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脇役な主人公補正者 〜偶然が俺を英雄にする世界  作者: 源 玄武(みなもとのげんぶ)


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第38話 ガルド地下迷宮の呼び声

「――まさか、また呼び出されるとはな……」


 俺はため息をつきながら、立派すぎる門構えの前に立っていた。

 石造りの外壁は修復途中らしく、職人たちが忙しそうに足場を組んでいる。

 雨上がりの光が街を照らし、復興中のガルドの街は少しずつ活気を取り戻しつつあった。



「悠真、ぼさっとしてると門番さんに怪しまれるわよ」


 ミリアが横から肘で小突いてくる。

 俺は慌てて背筋を伸ばした。


「いやいや、こう見えても俺、ちゃんと公爵殿に呼ばれてるから!」


「“また事件かも”って顔してるくせに」


……図星だ。


 ガルド公爵邸――以前、あの襲撃事件の時に避難した場所。

 できることなら二度と“用件”で来たくはなかった。

 執務室に通されると、すでに全員そろっていた。

 リサが小声で手を振ってくるし、クリスティアはいつもの優雅な微笑を浮かべている。

 そしてセレナは真面目な顔で書類を見ていた。


……この顔ぶれ。はい、事件確定ですね。


「来てくれて助かる、悠真殿たち」


 重厚な声で、ガルド公爵が口を開く。

 彼の背後の地図には、都市中心部に赤い印が打たれていた。


「神殿跡地の復旧作業中に、封印された通路が見つかった。通常の迷宮反応とは異なる……“異常な魔力”だ」


「異常って、どれくらいですか?」

 とセレナが問う。


「……私の部下が数名、調査に入ったが、全員が強い幻聴を訴えた。“誰かに呼ばれる声”がした、と」


 室内の空気が一瞬で冷える。


……はい、アウト案件だ。


「ちょ、ちょっと待ってください!」 

 俺は慌てて手を上げた。


「その“声”って、まさか俺たちに関係あったり……!?」


「ふむ。むしろ、関係があるのではないかと睨んでいる」

 即答するな、公爵様。


「勇者試験を控える君たちに頼むのは酷だと思う。だが――他に適任者がいない」


「ま、まぁ……お断りできる雰囲気じゃないよね」

 リサが苦笑いしながら俺の肩をぽん、と叩く。


ミリア「……つまり、今回も“うちのパーティ”が出動ってことね」

 


クリスティア「ごめんね悠真、“平穏”はまた遠のいたみたい」


「俺の平穏って、都市伝説か何か!?」



 その日の夕方、俺たちは神殿跡地に向かった。

 街の中心部にある古い神殿――以前の襲撃で崩れ、今は瓦礫と化している。

 復興作業の手が入っているものの、中央部分だけは奇妙に誰も近づいていなかった。


「……ここ、空気が違う。

 魔力濃度、通常の二百倍。しかも、下方向からです」

 冷たい風が頬を撫でる。

 セレナが魔導計を取り出し、淡く光る石板を掲げる。


悠真「つまり、地下に何かあるってことか」


 ミリアが短剣を抜き、周囲を警戒する。


悠真「リサ、周囲の様子は?」

「人の気配なし。でも……地面の割れ目、何か光ってるよ?」


 俺たちは近づいて、瓦礫を少しどかした。

――そこに、古びた金属の蓋のようなものが見えた。

 封印の刻印が刻まれ、淡く光を放っている。


「これ……開けたらダメなやつでは?」

 悠真の声が情けないほど震えていた。


「封印……ですが、状態が不安定です。もってあと数日」

 セレナが真剣な顔で刻印を覗き込む。


悠真「勝手に破けるパターン!?」

「はい。なので、今のうちに解析して対処しないと」


 はい、また仕事が増えました。

 セレナが魔導術式を展開する。

 青白い光が空気を走り、刻印の周囲を照らした。


「解析開始……古代文字、識別……闇の印、眠る場所”?」


悠真「え、なんか嫌なワード出てない!?」


 その瞬間、地面がぐらりと揺れた。

 瓦礫が落ち、光が一気に強くなる。

 悠真は思わずセレナの腕を引いて後退する。


――そして、頭の奥で“声”がした。


『……見つけたぞ……勇者の、魂よ……』


悠真「ちょ、ちょっと!? 俺!? また俺!?」


ミリア「ほら出た。“また悠真限定ボイス”」


リサ「や、やめてよそういうフラグ台詞!」


クリスティア「まさか本当に“あなた”を呼んでいるのでは……?」

 

「俺まだ勇者試験も受けてないんだけど!? 正式じゃないってば!」

 悠真は頭を押さえながら叫んだ。


『遅かったな……異界の子よ……』


 異界!? いや、そんな設定、俺聞いてない!!


 光が弾け、封印が“開いた。

 地下へ続く暗い通路が、ずうん、と音を立てて口を開く。

 風が吹き上がり、古びた祈りの声が交錯する。

 “何か”が、長い眠りから目を覚ましたような――そんな感覚。



 公爵邸に戻る頃には、空はすっかり夜だった。

 俺たちは報告を終え、疲れたようにテラスで腰を下ろした。


「……つまり、迷宮系の事件ってこと」

 リサが頭を抱える。


「封印の魔力、かなり特殊でした。

 “勇者の魂”を基準に反応していたのは確かです」

 セレナが静かに呟く。


 悠真は思わず空を見上げた。

 星が滲む。

 どこまでも、騒がしい運命だ。


「なぁ、俺って本当にただの脇役じゃダメなのかな……」


「脇役が“呼ばれる”物語なんて、そうそうないでしょ」

 ミリアが笑う。


「でも――あなたがいたから、私たちはここまで来られましたわ」

 クリスティアも穏やかに微笑んだ。


「そ、そんな大層なことしてないけど!?」


「もう慣れたよ、悠真が“事件体質”なの」

 リサがため息をつく。


「俺、体質診断でそんな結果出てないけど!?」


――夜風が笑い声をさらっていく。

 それでも、胸の奥には不安が残った。

 地下にあった“声”――あれは確かに、俺に向けていた。


「……また、何か始まるんだな」


 セレナが隣で、静かに頷いた。


「ええ。でも、今度は――一緒に乗り越えましょう。悠真さん」


 その言葉に、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。


――こうして、“平穏”を取り戻したはずのガルドの街に、再び運命の扉が開かれた。


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