢様、この槍は、穂先は着脱自在で、柄の部分も4つに分割可能で、すべてこの袋に収納して運べます。現場で使う前にねじ込みして繋げれば良いのです。便利でございましょう?」


 ユリアは、店員とデイビードを見上げて甘えるように言った。


  「わーお。とっても優れ物ね。私、これが気に入ったわ。お父さん。これ買ってーぇ。」


 デイビードは、お前やりすぎだと目配せしながらも嬉しそうに言った。


((槍だけにやりすぎるのは至って自然ですが、なにか?))


  「そうか、すぐにいいのが見つかってよかったよ。もちろん買ってやるとも。ただし、ちょっと穂先の研ぎ直しや刃付けが難しそうだな。店員さん。何かこれに合った砥石とかやすりのようなものは置いてあるかな。」


((そうか。小屋にあった刃物がみんな手入れ済みなのも納得かも。))


 店員は、したり顔で言った。


  「お客様は、とてもベテランの狩人様のようですね。もちろんございますよ。」


 デイビードは、5つに分解して袋に入れた槍と、砥石とやすりのセットを受け取り、支払いを済ませて二人は金物屋を出た。



ーーー 少女は娘役に慣熟(かんじゅく)して本を強請り(ねだり)町での仕事を達成する


 デイビードは、金物屋を出て、ユリアに何か書物を買ってやる予定だったことを思い出した。二人は本屋を探して町を歩き、町の中心部付近の大通り沿いに大きな本屋を発見した。


 本屋の前の店先で、デイビードはユリアに何か読みたいものはあるかと聞き、ユリアの答えに耳を疑った。


 ユリアは、小声で言った。


  「お父さん、私、外国語の本が読みたいわ。シングラーツ王国の現代語や古典語の本は神父様に読ませてもらったけど、フランソアール帝国語の本は読んだことがないの。」


 デイビードは、ユリアの特異性に思いを馳せつつ、できるだけ希望をかなえたいと意気込んで本屋の中に入った。デイビードは、自分で読む本を探しているような話しぶりで、店員にフランソアール帝国語で書かれた本は何かあるかと尋ねた。


 店員は、少し考えて言った。


  「フランソアール帝国語ですか。あぁ、ちょうど、ひと月ほど前に領都本店経由で注文があって、余分に取り寄せた残りを取り置いてありますが、見られますか?」


 デイビードは、注文したのはおそらく外交担当の次兄ダルビードに違いないと思いながら、催促するように答えた。


  「それはよかった。是非見せてもらいたい。」


 デイビードは、店員が持ってきた数冊の本を見て、その分厚さに驚くとともに値段の高さを想像して絶望的な顔をした。


  「なんか高価そうだな。一番安いやつでいくらだ?」


 店員は、すまし顔で答えた。


  「一番安いのはこれですが、金貨2枚と銀貨5枚です。商業ギルドカードでの支払いも可能です。」


 デイビードは本を手に取って最初の数ページをめくり、内容的には鉱物資源関係の専門書らしいが言葉自体は自分でもユリアに教えられそうだと予想した。また既に、エドアルドへの手紙でユリアを教育すると明言していることを思い出し、意を決して商業ギルドのカード払いでこの本を購入した。


 ユリアは、考えなしに希望を言ってしまったと少し後悔したが、実際に買ってもらうと、さらに値段の高さに恐縮した。しかし、書物の内容である鉱物関係は、神父のシングラーツ王国語の書物ですでに基本的なことを習得済みであるので、フランソアール帝国語の勉強には十分使えると考え、デイビードに少し大きな声で言った。


  「お父さん、私のわがままで散在させてしまったね。ごめんなさい。私、一生懸命に勉強するね。」


  「なーに、可愛い娘のためだ、これぐらいの出費はなんでもない。それに、もともと外国語も教育するつもりだったからな。」


 デイビードも少し大きい声で言ってからどや顔で胸を張った。


 近くにいた店の客は、鉱物関係の難しそうで高価な本をポンと買って、小さな娘の教材にすると言い放つ、顔面いっぱい髭面の山師らしい男を不審そうに見ていた。


((親ばか丸出しの演技に拍手。でも大きな借りを作っちゃったぁ。))



 二人は、買ったものを収納リュックに入れて宿に戻り、一旦荷物を部屋に置いてから1階に降りて食堂のテーブルに着いた。


 宿のおかみさんが、すぐに注文を取りに寄って来た。


  「あらぁ。お早いお帰りですね。定食しかありませんが、お持ちしてよろしいですか?」


 デイビードは、ユリアに聞いた。


  「クロエ、お前もそれでいいか?」


 ユリアは、


  「うん。私がなんでも食べるのお父さん知ってるでしょ。量が多すぎたら余分を分けてお父さんに食べてもらうから。」


と言わなくてもいいことを言って親子であることを周りに印象付けた。


((お父さんが顔面いっぱいの髭面だし不審がられたらまずいよね。))


少女は名前を改名されて怒っていましたね。演技過剰で狩人の男もたじたじでした。ともあれ、無事に必要な買い物ができて良かったですね。次回は森の小屋に戻って本格的なしごき?教育が始まりそうです。大丈夫ですかね。心配です。それではまたお会いしましょう。


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