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10.少女は狩人から狩りのノウハウを学ぶ?盗む?

今回は、いよいよパートナーで狩りをします。

 翌朝、デイビードは、遅れて起きてきたユリアに言った。


 「おはよう。今日はここから3kmくらい西に行った狩場で鹿かイノシシを狩るが、一緒に行くだろう?」


 ユリアは即座に答えた。


 「おはようございます。デイビード様。もちろんご一緒させていただきます。私は飛び道具を持っていませんが、よろしいでしょうか?」


 デイビードは皮肉をまじえて言う。


 「問題ない。今日は、私が短弓で狩りをするので、君は私の一挙手一投足をよおーく観察して技を盗め。君はそういうのが得意だろう?」


((えぇー、そんな言い方するのぉー。))


 ユリアは恥ずかしそうに、しかし皮肉を返して言う。


 「承知いたしました。私の得意な方法でのご指導をありがとうございます。ただ、往きの途中でいくつか小物捕獲用の括り罠を仕掛けたいのですが、よろしいでしょうか?」


 デイビードは言う。


 「私からあまり離れず時間を取らないようにするなら構わないが、むーん、それは私も君の技を盗めということか?」


 ユリアは感謝するような身振りをしつつ言った。


 「ありがとうございます。デイビード様は括り罠猟は既に体得されていると思いますので、私のやり方を見てご助言をいただければと思っただけで他意はありません。」


 デイビードが、


 「わかった。よーし、朝食をとったらすぐに準備して出発するぞー。」


と檄を飛ばしたら、ユリアが、


 「おぉー。」


と小さな右手をグーで突き上げながらかわいい声で応じて、すぐに手分けして朝食の支度にかかった。


 ユリアは、デイビードが先導する狩場への経路途中の3か所に括り罠を仕掛けた。ユリアは、適所を見つけるごとにデイビードの服を黙って引っ張って知らせ、その都度、経路方向から外れて3mほど脇へ分け入った。


 獣道らしき道筋の狭まった場所と、糞が落ちている付近と、樹皮が剥がれた木の下の3か所に、それぞれ丈夫な縄をつかった単純な括り罠を手際良く仕掛けた。


 デイビードは、立ち止まったままその様子を見ていて、サムズアップして頷くだけで特に何も助言はしなかった。


 そうして進むうちに二人は目的の狩場に到着した。デイビードは、風向きを調べて少し回り込み、大きな木の幹と灌木の枝葉の間の身を隠せる場所に位置取りした。そして、ユリアを自分の背中と木の後ろ隠すように位置取りさせた後、ヌタ場の方を注視しながら静止して待った。


 ほどなくして、家族と思われる大小の鹿が4匹現れて、ヌタ場で泥浴びを始めた。


 デイビードは、弓に矢をつがえて引き絞り慎重に狙いを定め30mほど先の獲物を射た。矢は見事に大きい鹿の首付近を貫き、鹿は声を発する間もなく足から崩れるように横倒しに倒れた。


 それと同時に、ほかの鹿たちはびっくりした様子であたりを見回した後、ジグザグに跳ねながら二人とは反対側の方へ逃げていった。


 デイビードは、あたりを確認しながら獲物の鹿に近づき、狩猟刀で首をついて止めを刺した。ユリアはデイビードの狩場所の見立てと待ち伏せの位置取りから矢を射て止めを刺すまでの一連の動作をつぶさに観察した。


 デイビードは、少し離れた場所まで鹿を引きずり、ロープで両足を括って木の枝に引っ掛けて吊し上げ、狩猟刀で首を切りつけ鹿の血抜きをしつつ、生活魔法で水と氷を出して冷却した。ユリアは、吊し上げのロープを引く手伝いをした後、血抜きの様子もじっくりと観察した。


 デイビードは、鹿の大きさから、そのままでの運搬はあきらめてこの場で解体することにした。ユリアは、デイビードが鹿を解体する様子も、見やすく位置を変えながら観察した。


 解体後、二人は手分けして、肉の塩まぶしや冷凍処理を行い蕗の葉で包装し、毛皮の下処理と、内臓などの残滓の焼却と埋設の作業を行ったのち、この場を引き揚げることにした。


ーーー 少女は自分の狩りの腕前を披露するが・・・


 デイビードは、獲物の運搬を二人で分担するよう提案した。といっても、ユリアの担当分は3kgくらいの冷凍肉の蕗包みだけだった。ユリアは、収納魔法持ちだと知られるにはまだ早いと思い、背負子に肉の蕗包を入れた。


 二人は、来た道を逆にたどっていき、括り罠の位置で捕獲状況を確認した。2つは空振りで空しく罠だけを回収したが、糞が落ちている付近に仕掛けた罠にはなんとイノシシの子供の瓜坊が掛かっていた。


 瓜坊は、後ろ足を括り上げられた状態で不安定に傾きながら、ユリアたちに向かって威嚇しながら必死の抵抗をしてきた。


 デイビードは、止めを刺せと言いながらユリアに狩猟刀を渡した。ユリアは、瓜坊から反撃を受けないよう慎重に位置取りして体制を整え、デイビードの先ほどの手本をまねて狩猟刀を構え狙いを定めた。ユリアは、瓜坊の姿勢の崩れた瞬間を見逃さずに狩猟刀を突き出し、喉の付近を見事に突き刺した。


 デイビードとユリアは、瓜坊の血抜きと冷却だけをして一緒に小屋に持ち帰った。デイビードは解体した鹿を担ぎ、ユリアは瓜坊を担いで、ひぃひぃ言いながら。


 小屋に帰り着いた二人は手分けして作業し、デイビードが鹿の追加の処理を慣れた手つきで進める一方、ユリアが瓜坊の解体に挑戦した。


 ユリアは、ウサギくらいの大きさの獣は解体した経験があったが、瓜坊はそれよりもかなり大きい。ユリアは、デイビードが鹿を解体するときの手順と動作を思い浮かべながら、小刀で慎重に解体していった。


 デイビードは、横目でユリアの様子をチラ見したが何も言わず、ユリアが助言を乞いたそうに目線を合わせたときにサムズアップと頷きで返した。しばらくの作業の後、二人は獲物の可食部分の保存処理と内臓などの残物の埋設処理を完了した。


 その日の夕飯は、串焼き肉の大盤振る舞いで、二人とも満足するまでたらふく食べた。就寝の支度をしながら、ユリアはデイビードに問うた。


 「今日は私への助言は何もいただけませんでしたが、どうしてでしょうか?」


 デイビードは、答えた。


 「君の一挙手一投足をつぶさに観察させてもらったが、罠猟の狩人としての君に私の助言は必要なかった。ただひとつ、止めを刺すのは槍の方がいいだろうな。」


 ユリアは、やや物足りなさを感じたが、本物の狩人に一応腕前を認められたことを喜んで、


 「ありがとうございます。おやすみなさい。」


と言ってすぐに寝息を立て始めた。


((ふーん、私、こんなでも意外とやるのかも。))


パートナーの二人はどちらもいい腕前でしたね。森での生活も食糧面では不安なさそうです。次回は、男が有力者として少女に自覚を促します。なんの自覚でしょうかね。楽しみですね。それではまたお会いしましょう。

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