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究極の美女の幸せ  作者: 森しゃおこ


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第三十七話 究極の美女の誕生


風を感じる。頬を撫でる風。包帯の中でもそれを感じる。しかし私は今までと違い気を緩めてはいない。包帯がゆっくりと取られていく。しかしそれは本当にゆっくり。先生の手が震えているのがわかる。しかし手伝うスタッフもそばには居ない。これは私と先生二人だけの儀式なのだ。手術ではなく、今この瞬間に私は魔法をかけられているのかもしれない。



ドォッと言う音がした。私はすぐにナースコールでスタッフを呼び先生に駆け寄る。今までのことを考えれば先生が倒れるのは必然。最も難しい手術を終えた先生は前回よりも悪い状態の可能性が高い。



「大丈夫ですか先生!!」



 先生の顔はいつになく青白く、身体も震えている。



「おぉ…なんと美しい…。これぞ究極の美…。」



 気づけば私の包帯は床に散らばっていた。鏡を振り返る。心臓がどくんと高鳴る。



「これが…私…。」




 そこに写っていたのは紛れもなき究極の美女。ただの美女ではない。完璧なシルエット、完璧な色彩。


完璧な髪、完璧な眼、完璧な眉、完璧な耳、完璧な鼻、完璧な輪郭、完璧な歯、完璧な首、完璧な腕、完璧な胸、完璧な腰、完璧な背中、完璧な足。

 完璧じゃないところが見当たらない。目を離せない。鏡に眼が吸い寄せられる。私の周りが光っている様に見えるのは気のせいだろうか?それとも私の美の力が周囲に影響を与えて光らせているのかもしれない。




「大丈夫ですか!?」



 ドタドタとスタッフが入ってくる。人数は10人はいるだろう。この状況を予測していたのか手際よく治療に入る。すぐに先生をストレッチャーに乗せ医療ドラマでよく見るような酸素のマスクをつける。白衣の医師はいつか私に苦言を呈した人物だ。



「さな…ちゃん。」




 瀕死の先生はそれでも私に言葉を投げかける。




「ありがとう…。君のおかげで私は夢を叶えることができた。究極の美女を自らの手で作り出しその姿を見ることができたのだ。最早思い残すことなどない…。



 いいかいさなちゃん、究極の美女は歴史を変え争いを起こす。これまでの歴史的美女が皆そうだったようにね。君はその上を行く究極の美女だ。だから…どこか小さな町で…静かに…。」



先生はそのまま意識を失ってしまった。スタッフが慌ただしく彼を運んでいく。



「先生は一人で三日三晩手術していたんだ。その後も君が目覚めるまで君の健康管理を怠らなかった。あれでは倒れて当然だ。」



 私に悪態をつく医師、しかしその瞳が私の姿を捉えた瞬間、曇っていた表情が固まる。



「う…美しい…。」



 その言葉に導かれるように皆がこっちを見る。全員の視線が集まり全員の動きが止まる。




「早く!!先生を!!」



 私の言葉で正気に戻ったのか先生が運び出される。



やはり今回も皆の視線は変わってしまったようだ。でも手術はこれで最後。私はこの姿で生きていかなければならない。その覚悟もある。しかし方向性は見えていない。早く私の未来を手助けしてくれるであろう先生にアドバイスを頂きたい。私は先生の無事を願いクリニックを後にした。




今までと何も変わらない町並み。一人歩く。体調はすごくいい。おそらく最初の状態よりも完璧に身体のバランスが保たれているのだ。身体が軽い。通りを歩く人々と目が合う。

私はすぐにそらしてしまうが相手はずっと目を離せずにいる。当然だ。いやその程度ではない。彼はこれからネットで私のことを調べたりするのではないだろうか、一日中調べて明日もあさってもここで私を待ってたり…そう考えると少しおかしい。




「あ、あ…あ…。」



 気がつくと男が真後ろに立っていた。驚いた。私に近づいたりできないと思っていた。落ち着け。今までだってそうだ。いろんな反応をする人がいる。最近は避けられることが多かったが彼はそういうタイプではないのだろう。



「あの…なにか御用ですか?」




「う…うああああああああ!!」




 突然の絶叫、驚愕の表情。自分の見ているものが信じられないような…。




「ああ…!!あ!!」



 私という存在を処理できないのか。今までもそういう人はいたがこれは…異常だ。私を恐れているのか、それとも自分の醜さが嫌になったのか?



徐々に人が集まってきている。そこに混ざっていた制服姿の警官が彼を取り押さえる。しかし、彼らも私を見ると放心状態になってしまった。病院のスタッフと同じだ。



「な、なんなんだこの方は…。人間…なのか?」



 集まっていた人たちの視線が一斉に私にうつる。それぞれの反応は全てが異常だった。その場で土下座をする者。ガタガタと震えだす者。放心状態になる者。


 私はすぐに病院に連絡し車を呼んだ。運転手は濃い目のサングラスで私を見ない様にしている。運転には危険すぎるガが背に腹は変えられないというやつだ。




「先生は私のことなにか言ってなかった?」




「退院直後が最も危険だからしっかり見張っておくよう言われています。」




 確かに…私がこの体に慣れておらず、他者への対応ができていない状況は危険すぎる。しばらくは自宅に籠り対応策を練る必要がある。



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