4月25日
僕は文章を書くのが苦手だから、もしもの時、この日記が遺書代わりにでもなれば幸いだと思う。
最近、胸の辺りが痛く咳が続いたので、病院に行ってみた。そしたら「肺がん」だと診断された。僕はあまりの衝撃に唖然として、そこからの医者の話を全く覚えていない。どうやら、しばらくの入院の後、腫瘍を切除するらしい。
その事を家族に伝えた時、皆動揺していた。しかし、兄の反応は印象的だった。取り乱すでもなく、呆気にとられるでもなく、ただ「そうか」と空返事するのみ。ただ、一瞬兄の瞳孔が、見たことないくらいに開いたように見えた。気のせいかもしれないけど。
兄はいつも何考えてるのかよく分からない。基本はガキみたいに無邪気で馬鹿だが、時折、何もかもを見透かしたように鋭い。
書くのに疲れてしまった。今日はこのくらいにしておこう。
俺には弟が1人いる。高校一年の入学したてで、既に友達ができたらしく、青春の真っ最中だった。
優しく、気が利いて、器がでかく、家事もできて、面倒見が良く、賢い。
俺にはもったいない。本当に俺の弟か疑わしいほど、できた人間だ。
そして、彼にはギターボーカルとしてバンドを組むという夢もあった。音楽で飯が食える人間は、ほんの一握りだ。厳しい世界だ。努力だけでなく、才能もなければ認められない。その現実を知りながらも、あいつは果敢に努力し、夢に向かって走っている。
俺は…もう夢の見方も忘れてしまったかもしれない。
自分がこの先何をしたいのか、どう生きていくのか、全くあてがない。
まったく羨ましい限りだ。されど…今は羨望や嫉妬の感情は一切湧いてこない。
弟は肺がんらしい。まったく神は、よほど俺達の事が嫌いらしい。夢も生きる目的もない俺ではなく、善良で将来有望なあいつを肺がんにするとは。
だが幸いにも、まだ腫瘍切除の手術でどうにかなるレベルらしい。
俺は神など信じないが、今回ばかりは神に祈る他ないな。




