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『見るモノ』 其の九

「堂島刑事。戻りました。」


「ああ、お帰りなさい香奈さ・・・その重箱の様な物は何です?」


公園に戻った私に、堂島刑事からのツッコミが入る。

重箱じゃなくて、黒いボディがイカス名ゲーム機・・・なんだけどね。


《重箱とは失礼な男だ。我は神だぞ。》


「あ、堂島刑事。こちらは付喪神のゼクスさんです。」


「・・・そうですか。失礼しました。」

「もう、いい加減なれてきましたよ・・・香奈様達の『不思議』に。」


「ん。それは結構な事ですね♪」


私はウィンク一つ。

そしてゼクスさんを抱えて、トレントさんの後ろにある妖精の世界の出入り口の前に立つ。


「ゼクスさん。コレと同じ世界の出入り口をその世界に居るかのんさんの近くに作れますか?」


《ふむ・・・少し調べさせて貰おう。》

《だが、ひょっとしたら厠神のチカラを借りないと無理かもしれんな。》


ゼクスさんは黒いボディをぴょんぴょんさせながら、穴のまわりを調べている。

うん、ちょっと可愛い。

でも、花子さんのチカラもいるとなると・・・ちょっと大変かも。

かのんさん、なるべく自力で帰ってきてください。


ぽふん。


あれ?帰還の符が帰ってきた。

妖精の世界でかのんさんが、帰還用の符を使ったみたい。

符だけ帰ってきたと言う事は、向こうの世界からコチラの世界の座標は認識できるけど、全員を送り返すだけのチカラが無かった・・・って事だよね。

私のチカラ不足で、帰還の道が一つ消えてしまった。

でも、符を使ったって事は、無事に加瀬千佳ちゃんを見つけられたって事。

ならば、このまま出入り口を作る方向で進める。


「ゼクスさん。どうですか?」


《結論から言えば可能だ。》

《正し、厠神のチカラがいるな。我のチカラを持って座標を定着させる故に、空間を切り裂く武器を作れ。》


武器・・・武器か・・・

馴染みが深い”アレ”にしようかな。

私は、符を2枚取り出す。この符は先程のようにこれからチカラを込めるわけでは無い。

既にチカラが込められている。


陽華璃ひかり


そう呼ばれる符術の奥義。

陽、華、璃の3種からなる符を組み合わせて発動する。


「陽、璃、符・・・『幻太刀』!」


無から太刀を創造する。

私の作った太刀・・・と言うより剣は・・・『聖女のロングソード』

私がオンラインゲームで愛用している剣だ。

尤も、盾特化のタンクなので、剣はあんまり使わないんだけどね。


《成程、確かお前の剣だったなそれは。預かろう。》

《香奈。チカラを頂く。》


ゼクスさんが剣に術を付加すると、私の体から大量のチカラが流れ出る。

私は歯を食いしばり堪える。

属神を”店の外”に出すだけでもチカラが居るのに、こういった術を用いる場合はさらに消費が激しい。


《此でいいだろう。後は厠神に頼め。》


「ん、ありがとう。・・・」


私はゼクスさんを抱え上げ・・・


「また、店に行ってきまーす。こっちは宜しくお願いしまーす。」


《なんじゃ、忙しい娘だのう・・・》


「またですか!?」


二人?の言葉を聞きながら、店へ戻る。


がちゃ!


「え?香奈ちゃんおかえりー?」


「はい、ゼクスさんは此所で!」

「花子さん行くよ!!」


店に入るなり、ゼクスさんをソファーに置き、花子さんの手を取って再び店を出る。


「え?え??何?何??」


訳も分からぬまま連れ出された花子さんに、歩きながら説明する。


「んー分かった。剣に空間移動能力を乗せれば良いんだね?」

「何にしても・・・」


トレントさんの元に着くと、花子さんは穴を調べる。


「一応、簡単には調べさせてね?」


「ん。お願い。」


ジリリリリリリリリリ・・・・


その時、セットしておいた”たいまー”の符が大きな音を立てる。

1時間が過ぎて、連動しているかのんさんの符が時間を知らせた合図だ。


「おっけ、香奈ちゃん、剣で空間を斬って!其処に移動能力を乗せる!」


「りょーかい!、いっくよー」


ざんっ


私が剣を振り下ろすと、花子さんが術を乗せる。

再び襲われる疲労感。今日はチカラを使いすぎているかもしれない。

振り下ろした剣の軌跡に空間が裂ける。

その奥には、かのんさんと少女・・・加瀬千佳ちゃんの姿が見える。

私は、その裂け目へと飛び込んだ。


・・・

・・・

・・・


「って訳なんですよ。」


(そうか、あの付喪神を使ったのか・・・)


「なんか、分かんないですけど、ここから帰れるんですか?」っと千佳ちゃん。


「あ」(あ)


(話をしている場合じゃ無かったな。千佳、すぐにこの切れ目に入れ。)


「急いで!」


私は、かのんさんを抱き上げる。


《まって・・・いっちゃだめ・・・》

《いったら、ちかは・・・》


妖精?の声を尻目に、私と千佳ちゃん、かのんさんは切れ目に飛び込む。

抜けた先は・・・私がさっき空間を斬った場所。


「これで、解決かな?」


(いや・・・まだだ。)


「どう言う事です?かのんさん。」


(それはな・・・)


《まだまにあう・・・ようせいのくににもどって・・・ちか・・・》


先程よりも大分弱々しい妖精の声が聞こえる。

何処から!?

此所は妖精の国では無い。

一緒に穴に入って此所まで来たのだろうか?

その穴も、既に塞がってしまっている。


「え!?まだ・・・まだ妖精の声が聞こえる!?」


千佳ちゃんも動揺が隠せない。


(言っただろう。千佳。お前は妖精憑きだ・・・と。)

(お前は生まれながらにして、妖精を宿していたんだ。)


「つまり・・・戻って来たけど、いつ妖精の国に迷い込むか分からない・・・って訳ね。」






−−−−−−−−−−




基本的に1週間に1回の更新になります。

次回更新は 7月17日の14時30分頃になります。

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