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究極の美女の幸せ  作者: 森しゃおこ


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第十五話 父は大人


手術をしてから私の生活は少しずつ変化していった。鏡を見るとしばらく固まってしまう。



 これが私…。



 かわいい…。



 なんだかこそばゆい感情に襲われる。かわいいなんて私とは別世界の言語だと思っていた。学校でも遠くからチラチラと私を見ている男子がいる。外食すれば店員さんは今までの数倍優しい。人は見た目で判断されるのだと思い知った。


恐ろしいのはこれが第一段階ということだ。究極の美女とは一体どんな状態なのか想像もつかない。私は少しずつ化粧を覚えた。可愛いからこそもっと可愛くなる。そんな気持ちが行動に現れたのだ。少しだけ世界がきれいに見える。なんだか一気にできることが増えたような気がする。それもそのはずだ。地味女から多少増しになる程度と思っていたのがいきなりクラス一の美女なのだ。みんなにどういう態度をとったらいいのかもわからない。

 美人らしく高飛車になるべきなのか、地味に目立たないようにするのはおかしいんじゃないのか、軽いパニックだ。今まで通りと平静を装うのが一番と思い直しても周りの態度が違う。声をかけてくる男子はみんな下心がミエミエだ。対応に困ってしまう。



でも慣れていくしかない。まだ今なら戻ることはできる。でも戻りたいとは思えない。それはそうだろう。いくら今まで興味がなかったとはいえ実際きれいになった自分の姿を見てまたブサイクに戻りたいなんて思う女がいるはずがない。しかもこれからもっと進化することが約束されているのだ。

 

 もちろん不安はある。けれどそんな不安を吹き飛ばすほどの期待。これから一体どんな風になれるのか?未来の選択肢が一気に増えたような気がする。究極の美女になればなんだってできる。なんだって夢が叶う。そんな錯覚に陥りそうになる。


ご機嫌で帰宅した私を両親は歓迎してくれた。



「今日はすき焼きよ~。」



「どうしたの?なにかお祝い?」



「何かってそりゃ娘がきれいになったことよ~。」



 母は更に上機嫌のようだ。珍しく父も先に食卓についている。



「今度マルボウさんに菓子折りでも持っていこうか。」



「なにいってんのよ~あの人大金持ちよ?安いお菓子なんて持っていったら笑われるわよ。」



「なら高いお菓子でもいいだろう。この際ケチなことをする必要もない。」



「バカねぇ~。高いお菓子なんて簡単に言わないでよ。高級でも品が良い店と駄目な店があるの。そういうのわからず適当に買うと馬鹿にされるだけよ~。」



「……。」



 沈黙モードに入ってしまった。父は今日はもうしゃべらないだろう。


でも両親がこんなに喜んでくれるなんて思っていなかった。それは単純に嬉しいと思う。すき焼きも食べられて一石二鳥だ。



「さなちゃ~ん小切手どこ置いたの~?危ないからママが預っておくわよ~。」



「信用できません。」



「まぁひどい!!さなちゃんまだ未成年なのよ。大金の管理なんてできないんだから渡しなさい。」



 なんとミエミエの手口だ。下心だらけの男子高校生を遥かに凌駕する母の欲望に開いた口が塞がらない。



「別になくしてしまうならそれでもいいの。お金のためにしたわけじゃないし。」



「なにいってんの!!3億よ3億!!3億円事件の3億よ!?何万人というデカが必死こいて探し回って見つかんないような額なのよ!?」



 発想が私と同じで悲しくなる。



「早くお肉入れて。」



 説得が無駄だと理解した母はすき焼きづくりを再開してくれた。もしかしてこのすき焼きも私のご機嫌を取って口を滑らせるための罠だったのか?とも思ったが美味しいものは美味しいので良しとしよう。



「身体はなんともないのか?」



 おっと沈黙モードの父が口を出してきた。よほど機嫌がいいらしい。



「うん、もうなんともない。手術って言うと色々心配だったけど私は体質的に負担が軽いんだって。」



「じゃあ私もしてもらおうかしら。親子なんだから体質は似てるわよね。お金だってさなのがあるし。」



「私のであってあなたのものではありません。」



「つ~め~た~い~。」



「冷たくて結構。」



「まだ手術は続けるのか?」



「え?うん、そのつもりだけど。」



 父は真剣な顔で黙り込んでしまった。私はすでに先生の技術を信じ込んでしまっているが、確かに今回うまく言ったからといって次もうまくいくとは限らない。父はそれを案じているのかもしれない。



「ここでやめてもいいんじゃないか?」

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