第二十一話 生きる力
「自信がついたと言うことだよ。」
それが先生の第一声だった。
「そうでしょうか?どちらかと言うと人の気持ちが分からなくなったのかなって。」
「そうではないよ。学校というものは常に幾つかのグループに別れるだろう?それは部活動であったり趣味嗜好であったり様々だが、例えばあるグループで一人だけ急激に成績が良くなったとしよう。するとその子は勉強に興味を持つ。同じような思考を持つ別のグループのほうが話も合うし仲良くなるだろう。」
「つまり私はもう今までと同じグループにはいられないということですか?私に合うグループを探せと?」
「君は目立つのが嫌いと言ったね。それはおそらく君の仲の良かった子たちもそうなのだろう。だから居心地が良かった。けど君という存在はすでに目立っている。学校一の美女なのだから無理もない。」
「……。」
そうか。みんな私といることで目立ちたくないんだ。それでも今までの付き合いがあるからある程度は我慢してくれていた。
「これ以上一緒にいることはお互いのためにならない…?」
「それでも大事な友人を失いたくないというのであればきちんと話し合って解決策を探すべきだろう。」
先生の意見は正論だ。けれど私は皆と話し合おうとは思っていない。それは彼女たちが大事じゃないからではない。私の性分なのだろう。友達同士のゴタゴタを話し合って解決という行為ができる気がしない。大事とは言えお互いに面倒になったら別れる程度の関係だったのかもしれない。彼女たちを失いたくはない。しかし私は今自分のことで手一杯。
とても人間関係の修復をがんばる余裕はない。そしてこれからも私は変わっていく。その度に衝突が起きるのであれば彼女たちに迷惑をかけたくもない。私の理屈は間違っているだろうか?
最近の母は私と一緒に出掛けたがった。綺麗な娘を見せびらかしたいらしく、カフェでも外食でも娘が娘がと店員になんだかよくわからないアピールをしている。母は嬉しそうだし親孝行になったならまぁ良かった。ついでにパフェも買ってもらおう。
「それにしても可愛くなったわねぇ?あんたが生まれたとき本当に私の娘かと思うくらい猿だったのに。」
「それは誰の娘だってそうだよ。」
「最近のお父さん見てよ。メガネの奥でしょっちゅうあんたの事チラ見してるわよ。」
驚いた。あの父がそんなことを。
「たまには二人で出かけてあげたら?」
「私は別にいいけど、お父さんなんも言わないし。」
「本当よねぇ。私から誘ってあげないと何にもできなかったんだから。」
「お母さんはなんでお父さんだったの?お母さんなら他にもっとこうイケメンだったりお金持ちだったり狙えたんじゃないの?」
「そうねぇ…強いていうなら欲がないから。」
欲?
「イケメンの男は自分と釣り合う美人がいいと思う。金持ちの男は自分に見合うアクセサリーのような女を選ぶ。つまりね、どちらも変えが効くのよ。付き合っててもどこかでもっといいアクセサリーを探してる。どこまでいっても満足しない。だからこそ金持ちになれるしイケメンでいられるんでしょうね。そういう生きる力を持ってる人は魅力的ではあるけれど、結局人を愛せないのよ。」
母らしくない真面目な言葉。それはさなぎから蝶へ変化しようとしている私への警告なのだろうか。私には生きる力があるのだろうか。




