第七話 それが人情
老人は翌日も翌々日もやってきた。そして毎夜酔いつぶれた。二日目は前日の無様を詫び、二度とあのようなことはしないと誓い同じ様に酔いつぶれ、三日目はお得意の土下座である。誓いは守れなかったが涙ながらに謝る老人はなかなかに人間臭くて好感が持てた。
まさか母はこれを狙って老人を酔い潰しているのか?なんて考えすぎだろう。しかし迷い始めたのも事実。私は整形がしたいわけではない。きれいになりたいわけでもない。ただそのために必死になっているのになかなかうまく行かない老人の願いを叶えるためならすでにちょっと目立っているしこのレベルの目立ちならいいのかなと思わなくもない。
もちろん手術への不安もある。だがどんな手術をするか説明しないわけでもないだろう。話を聞いて納得できるのであれば受けても構わない。そう思い始めている。
四日目の老人は紳士だった。ジャケットも新調している。
「事ここに至る数々の非礼、ご容赦いただきたい」
家に入らず自宅前で正座待機していた。心なしか数少ない毛髪も頭を垂れている気がする。
「頭を上げてください。こんなところ近所の方に見られたら噂になります。」
私がそう言うと老人の目から大粒の涙が溢れた。
「あ、ぐっ、うう…わ、私は…私は…」
老人の嗚咽は止まらない。新調したジャケットにあっという間に涙のシミが広がる。
「開業して幾星霜…皆にちやほやされ、お金も増え続け…天狗になっていた。人の気持ちもわからず自分の都合ばかリ…君の言うことはいつも全て正しい。私はなんと…愚かな人間なのだ。だがわかってほしい!!私はただ本気なのだ!!」
「それはもう十分にわかりました。私は地味な人間ですが人並みの人情は持ち合わせています。明日あなたのクリニックへ伺います、そこで詳しい話を聞かせてください。」
老人は歓喜、それから疑問という顔をした。自分のしたことで嫌われたと思っていたのだろう。十代の小娘が失礼を承知で言わせていただくなら、それが人というものなのですよ。




