アマツ部隊始動
「あらら、皆さん気合いが入ってますねぇ。それじゃアタシはそんな皆さんを陰から見守る事にしますねぇ」
「……なに他人事みたいに言ってんのよ、ルーン。あんたも新人に毛が生えたくらいの実力なんだから、カナタ達と一緒にみっちり訓練に励むのよ」
セルティさんから宣告されてルーンの顔があからさまに引きつった。余裕の笑みに歪みが生じたまま固まっている。
「ちょ、たいちょ……冗談ですよねぇ? アタシ長期任務を終えたばかりでこれから休暇を取る予定なんですけどぉ」
「デューイからちゃんと報告は受けていたわ。あんたがサルベージャー任務に就いている間、訓練すっぽかして遊び回っていたってね。長い休暇は楽しかったでしょ? つーわけでこれから訓練という名の任務に勤しみなさい」
「ぬぁっ!? デューイ中尉、なんて報告を隊長にしたんですかぁ! お陰でアタシの休暇がパーになったじゃないですかっ!!」
「私はお前の行動をありのまま報告しただけだ。訓練を怠り買い物などの娯楽に夢中になっていたとな。それにより明らかにパイロットとしての質が落ちている。丁度良い機会だ、ルーキー達と一緒に一から訓練をやり直してこい」
「パワハラァァァァァァァ!!」
ルーンの悲痛な叫びが周囲に響き渡る。なので何事かとまたまた整備士たちがこっちを見ている。
何度もお騒がせして申し訳ありません。整備のお仕事に戻ってください。――そんな気持ちを込めつつパイロット達で皆さんに頭を下げた。
「ったく、皆仕事してんだからでっかい声を出すんじゃ無いわよ」
「うう、アタシの休暇ァ……」
上司に冷たくあしらわれ憔悴しているルーンはふらふらしながらフィオナに近づいていく。フィオナは慈しみのオーラを出し両手を広げて迎え入れた。
正直ルーンが羨ましい。フィオナに優しく抱きしめられたら色々と柔らかそうで絶対に心地よいはずだ。
そう思っていた時――。
「……あんっ!」
突然色気のある声がフィオナの口から発せられた。
何事が起きたのかと見てみるとルーンが彼女の胸を揉みしだいているではないか。何て……何て羨ましい事をしてくれてるんだこいつは……! いいぞもっとやれ! じゃなくて離れ――。
「ちょ、ルーン! あ、あ、そこダメェェェェェ」
「ここか? ここがええのんか? フィオナは敏感さんなんですねぇ」
す……凄い! フィオナの巨乳がルーンの手に弄ばれ縦横無尽に形を変えている。服の上からだというのに胸の柔さが視覚情報を通して如実に伝わってくる。
眼福だ……感謝……圧倒的感謝……!! さすがルーン! 僕には出来ないことを平然とやってのける。そこにシビれる! あこがれるぅ!
目からは涙が溢れ思わず手を合わせて拝んでしまう。ありがてぇ!!
「ルーン、何てこと、ん……するんですぅ!? んんぅ! 止めてくださ……あぅん!」
「アタシの心の傷を癒やせるのはフィオナの極上の肉体だけなんですよぅ。……それにしても本当に凄いですねぇ。布越しにも関わらずこの張り! 柔らかさ! これは男を狂わせる身体ですねぇ! ああ……落ち着くぅぅぅ、癒やされますぅぅぅぅぅぅ」
普段他人をからかいニヤけ面をしているルーンが天使のような浄化された笑みを浮かべている。それほどまでにフィオナの身体は他人を癒やす効果があるということか。
自分も堪能してみたい。でもそれは出来ない。だってそれをやったら捕まるから……!
「んくぅ! カナタ、拝んでいないで助けてくださいぃぃぃ。……ああっ! らめ、お願いしますぅぅぅぅぅ!」
「…………」
あまりにも扇情的な光景にフィオナからナニをお願いされているのか判断出来なくなっていた。
必死に懇願されているので、取りあえずおぼつかない足取りで両手を前に突き出し近づいていく。
「ひゃあああ! カナタ、何をする気なんですか!?」
「お願いされたので僕も加わろうかと思いまして……」
「加わるっ!? 何を考えてるんですか! ふぁぁぁぁん! ルーン、お願い。もう赦してぇ……」
「赦すも何もフィオナは悪い事していないでしょ? それとも公衆の面前で乱れるいけない自分を叱って欲しいんですかぁ?」
「んくぅ……意地悪……しないでぇ! 私……もう……おかしく……なっひゃう……」
遠くから乾いた金属音が幾つも聞こえてくる。ふと見てみると工具を落とし食い入るようにこの光景に見入っている整備士が多数。
何かもう皆、このピンク色の空気にやられている。全てが色んな意味で限界に達しようとした瞬間。
スパァァァァァァンッ!!
小気味よい音が木霊した。その音により正気に戻った僕が目の当たりにしたのは、息も絶え絶え頬を赤らめぺたんと座り込んでいるフィオナ、その隣で後頭部を押さえているルーン、手をぱたぱたさせているセルティ大尉だった。
「酷いじゃないですか隊長、頭を引っぱたくなんてぇ! バカになったらどう責任取ってくれるんですかぁ!」
「安心なさい、もうこれ以上バカにはならないわよ。ったく、こんな公衆の面前で何てことしてくれてんのよ。そういうのは男共の目がない場所でやりなさい!」
……逆に周りに男がいなければやっていいんだ。
ぼんやりとそう思っていると瞳を潤ませたフィオナがこっちを非難の目で見ていた。
「……えっち」
「ごめんて……でも後悔してない! フィオナありがとう。これで僕は十年戦える!」
「十年なにと戦う気なんですか!!」
こんな感じで新生アマツ部隊は始動した。




