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第15話 届かない距離

 踏み込む。


 最短距離。


 最速の一手。


 ――それでも、届かない。


 ネメシの剣は、

 確かに相手を捉えているはずだった。


 だが、


 わずかにズレる。


 角度か、

 間か、

 あるいはその両方か。


 確信に近い一撃が、

 “当たらない”。


 弾かれる。


 流される。


 受けられる。


 相手は崩れない。


 最初から最後まで、

 同じ距離を保ち続けている。


 ネメシは連撃に切り替える。


 一撃で通らないなら、

 重ねる。


 速さを上げる。


 タイミングを崩す。


 繋ぐ。


 だが――


 それでも、通らない。


 すべて処理される。


 読みではない。


 反応でもない。


 “そうなることを前提に動いている”。


 そんな感覚。


 ネメシは一度、引いた。


 距離を取る。


 呼吸を整える。


 視線は外さない。


 相手は動かない。


 追ってこない。


 ただ、


 そこにいる。


「どうした」


 静かな声。


 余裕がある。


 明確に。


 ネメシは歯を食いしばる。


 通じている。


 だが、


 届かない。


 その差が、

 はっきりと分かる。


 ネメシは再び踏み込む。


 変える。


 今までの動きから外す。


 読みを捨てる。


 感覚に任せる。


 踏み込み。


 角度。


 間合い。


 そのすべてを、


 わずかにズラす。


 ――一瞬。


 手応え。


 捉えた。


 だが、


 次の瞬間には、


 止められている。


 剣が絡め取られる。


 崩される。


 体勢が流れる。


 ――遅い。


 認識したときには、


 もう遅い。


 視界が回る。


 地面。


 衝撃。


 HPが削れる。


 大きく。


 ネメシはすぐに体勢を立て直す。


 距離を取る。


 だが、


 相手は詰めてこない。


 追撃はない。


 終わらせることもできたはずだ。


 それでも、


 しない。


 ネメシは立ち上がる。


 呼吸が荒い。


 視界はクリアだ。


 思考も止まっていない。


 だが、


 理解している。


 ――勝てない。


 このままでは。


「……悪くない」


 相手が言う。


 評価。


 それは分かる。


 だが、


 欲しいものではない。


 ネメシは構える。


 まだ終わっていない。


 だが、


 流れは変わらない。


 再び交差する。


 一手。


 二手。


 三手。


 積み重なる。


 そのすべてが、


 届かない。


 そして――


 終わる。


 システム表示。


 敗北。


 ネメシは動かない。


 ただ、


 その結果を見ている。


 分かっていた。


 途中で。


 それでも、


 最後までやった。


 視界が切り替わる。


 ロビーへ戻る。


 喧騒。


 周囲の音。


 現実に戻るような感覚。


 ネメシは一歩、歩く。


 足は止まらない。


 だが、


 思考は一つの場所に残っている。


 届かなかった距離。


 崩せなかった構え。


 通らなかった一手。


 ネメシは小さく息を吐く。


 ――足りない。


 それだけは、

 はっきりしている。


 だが、


 何が足りないのかは、


 まだ分からない。


 ネメシは歩き続ける。


 次の一手を、


 探すために。

第15話までお読みいただきありがとうございます。


ネメシは初めて明確な敗北を経験しました。

通用している感覚と、届かない現実。


その差が、はっきりと見えた形になります。


何が足りないのか。

それに気づくための段階に入りました。


引き続きよろしくお願いします。

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