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脇役な主人公補正者 〜偶然が俺を英雄にする世界  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第39話 スイッチ連打で最深部へ!?

 雨上がりの朝。

 ガルド都市の北区――瓦礫と化した神殿跡地の前に、悠真たち五人が立っていた。

 風に舞う砂塵、石壁に残る焼け跡。

 静かすぎる空気が、不気味に耳を圧迫する。


「……ここが、封印通路の入り口か」

 悠真が息を呑みながら、崩れた石階段を見下ろした。


「ふふ、まるでダンジョンの入口ですわね」

 優雅にスカートを持ち上げながら、クリスティアが微笑む。

 その余裕の裏で、リサは既に弓の柄に手をかけていた。


「……なんか、嫌な静けさね」

「静かなのはいいことじゃ……ないよな、やっぱり」


「そうね。あなたの“嫌な予感”って、だいたい当たるし」

 ミリアが冷ややかに言う。


 セレナは魔力探知を展開しながら、慎重に通路の奥を見つめた。


「反応が一定じゃありません……おそらく“迷宮化”の兆候です」


「また厄介な構造になってますわね」


「俺、普通の階段を歩くだけでいいって言ったじゃん!」

 悠真の嘆きに、全員が苦笑する。


 こうして――

 “正式調査班”として、悠真たちの迷宮初潜入が始まった。



 神殿の地下通路は、湿気と苔の匂いが立ちこめていた。

 壊れた石柱、倒れた壁……そして、誰もいない静寂。


「……足元、滑るな」

「気をつけてください。瓦礫の中に魔法陣の欠片が混ざっています」

 セレナの注意に従いながら、悠真はそっと壁に手をついた――その瞬間。


 ピッ。


「ん?」


 次の瞬間、壁が音を立てて回転した。


リサ「うわっ!? ちょ、ちょっと!? 今の何したの!?」

「いや、ちょっと壁に寄りかかっただけで……」


「スイッチ押したんでしょ!?」

 ミリアの声が鋭く響く。


 回転した壁の向こうは、まるで違う通路。

 そして、背後の壁がゆっくりと閉じる。


リサ「……ねぇ、これ。戻れなくなったんじゃない?」


セレナ「初手で詰みとかやめて!?」


「まったく、あなたって人は……」

 クリスティアが額に手を当てる。


 結果――一層目をスキップ。



 瓦礫を乗り越えて進む途中、悠真が足を滑らせた。


  カチ。


「……今、嫌な音したよね!?」

「ええ、確かに聞こえましたわ」


「ま、待って! 地面踏んだだけだから! 何も――」


  ゴゴゴゴゴッ!


 床が開き、全員が悲鳴を上げる。


「きゃあああっ!」

「うわああっ!?」


 落下――かと思いきや。

 彼らが着地したのは、なぜか三層目。


「……おかしい。通常の経路をすっ飛ばしてる」


 セレナが足を止め、静かに周囲へ視線を巡らせた。

 彼女の指先が空をなぞると、淡い光の粒子がふわりと浮かび上がる。

 結界の残滓を探るための感知術だ。


 数秒の沈黙。


 そしてセレナは、淡々と告げた。


「結界反応がありません。途中階層を完全にスキップしています」


「俺、そんな“最短ルート探知スキル”持ってたっけ!?」


「アンタの運、方向間違えてるから!」

 リサが即ツッコミ。


 三層目の奥。

 古代文字で装飾された重厚な扉を前に、クリスティアが調査を始めた。


「ふむ……この扉、魔力反応が三重ですわ。慎重に――」

「へぇ~、これ押すと開くのかな?」


 カチ。



「ちょ、悠真さん!? 今の音、まさか――」


 ゴゴォォォォォッ!



 扉が一気に開き、まぶしい光が通路を貫いた。


「……嘘でしょ」

「通常ルートなら1日はかかるはずなのに……」


「スキップどころかバグプレイよ、これ」

ミリアが真顔で言う。


悠真「いや俺、スピードランしてるわけじゃないんだけど!?」


セレナ「でも結果的に最深部に近づいてますし……効率的では?」


リサ「フォローの仕方が怖い!」



 こうして三回の“偶然スイッチ押しにより、悠真たちは最深部へ直行する。

 そこは、まるで時が止まったような場所だった。

 巨大な石柱、光の粒子が舞い、空気がゆるやかに流れる。

 中央に佇む石像。

 それは“祈りの勇者”を象ったものだった。


 

「ここが最深部なんて……信じられません。普通なら三重の結界と魔獣守護があるのに……全部抜けてる」

 セレナは震える声で言った。


「さすが悠真様……偶然すら味方につける天才ですわね」

 クリスティアが優雅に微笑む。


「褒めてる? それとも事故扱い?」

「どちらも、ですわ。」


 リサが石像に近づいた瞬間――床に光が走った。


『……来たか、選ばれし者たちよ。だが、試練はまだ終わらぬ。』


「え、試練!? だって俺達、ほぼ歩いてないよ!?」


 光が一気に膨張し、彼らの身体を包み込む。

 視界が白く染まり、次に開けたのは

 

 ――空。

 

 浮遊する島々、輝く水晶の森、雲の下に広がる光の海。

 まるで“地上ではない場所”。


「……ねぇ、これ。地上じゃないよね」


「座標、完全に外れてます。ここは……異空間です」

 セレナの声が震える。


「つまり、神の領域ってことね」

 ミリアが呟いた。


「ちょ、待って!? 俺、迷宮スキップした結果、裏マップ来てない!?」


「すごいじゃない! バグ技極めた脇役系男子!」

 リサが笑う。


「それ褒め言葉に聞こえないから!?」


 そのとき――

 空の向こうから、荘厳な声が響いた。


『――勇者の系譜よ。最終試練を受ける覚悟はあるか?』


「いや、待って!? 心の準備してないってば!?」

 悠真の絶叫が、空に響き渡った。


 五人は神殿状の浮遊島に立っていた。

 足元の魔法陣が淡く光り、風が衣を揺らす。


「……またすごい所に来ちゃいましたね」


「平穏、どこ行ったんだろうな……

 悠真が肩を落とす。


「でも、あなたがいると……どんな場所でも、怖くないです」

 セレナは小さく笑った。


「……セレナ、それは――」

「“偶然の天才”への感謝です」


「お願いだからその称号、誰にも広めないでくれぇ!」

 悠真は頭を抱えた。

 

 全員が笑い、風が吹き抜けた。

 空は金色に染まり、光の粒が舞い落ちる。

 悠真の脳裏に浮かぶのは、いつもの願いだけだった。


「俺、ただ……平穏に暮らしたいだけなんだよぉぉぉ!!」


 空に響くその絶叫が、次なる試練の幕を開ける。


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