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究極の美女の幸せ  作者: 森しゃおこ


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第八話 謎の手術



「どういうことですか…?」



 クリニックを訪れた私に対する彼の説明はとてつもなく漠然としたものだった。それでも老人は説明を続ける。



「何度も言っているだろう。目と口、輪郭を整形する。同時に崩れたバランスの調整をする。それだけのことだ。」



「だからその詳細を教えて下さい!!」



「詳細は手術をしながら調整するのだ!!今はなんとも言えん!!」



 そういうと老人は私に今までの手術の成功例を見せてくれた。どの女性も明らかに美しくなっている。しかしだからといって何もわからないままおまかせで整形をするなんて…。



「もし気に入らなければ元に戻すと約束する。」



「……。」



 私は結局答えを保留にしてクリニックを後にした。老人と知り合ってからネットで彼のことを調べたがその評判は凄まじいものだった。神の手、奇跡の施術とマスコミは一斉に彼を褒め讃え手術を受けた患者は涙を流して喜んだという。

 もちろんアンチがいないわけではなかったがそれはやっかみや嫉妬というレベルで彼の技術の高さは疑う余地がなかった。だからこそ少しだけ楽しみでもあった。最高の医師が最大の情熱をもって行う手術。しかしそれがおまかせコースとなれば話は変わってくる。



「いいじゃない大丈夫よマルちゃんなら~。」



 と、相変わらず楽観的な母。



「少しの身勝手は否めない、だが本来なら何百万もする手術だろうからな。」



 父は慎重ではあるがやはり賛成のようだ。娘の顔がいじられることに抵抗はないのだろうか。それとも二人とも私をブスだと思っていてなんとかしてくれるなら喜んでという本音があるのかもしれない。



 そんな中私は自分の知る限りの最も常識人であり信頼できるおばあちゃんに連絡を取ることにした。四国の海沿いに住む祖母は早くに祖父を亡くし女手一つで母を育ててきた。

 苦労の絶えなかった祖母は周りの人々に助けられその分できる限りの恩を返し真面目に質素になるべく目立たないよう、ここ大事、なるべく目立たないように過ごしたという。私のルーツとなる祖母から生まれたのがあの母なのだから人生とは儚い。


「どないしたん?さなちゃん」


 歳を経てしわがれている祖母の声も私には癒やししかない。なるべく簡単に状況を説明し整形に対しての考えを聞くと、その答えはおおよそ私の想像通りだった。


「やめなやめな~。そんなん人様が見たらどう思うんな?」


 どう思うかはその人次第…つまり悪い感情を持つ人もいる。



「さなちゃんは今のままで十分かわええで」



 ありがとうおばあちゃん。私の味方はあなただけです。



「でもぉあたしならやるわな。」



 ババァ…。なぜ余計なことをいうんだ。



「いくつになっても美人になりたい思うんは女の本能じゃわ。」



 その気持ちはわかる。そのためならいくらでもお金を出すという女が世の中溢れてていることも知っている。そのお金があの老人の元へ流れ込んでいることも。だからきっとあの申し出は幸運なものなのだ。多くの女達が私と変われるものなら変わりたいと願うだろう。それこそ土下座だってするだろう。

 本来私はあの地位も名誉もお金も持っている老人が頭を下げるような相手ではない。それこそ土下座して、お金を払い、親のご機嫌を取ってまで…。



「それにね、さなちゃん。今の時代はもう私らの頃とは違うからね。目立たないだけでは生きていけないよ。」



 それは唐突で意外な言葉だった。私と同じ平凡で地味であることを最善と話していた祖母の言葉とは思えない。


「昔はねぇ,地域の人皆で協力してご飯も子育てもしよった。けんど今はちゃうやろ?特にさなちゃんとこの都会は隣の人の顔も知らんていうやない。狭い地域ん中では美人は悪目立ちするだけよ。

 男はソワソワして喧嘩もする。それで女も腹が立つ。けんど都会ではそうやないんちゃう?美人はそれだけで色んな人が助けてくれる。女は敵に回すかもしれへんけど、今の人は他人に興味を持たんやろ?美人いうだけでは生きるのに有利やわ。」




 驚きだった。祖母までがそんな風に考えているなんて思ってもいなかった。これは恐らく退路を絶たれたのだ。

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