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『見るモノ』 其の十

「つまり・・・戻って来たけど、いつ妖精の国に迷い込むか分からない・・・って訳ね。」


「そ、そんな・・・戻ってきても、結局は妖精にされてしまう・・・って事ですか!?」


私の言葉に、千佳ちゃんが戸惑いの色を隠せない。

そう、妖精が体内にいる千佳ちゃんは、いずれフェアリーリングを呼び寄せ、妖精の国に行ってしまうだろう。

このままならね。


「うん、そうなるね。でも、私とかのんさんは、不思議の専門家です。」

「何とかしてみせます。」


「加瀬千佳さんが見つかったんですね!」


其処に、堂島刑事も合流する。

堂島刑事にしてみれば、見つければ解決。なんだろうけど・・・

千佳ちゃんが妖精憑きと分かった今は、それを解決しないといけない。


「ええ、でもまだ問題があります。それを解決できれば・・・今回の事件?は解決です。」


(うむ、それで・・・香奈。今回の場合はどういう風に解決する?)

(まさか、憑いている妖精を払ってお終いとか言うまいな??)


かのんさんの言葉はまるで、私を試すかのよう。

華音さんの後を継いでから日の浅い私は、まだまだ勉強中な面が多い。

時折、かのんさんに試験的な事をされる。

さて・・・


『妖精憑き』


生まれながら、もしくは何らかの事情で妖精が取り憑いた人の事。

どちらにしても妖精は”その人が足りないモノ”を補う形で取り憑く。

たとえば、引っ込み思案な人に足りないモノと言ったら、積極性とか勇気とかになると思う。

妖精が憑くと、その部分が補われ性格も変わると言われている。

まあ、それは後から妖精に憑かれた場合。

かのんさんは、『生まれながらにして』って言っていた。

つまりそれは・・・


『生きる上で重要な何かを持って生まれなかった。』


それが何かは分からない。

無意識に取り憑くって話だから、きっと妖精自身も分からない。

ただ、妖精を失ったら・・・千佳ちゃんの命が危ない・・・かもしれないって事。

妖精は何らかの事情でチカラを補充できなくなって、消滅しかけている。

チカラを補充するには、妖精の国に行くのが手っ取り早い。

千佳ちゃんは妖精になって、こっち側に戻れなくなるけど・・・死ぬことは無い。

って事は、こっちの世界でチカラが補充出来れば・・・妖精の国に行かなくても良いし、妖精も消滅しない、千佳ちゃんも無事でWINWINだね。

つまりかのんさんは、その手立てを考えろって言ってる訳だね

この答え・・・実は簡単だったりする。

此所まで考えられたら答えは出ているようなモノ。

ある場所に行けば良い。

その場所は・・・


「じゃあ、早速行きましょうか。」

「ね?かのんさん♪」


私は、ひょいっとかのんさんを抱き上げる。


(うむ、分かったようだな。)


「はい♪勿論ですよ。」

「あれ?・・・皆さんどうしたんですか?」

「あ!」


私は、はっとしてトレントさんの前に立つ。


「トレントさん。大変お世話になりました。おかげさまで無事解決しました。」


《役に立てた様で良かったよ。》

《ところで・・・他の人間はきょとんとしているようだが・・・》


「・・・あれ?」

「行かないんですか??」


「えっと、香奈ちゃん?行くって何処へ??」


と花子さん。

そういえば、何処に行くのか言って無かった事に気がつく。


「あ、ごめんなさい。店に・・・『霧島華音』に行きます。」

「それで全て解決です♪」


「あ・・・そう言う事ね。」


「何がそう言う事なんですか??」


千佳ちゃんと堂島刑事は・・・やっぱり、きょとんってしてる。


「んー行けば分かりますよ。付いて来てください。」


私は皆を伴って、店へ向かった。


・・・

・・・

・・・


がちゃ。


扉を開けて中に入る。続けて他の皆の中に入った。


《あ、ああ・・・ちからが・・・》


妖精の声が聞こえる。

先程よりもはっきりと。どうやら目論み通りにチカラが戻ってきているよう。


《ありがとう。ここならばわたしのチカラももどるよ。》

《それにしても・・・ここはどこなの?》


「此所は霧島華音です。」


元の店主の名前がそのまま付いた『不思議』を扱う『何でも屋』。

そして此所は・・・『現世うつしよ』でも『常世とこよ』でも無い。

『霧島華音』と言う場所。


「千佳ちゃん。貴女に取り憑いている妖精が本調子になるまで・・・そうだね・・・週1位で此所に顔を出して貰えるかな?」


「は、はい・・・分かりました。」


いきなり振られ、まだ事情が飲み込めない千佳ちゃん。


「妖精さん。そういう訳だから、妖精の国に連れて行くのはやめて貰えるかな?」


《うん。わたしは、ちかがぶじならそれでいいの。》


「そうだね。これからも・・・千佳ちゃんの事を見守ってあげてね。」


《うん。》


「・・・」


千佳ちゃんは無言のまま。

一人の少女を生まれた時から見守ってきた妖精。

その真意は、少女を助ける為。たとえ自分が嫌われようとも・・・


「ね、千佳ちゃん。妖精さんは、千佳ちゃんの事を思ってやったんだよ。」

「其処は分かってあげて欲しいな。」


「はい。それは分かってます。でも、あの世界で私・・・凄く怖くて・・・」


《ごめんなさい。ちか・・・でもねわたし・・・》


(香奈。後は千佳と妖精の問題だ。)


「そうですね。」

「ではっ!!此にて・・・一件落着〜〜〜って事で?」


と、堂島刑事を見る。

はあっと、堂島刑事はため息を一つ。


「良くは分かりませんが・・・ご協力ありがとう御座いました。」

「事件は・・・無事解決です。」

「問題は・・・」


「問題は?」


「これからどういう風に報告書を書くか・・・ですよ。」






−−−−−−−−−−




次回更新は第2章エピローグの為、本日の16時30分頃になります。

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