第九話 最初の手術
覚悟を決めてクリニックの扉を叩く。私が足を踏み入れると両脇にずらりと並んだスタッフが一斉に頭を下げた。その中心で丸田老人が両手を広げている。
「よく来てくれた。」
歓迎の言葉を述べる老人。
とりあえず一度だけ…私がそう話すと丸田老人は気が変わる前にとその日のうちに手術の準備を整えニコニコ笑顔での力強い握手の後、3億円の小切手をくれた。
私は様々な検査を受け、検査結果次第で明日手術となり今日はそのまま入院することになった。私はこの日の夜を忘れることはないだろう。美男美女だらけのスタッフは私に対して行き過ぎなほど丁寧で優しく、夜の食事も見たこともないほどの豪華フランス料理で、食べ方すらわからなかった。さらに食後には16種類のスイーツとフルーツから好きなものを選べという女子高生なら写真を撮らずにはいられない歓喜の代物。
この高待遇はきっと老人が私の対応をスタッフに言い聞かせているのだろう。ありがたいが私のような地味女はこんな風にイケメンにお世話されるのも少し困ってしまうのだけれど、それがわかる老人でないことは最早証明されている。
翌日は朝から慌ただしかった。老人はテキパキと指示を出し看護師さんがバタバタと駆け回っている。私は検査に異常のなかったことを告げられ、一度お風呂に入り清潔にするよう言われた。お風呂を上がった私に用意されていたのはよくドラマで見る病院で患者さんが着ている緑色の服だった。ストレッチャーに横になるとそのまま手術室に運ばれ一日ぶりに老人と再会した。
「少しの間眠っていておくれ。目覚めたときには世界が変わっている。」




