『ヒトを喰うオニ』 其の九
「し・・・そ・・・って・・・」
ごほっ・・・
吸血種の多くは吸血種によって吸血種にされた『死徒』と呼ばれるモノ。
だったらその大元は??それが『始祖』。
始祖は”生まれながら”にして吸血種だったモノ。吸血種された死徒とは違い”劣化”していない。
つまり、天災級のバケモノだ。”今の私”に勝てる筈は無い。
「香奈!」
香織ちゃんが私に駆け寄る。
大丈夫・・・大丈夫だよ・・・香織ちゃん。
私は痛む体を・・・無理をしてでも立たせる。
「む・・・?お前、何故其処までのダメージを負った?お前位のチカラがあれば、大丈夫な位に調整したぞ??」
調整って・・・何処まで余裕があるのよ、あの吸血幼女は・・・
「そういえば、先程までのチカラはどうした?もう、チカラは殆ど感じないぞ??」
「・・・そうか、お前のチカラ・・・其れは”借り物”じゃな?しかも、この場では本領を発揮できんとみる。」
「ならば、そのチカラの持ち主と遊んで貰おう。」
言うと吸血幼女は、うーんっと何かを探っているよう。
まさか、華音さんの所に行く気なの!?
「駄目・・・させない。」
ごほっ・・・ごほッ
私は咳込み・・・吐血し膝をつく。
そんな私を見た香織ちゃんは庇うように前に出た。
「あんた!私がメインディッシュなんでしょう?つ、次は私の番よ!」
震えている。それでも香織ちゃんは私の前から動こうとしない。
駄目・・・香織ちゃん・・・だって、香織ちゃん”封印”以外教わってないんだよ!?せめて巫女のチカラである『巫術』さえ使えれば・・・いや、それでも駄目あの吸血幼女には勝てない。
「む、そうじゃった。」
「楽しそうな遊び相手が居そうな気がして忘れてたよ。」
ひゅんっ
吸血幼女は一瞬で間合いを詰める。
「攻撃してみるがよい。」
「や、やあぁぁぁぁ!!」
香織ちゃんは幣を振りかぶり殴りかかる。
ぺし。
・・・唯殴りかかっただけ、当然が如く受けられ、そのまま反撃とばかりに軽く手を振るわれると数メートルは吹き飛ばされた。
「潜在能力はあるようじゃが・・・全く使えんのじゃな。」
「まだ・・・まだよ!」
やぁぁぁぁぁっと立ち上がった香織ちゃんは再び幣を振るう。今度は連続で。
勿論そんな攻撃が当たる筈も無い。いや、仮に当たったとしても効果なんて有るはずが無い。
でも・・・香織ちゃんは攻撃を続ける。手加減ではあるが攻撃を受けても立ち上がり何度でも。
香織ちゃんは私の為に”時間稼ぎ”をしてくれているんだ。
殆どチカラを使い尽くした私。今は回復にその全てのチカラを使っている。せめて動けるくらいにはならないと・・・
・・・最後の賭けすら出来ない。
「もう・・・飽きてきたのじゃ」
ぶんッ
先程までより強めの攻撃に香織ちゃんは吹き飛ばされる。
香織ちゃんは立ち上がれない。意識はあるよう・・・とりあえずは無事・・・でも、余り時間は掛けられない。
私の方は・・・うん・・・少しはマシになってきた。
こういう時、ゲームみたいにポーションとかあれば良いのに・・・うん、思考にも余裕が出来てきている。
後は、花子さんさえ戻れば・・・
どんどんっ
何かを叩くような音がする。
あ、結界か・・・花子さん戻ったのね!
何か口をパクパクさせている。ああ、外に音も届かないのか・・・何かやられてる時に直弥さん達がパクパクしてた謎が解けたわ。
ってそんなこと考えてる場合じゃ無い!!
吸血幼女は香織ちゃんに近づく。とどめを刺すつもりなの!?
「ま、待ちなさい! ある程度回復したわ。また私が遊んであげるわ!」
「・・・今のチカラが殆ど無いお前なんて興味が無い。」
「ならばこっちの巫女の方がまだマシじゃ。」
「・・・其れはどうかしら?」
私は花子さんに目線で合図を送る。
花子さんは持ってきた”服”のうち一着・・・『外套』を結界内に投げ入れる。
さっき石を投げて試しておいたので、”モノ”・・・正確には意志の無いモノだと思う・・・が結界を通れるのは確認済み。
まあ、『瘴気』が染みこんだモノが通れるかはちょっとした賭けだったけどね。
早速投げ入れられた外套を『ゴシックプリンセス』の上から着込む。
私の中にチカラが戻ってくる。
実はこの外套。華音さんと違い”服に込められたチカラ”を使う私がチカラを使い切った時にチャージする為に新しく作った服。
コレは妖精騒ぎでチカラを使いすぎた反省から生まれたモノだ。
「ほう・・・チカラが戻っているのじゃ。」
「お前、面白い事をするのぅ〜」
「じゃが、このままでは先程と同じじゃぞ??」
「う〜ん、そうなんだけどね。まあ、ちょっとした考えもあるよ。」
「そうか!お前面白いヤツじゃな!」
言って吸血幼女はにっこりと笑う。悔しいがちょっと可愛い。敵じゃ無ければお持ち帰り確定だったね。
「あ、でもその前に・・・香織ちゃんを安全なトコまで移動しちゃうね。」
「む・・・分かった。」
私は香織ちゃんの元に行くと・・・ひょいっと抱き上げる。
「ちょ、香奈!?」
お姫様だっこである。
「香織ちゃん、ありがとう・・・後は任せて?」
私は結界の端、花子さんの前の辺りに寝かせる。
その時に花子さんにもジェスチャーで指示をする。
う〜〜ん分かったかなぁ??
私はその場を離れると、吸血幼女に向き直る。
「さって、準備はいいよ。第2ラウンド・・・始めようか?」
−−−−−−−−−−
基本的に1週間に1回の更新になります。
次回更新は10月23日の14時30分頃になります。




