↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双!! チン説弓張月 ―― 純愛路線かハーレムか!? それが問題だ!  作者: 幸田 蒼之助
家を守るという事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/71

現地調達じゃ

 皆、庭へ出た。

 大勢の郎党、下男に、今回徴用した男達が混じり、作業を行っている。

「それは、竹槍か」

「左様でござる」

「そうか。……太さ、長さは丁度ええ。あとは、節を丁寧に落とし、よう磨いておけ」

「はっ」

「そうせんと、戦闘中に手ぇ怪我してまうで。仮にも武具やからな」

 他にも、竹槍用より細め、かつ長めの竹が大量に集められている。

 そして、細めの丸太。こちらは杭用である。サイズそれぞれ、数パターン揃えて地面に並べられている。

 来(きた)る日に向けての準備が、着々と進められている。

「皆、作業の手はそのままに、聞け!」

 正通さんが声を上げた。

「米や菜の収穫終わりし頃合いに、また昨年同様、安芸勢が攻めて来るだろう。そうだな……竹槍、竹垣用の竹、杭……」

 正通さんが、そう言いながらオレに顔を向けたので、オレも頷く。

「うむ、充分じゃろう。あとは細引きじゃ。細引きが大量に要るわい」

 刈入れまでの間、郎党、下男は細引き作りに専念しろ、と正通さんは下知した。

「して此度(こたび)、一時的に力を借りておる者共よ。お前達は刈入れまでの数日間、槍の訓練じゃ。しかと励め!」

 ――おうっ!!

 数十人が、気勢を上げる。

「主(あるじ)殿」

 藤太さんが正通さんに声をかける。

「細引きを結う、麻が足りませぬぞ。多少の蓄えはあるが、此度必要となる量にはとても……」

「あっ」

 正通さんが、再びオレの方を向く。

 ん!? まさかオレ、やらかしたか。

 そうか。

 平成令和に育ったオレ的には、細紐やロープなんて、ホームセンターに行けば幾らでも手に入るもんなあ。それこそ一〇〇メートルでも二〇〇メートルでも。

 当世の場合、素材である麻(ヘンプ)を大量に刈り集めてきて、皮を剥いで湯で蒸して天日干しして……と、むっちゃ手間暇かけて作るらしい。藤太さん正通さんの解説によれば、急いでも一〇日は必要だという。

(うわぁ。まぢかよ)

 知らんかったわ。

 壷井にて、たかだかムシロを大量に集めるだけで、大いに手間取ったのを思い出した。

 あれだって、前世だとホームセンターでブルーシートを買い集めれば良いだけだもんなあ。

「申し訳ござらぬ。まだまだ経験の浅い若造ゆえ、そこまで考えが及びませなんだ」

 素直に頭を下げた。

「いえいえ。そこは儂らの方こそ、先に気付くべきでござった。為朝殿は悪うござらぬ」

 むしろ正通さんや藤太さんの方が慌て、頭を下げるオレを押し留める。

「まだ、間に合わぬとは限らぬ。敵は何も、刈入れ後即座に出張(でば)って来るとは限らぬからのう」

「いかにも」

「なるほど……。ではそちらでは、蓄えの麻で細引きを作って下さい。その間、我らの方で麻を刈り集めておきましょう」

「かたじけない。頼みます」

「さらに……」

 オレは二人に問う。細引きに代わる、何か代替品はないか、と。

「為朝様。ありますぞ」

 急に、後ろからオレの肩を軽く叩きつつ声をかけられた。振り向くと、吉田太郎(よしタロ)さんである。

「ツルを使えば良うござる。藤蔓(づる)でも、蔦(ツタ)でも、代わりはなんぼでもござる」

「いかにも」

 藤太さんも同意した。

「ツルならば、森の中に幾らでもござろう。馬の足止めに使う程度であれば、こうして支度し数を整える必要もござるまい。現地調達じゃ」

「左様。山路を進みつつ、一間ほどの長さのツルを刈り集め、先程申した四ヶ所に張り巡らす。大した手間もかかりますまい」

「そうか。わかった」

 オレと正通さんは頷く。

「されば、細引きは、竹垣を組むための分だけで良いな」

「それだけであれば、間に合いそうですね」

「ああ」

 何とかなりそうだ。

 ついでとばかり、オレはリアカーと台車を引っ張り出してきた。午前中に受け取ったばかりの品である。

「これは、何でござるか?」

「何と呼びましょうかねえ。名は、まだ決めておりません。……荷駄車は馬や牛に曳かせて荷を運びますが、こちらは人に曳かせます」

「ほう」

「して、こちらが台車。小さな荷を、然程広くない場所で移動させる時に使います」

 例えば、港で荷運びに使います……と用途を説明する。

 あっちの舟からこっちの舟へ、荷を移す。重さがあったり数があったりすると、作業効率が悪い。リアカーや台車を使えば、往復する人(ゝ)を減らせたり、往復する回数(ゝゝ)を減らせる。

 つまりコストダウンに繋がる。

「なるほど……」

「いくさの支度にも使えます。まあ今回は、防衛拠点まで少し距離がありますから、我らの荷駄車を使いますが」

 オレは、少しばかり腹案を披露した。

 台車はともかく、リアカーはそこそこ大きい。嵩張る。当世の船は然程大きくないため、幾らそれが便利であろうとも船に常備するのは邪魔だ。

「そこで、港に見世(みせ)を設け、これらを貸し出すのです」

 数を揃えておき、レンタル料を取って貸し出すのである。

 返却せずパクる連中も出てくるだろう。なのでレンタル料の二倍ほど、貸出時に保証金を取っておき、返却時に保証金のみ返却する。

「そういった仕組みにしておけば、損失もある程度抑えられます」

 アイデアは、まだまだある。

 オレは、港全体の利便性を向上させる案を、語った。

 例えば、メシを食ったり、多少の休憩が出来る見世を設ける。

 港で働く者達は大抵、肉体労働だ。当世は朝夕の二食というのが習慣だが、肉体労働者ならば昼に軽く食べたい者も居るだろう。軽く、茶でも飲みながら休憩したい者も居るだろう。

 そういった連中に、場を提供する見世。

 さらには安宿を設ける。需要は大いにあるだろう。

 汗を流せるように、井戸や着替えの場を設けてもよいだろう。夜に、食いながら飲める見世――いわゆる居酒屋――を構えるのもよい。……

「つまり、港全体の環境を整えるのです。そうすれば、何も安芸で荷下ろしせずとも、なにかと便利な尾道で……という流れが起きるかもしれない」

 リアカーや台車そのものが評判となり、日本中に輸出される特産品となるかもしれない。

 当地はそれこそ、鍛冶や鋳物といった産業の盛んな地である。各種の地金(インゴット)も容易に手に入る環境でもある。リアカーや台車など、大量生産の体制を整えやすいではないか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。