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転生無双!! チン説弓張月 ―― 純愛路線かハーレムか!? それが問題だ!  作者: 幸田 蒼之助
播磨にて

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あの山を超える方法を検討する

(つまらんっ。オマエの話はつまらん!)

 うぉっほんっ。

 須藤重季の兄、重澄(しげすみ)である。

 悪七別当(あくしちべっとう)の通り名を持つ、ないすばでぃの快男児でござる。以後、見知りおかれよ。

 我が愚弟は、最近こそ為朝様の世話役として、多少はお役に立てるようになった。

 だが、どうも真面目過ぎて、いかん。あ奴の話は硬過ぎて、つまらん。あれでは余人が付いて来ぬわ。

 男たる者やはり、武技とバカ話ぞ。武技に秀で、かつバカ話で盛り上がれぬようであれば、将は務まらぬ。ぶはははは……げほっ、げほっ、ぅをっほんっ!

 おっと、失敬。

(されど、我らが主・為朝様は……)

 手綱を握りつつ、ちらりと為朝様の方へと振り返る。

 武家らしからぬ、色白で端正なお顔。さすがにこの暑さゆえ、真っ赤に焼けておられるが。

 その柔和なご尊顔にそぐわぬ、人並み外れた弓の腕。我が須藤家期待の武芸達者と言われる、それがし重澄よりわずかに上でござる。わずかに、である。

 いや、ウソじゃ。済まん済まん。為朝様の方が、ムッチャ上でござる。

 ――須藤家の長男は、いずれ源氏一の武芸達者となるかもしれぬ……ような気がせぬでもない。

 と、向こう三軒両隣に評判で将来を嘱望されしそれがしも、元服早々に過ぎぬ為朝様には勝てる気がせなんだ。

 一町近い距離の的を、風の影響などもろともせず、一寸違わずど真ん中を射抜くなど無理でござる。あの、五人力と言われる新型の強弓を扱えねば、かような神業は成し得ぬものでござろう。

 弟・重季はしきりに、

「為朝様の深い知性に感服つかまつった」

 と言っておるが、それがしには半分程しか解り申さぬ。されど、

「一晩中、おなごが入れ替わり立ち代わり寝所にやってきて、寝不足やわ」

 とボヤく為朝様のお話には、腹を抱えて大笑いである。

 これぞまさに、豪傑たる(あかし)というものでござる。

 先日宿をとった寺では、稚児が二人ばかし寝所に忍んで来たそうではないか。慌てて飛び出し、しばらく寺の中を裸足で逃げ回った、という話には郎党皆大笑いした。

 いやはや、何とも愉快な(あるじ)ではござらぬか。

 そういう愉快な御方こそ、大将の器たり得る。郎党がついて来るというものである。

 我が愚弟にも、為朝様を大いに見習えと言っているのだが、どうにもならぬようだ。

「為朝様に、おなごを取られた……」

 と気落ちしておる始末。

 いや、かく言うそれがしも、少し前までは女人衆にモテモテでござってな。それがしに色目を使ってくるおなごが、二人ばかし()り申した。

 されど、見事に為朝様に……。

 いやいや、悔しゅうはござらぬ。あれ程見事な御大将であれば、そりゃもうおなごも皆、(なび)こうというもの。仕方あるまい。悔しゅうはござらぬ。全然悔しゅうは(涙目)

 再び、少し後ろを行く為朝様に視線を向ける。

 六尺という類い稀なる長身の為朝様が、まいばっは(ゝゝゝゝゝ)というデカい名馬に乗っておられる。

 牝馬である。

 馬ながら、早々から主・為朝様にゾッコンでござる。

 主を乗せ、楽しそうに足取り軽く駆けている。時折為朝様を振り返っては、ひひんっ、と声を小さく声を上げている。まるで、惚れた男に笑みを投げかけるおなごのようではござらぬか。

 左様。立派な御大将ともなれば、馬にさえ惚れられるのであろうの。それがしも郎党として、為朝様を見習わねばならぬ。

 ん!?

 お前は為朝様より八つも歳上のクセに何やっとんねんしっかりせんかアホかボケぇ?

 うるさい! 仕方なかろう。

 為朝様には逆立ちしても匍匐前進しても勝てぬ。勝てる気がせぬ。

 そも、我らは郎党として、為朝様に誠心誠意お仕えする身ぞ。そこを(わきま)えず、主に勝とうと考える方がおかしい。

 おっと。無駄話をしている場合ではござらぬ。

 ここ、播磨路もそろそろ終盤のようである。昨晩、宿を取った寺の者の話からすると、眼の前に横たわる低い山々を越えれば備前国ではあるまいか。

 はたして為朝様も、そう気付かれたのだろう。

「皆、止まれっ!」

 右手を大きく上げつつ、下知なされた。

 ちなみに、二〇台の荷駄車を停止させるのは、なかなかに困難である。

 要するに、馬が急に足を止めても、荷駄車は急に止まれない。ゆえに、荷駄車が惰性で前に進み、馬のケツに追突してしまうのである。

「しまった。やはりブレーキを付けるべきだったか」

 以前、為朝様が頭を抱え込んでおられたが、我々にはその“ぶれーき”とやらが何なのか、よう解らぬ。

 我が愚弟は、

「ああ……、なるほど」

 などとほざいておったから、為朝様が懸念なさっておられる意味が解ったのであろう。

 ん!?

 つまり、それがしより愚弟・重季の方が、賢いということか。

 まあ、いい。

 それがしの方が、ないすばでぃの快男児であるからして、その程度は認めてやろう。愚弟とてこの一年、己を高めんと懸命に励んでおるのだ。兄弟それぞれ、異なる特技で為朝様に尽くせば良い。

 為朝様の下知で、一行はゆるりと停止した。

 斯様に平坦な地で、ゆるりと停止するのは問題ない。下り坂などで停止する時が、難しい。

「あの山を越える方法を検討する。今日はこの辺りで宿を取ろう」

「まだ、少々早うございまする」

「いや、仕方あるまい。このまま進めば山越えの途中で野宿ぞ」

「なるほど」

「二晩、もしくは三晩逗留するかもしれぬ、と告げて宿を探せ」

「はっ、承知っ」

 それがしは愚弟と共に周囲を駆け回り、程なく一行六六人の宿を確保した。普段通り、そこそこ大きな寺である。

 寺に落ち着くと、為朝様は郎党を呼び集められた。

「この辺りの(みち)に詳しい者を、呼んで来てくれ」

 愚弟が広間を飛び出し、すぐに坊主を三人伴い戻って来る。

 為朝様は、三人に向かって尋ねた。

「我々は備前へ向かっている。備前へ向かう路は、幾つある?」

「概ね、二本でございます。他にも遠回りをすれば、幾本かありましょうが」

「一番、平坦な路を通りたい。どの路を選ぶべきか?」

「しからば……」

 坊主の一人が応える。

「海岸端を往くべきでしょうな。……されど一ヶ所、峠越えがございまする。距離は、六里(二四キロ)そこらで備前の海岸端に出ます」

「ふむ……」

 為朝様は暫く思案の後、改めて口を開いた。

「すまぬが、三晩、もしくは四晩逗留させてくれ、と当寺の(あるじ)に伝えて貰えないか」

 はっ、と坊主三人が広間を去る。

「オレは重澄さん、重季さん、吉田太郎(よしだのたろう)さんの三人と、一度峠道を確認してくる。向こうで一泊し、翌日こちらに戻る」

「はっ」

「留守は、兵衛太郎さんに任せる。その間、近くの林で丸太を二〇数本、切り出しておいてくれ。そうだな……太さ二寸(六センチ)、長さ一間(一八〇センチ)弱で良い」


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