27 双愛
最近ホントに時間がなくて忙しすぎる……、体調にはみなさんも気をつけてください…………。
剣さんの言葉を聞いて、心が動くかなと思ったけど、それは先っぽだけだったようだ。
やっぱり、僕は学校に行けない。どんなに暖かい言葉でも、学校に行けないのにかわりはない。
だったら、逝っちゃおうかなぁ。いてもいなくても、僕は意味ないから。
「双〜、まだいる〜♡?」
病室の扉を開けながらいつもの声で双を呼ぶ。
もしかしたら帰ってるかもなぁ〜。なんだかんだ先生の話と診察の時間でもう昼過ぎだ。
予想通り、病室には誰もいなかった。学校があるからな〜。僕のことで早退したみたいだし、高校1年で無言早退なんてしたら結構内申点響くらしいしね。
でも、病室のある違和感に気づいてしまった。
「……本、ベッドの上に置いてある……?」
なんで……枕の下にちゃんと隠してたはずなのに……。もしかして……双……?
ベッドに近づくと、僕が書いた数冊の本に、付箋が貼られていた。
『放課後絶対見舞い行くからな☆!!!』
乱雑な字で書かれた文字を何度も何度も読み返す。
短い文だけど少しでも内容が変わってないかと小さな希望を持ってしまった。
そんな夢みたいな希望は一回見たときに諦めてたけど、やっぱり文字は変わらなかった。
「……これぇ、ワンチャン僕説教だよねぇ〜♡?」
またさっきみたいな怖い双出てきちゃうの〜……?冗談でも笑い事にならないよ……。
うぅ……そんなこと思ってたらまた背筋がゾワってしてきたぁ……。
「逃げ場とかがあるわけじゃないから、待っとかないといけないけどねぇ……」
ベッドに置かれている本を枕の下に戻して、そのまま横になる。
けど、何回だって思ってやる!僕の想いは……かわら……ない……から。
自信満々で言えないまま、僕は深い眠りに落ちた。
「…………お、愛。起きたか?」
双の声が聞こえてパチッと目を開ける。
双が来たってことは、今はもう六時くらいだよね……。僕が寝た時の時間ってまだ朝だったから……。わぁ、すっごい寝てたんだな。
双とは視線を合わせないように窓の外を見つめる。
やっぱり、空全体が綺麗なオレンジ色に染まってるや。
……双と、同じ色の空だなぁ。太陽も双の色だ。
「なぁ、愛。愛は俺にとって太陽だぞ☆」
優しい声のトーンが聞こえて、違う意味で心が締め付けられる。
僕が太陽……?僕が太陽ってなに?バカにしてるの?
怒りと苦しみ、いろんな感情がごちゃごちゃになって込み上がってきた。
「…………え? にゃはっ♡ 急に何言って…………」
視線は窓に向けたまま、作り笑顔を作ろうとしたとき、双に抱きしめられた。
優しいハグじゃなくて、力が強い。まるで、『離れないで』と訴えかけるような、そんな気がした。
「……って、わわっ、ちょっ……」
「愛……逝きたいなんて思わないでよ。俺、お前が逝ったら、俺も逝くから」
僕の肩の上で唸るように双が呟く。震えている声、手、体。その全てが双が抱えている『秘密』に見えた。
そうやって、僕のことをはげましてくれてるんだよね。
でも、でもね、双。
「僕と双は違うんだよ。双はさ、健康じゃん? だから恋愛も青春も味わえる。でも僕は、病弱だ。昔から。何も変われずに今の今まで生きてきた」
自分で喋りながら、なに都合のいいこと言ってるんだろう。とバカバカしくなる
双のほうが、もっと辛い思いをしてるのに、僕だけが、被害者ぶってる。僕って、こんな大事な場面でも、最低なんだ。
俯いてる双の顔を上げて、僕はまた偽物の笑顔で笑いかけてしまう。
「僕は、こんな自分が大嫌いなんだ」
……あぁ、そうか、僕、自分のことが嫌いなんだ。言葉にして改めて納得できる。
……ごめん。ごめんね、双。双は、僕のことを太陽だって言ってくれたけど、そんな輝いていない。
輝いてるのはキミだよ。いつも笑顔で、キラキラしてて、何事にも一生懸命。光と闇って、こういうことだと思うんだよね。
そう言おうとしたけど、喉がつっかえて伝えたいのに伝えられない。
「じゃあさ、俺が愛の、その大嫌いな分まで『愛』してやるよ」
双の顔は、笑っていなかった。真剣な瞳で、僕のことを映してる。
「『双』も『愛』も、たった1人じゃ何もできないから」
双は気が抜けたように、瞳を揺るがせながら今度は笑った。
……ホント、『そう』いうところだよ。さっきまでの変な意思が、また揺らいじゃうじゃん。
「二人で互いに愛し合おう。自分の嫌いなとこも好きなとこも相愛って言う言葉があるように、俺たちも『双愛』になろうよ」
何を言ってるのかわからない、でも、その言葉がなんだかすごく嬉しい。
気づいたら、僕の瞳からも涙が溢れていた。
「『双』子の俺たちは、たった1人じゃ生きてけないから、『愛』し合って、支え合おう? 唯一無二の『双愛』で」
へにゃ、とした笑顔を作り、『双愛だって! 俺ネーミングセンスめっちゃ良くね!?』と自画自賛する双を見て、さっきまでの気持ちがなんだかバカバカしく思える。
「……そういうところだって言ってるじゃん。わけのわかんない言葉作ってさぁ、わけのわかんない単語並べて、泣いて、笑って、また泣いて、僕の持ってないもの、全部持ってて、もうさぁ、ズルいよ…………バカ」
無理がありすぎる単語を作って、気の抜けた笑顔を作って、そんな双に、また振り回される僕がいて、でもそんな日常がいいなぁって思っちゃって……。
こんなんじゃ僕、死ねるわけないじゃん。もう少しだけ生きたいな。まだ生きていたいな。そんな考えしか出てこなくなっちゃうよ。
今度は僕が双の肩に顔を埋める。できるだけ声を潜めて、泣いた。泣き顔なんて、恥ずかしくて見せられない。
「あははっ、バカでごめん☆ でも、そのおかげで、愛のこと、救えただろ?」
「なんで疑問文なの……。わかってるくせに」
「さ〜? なんのことかわかんねぇな〜」
泣き顔を見せなくても、双には僕が泣いてることなんてわかってるはずだ。
自分じゃ止められないくらい、涙が零れ出てしまってるから。
そんな僕の頭を不器用に撫でる手は、僕たちが双子とは思えないくらい温かくて、厚かった。
双って、いつの間にかこんなに大きくなってたんだな。あさひ〜たちと仲良くなって、また一段と輝くようになってる気がする。
……前の僕なら、それを羨むだけなのかもしれないけど、カナちゃん先生の話、剣さんの言葉、双の言葉、全部に救われちゃったや。
早く元気になって、本当に学校に行けるようになりたい。叶わない恋心だって、どこかで叶うかもしれない。
僕は、自分がいる、未来を見たい。
「…………ありがとう、双」
僕、双と双子で、嬉しいよ。…………愛してる。
これで双と愛の話は終わりです!次は夏休み(季節外れ)編かな〜と考えています!




