第二十三話 さなとマルボウ
三度目の手術の前に今後の全体を通しての手術の説明が行われた。しかし先生はやはり状況次第をくり返すのみで要領を得ない。
それから多くの検査が行われた。血液検査はもちろん、心臓のエコー、レントゲン、CTスキャンに尿検査まで。どの検査も異常はなく先生は満面の笑みだった。
「究極の美女へ到達するまでおそらく後5、6度の手術が必要だろう。正確な回数は状況次第だがまず間違いない。後は手術のペースだが本来なら何ヶ月が間隔を開けるべきところだが君の場合は問題ない。」
先生によると私の身体は他の人に比べて手術の負担がほとんどかからないらしい。特異体質と言うべきか、手術後こんなにも早く包帯が取れたのは先生自身も想定外だったらしい。
「これならかなり速いペースで手術をしても問題ない。究極の美女の道は近いぞ。」
夢が近づいていることに興奮を隠せない先生。
「くれぐれも!!くれぐれも怪我や病気には気をつけるのだぞ!!」
「そう言われても…。」
「今後体育の授業は見学じゃ。何かあってはかなわん。それから学校までは私が送り迎えをしよう。どんな些細な事故も見過ごせんからな。」
「……。」
「そうじゃいずれは学校も休んでもらったほうがよいな。美の力が増せば良からぬことを考える輩が出てくるやもしれぬ。」
「先生…。」
「心配には及ばん。私が最高の家庭教師を用意しよう。」
「……。」
無言の圧力を掛ける。ようやく状況を理解したのか、先生が話を止めコホンと咳払いをして私を見る。
「え、え~と、何か問題があるようだね…。」
「学校は休みません。体育も見学しません。」
「し、しかし…。」
「私の普段の生活に支障をきたすことはしないという契約です。」
「支障などと…私はただ君の身体が心配で…。」
「先生が心配なのは手術結果に支障が出ることですよね。」
「……。」
「先生の言うことを何でも聞くという契約ではなかったと思います。もし契約書にそんな事が書かれていたとしても私は断固拒否します。」
「…わ、わかった。」
しぶしぶ首を縦に振る先生。見た目が変わった事による変化に対応するだけで精一杯なのだ。これ以上私の日常を変えられてはたまらない。
「私は先生の患者ですが物ではありません。そこは間違えないでください。」
「君には…教えられてばかりだね。」
相性というのだろうか。 私と先生の会話はこうして私がマウントを取る形になることが多い。先生の行動の深層にはやはり自分の欲望が優先されている。すなわち美への探求だ。おそらく私以外の人にはこんな失礼なことを言ったりはしないのだろう。そして私も先生相手でなければこんなに強い言葉は言えない。酩酊姿と土下座姿を見たせいなのか変に強気になれてしまう。
「全くいい歳をしてお恥ずかしい。私は君のこととなるといつも周りが見えなくなってしまうようだ。」
「お気持ちはわかりますが…。私にも譲れないところがあるので。」
「もちろんだ。遠慮なく言ってくれ。君の身体が心配ではあるが君の日常を守ることには変えられない。配慮すべきだった。」
「わかってもらえればそれでいいんです。」
「私の求めていた存在が君という人間で良かったと心から思うよ。」




