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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第2章 始動、新生アマツ部隊

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クラミツハ起動

 端末の画面を食い入るように見て操縦のイメージを膨らませていると、爺ちゃんが今度はフィオナの方に向き直る。

 一方のフィオナも緊張した面持ちで爺ちゃんを見ていた。


「――さて、それじゃ今度はフィオナの番じゃな。付いてきなさい」


「はい!」


 工場の更に奥の方に進んでいき爺ちゃんが立ち止まる。

 その場所には一機のA(アサルト)F(フレーム)がハンガー内に収まっていた。ワインレッドカラーを基調とした機体だ。

 全体的にスマートな印象のシルエットをしている。気になるのは前額部にあるセンサーバイザーだ。もしかしてこいつは――。


「長距離狙撃……スナイパータイプの機体じゃないの?」


「その通りじゃ。こいつは型式番号TMHX―05<クラミツハ>――アマツシリーズ五番目の機体で長距離の狙撃を得意としている」


 アマツシリーズは試作機である<イザナギ>と<イザナミ>の試験データを基に実戦仕様の六機が開発された。

 ――と言う事はこの<クラミツハ>で実戦用の機体が全て揃ったことになる。


「狙撃用ってことは<カグツチ>と似たコンセプトって事かな?」


「少し違います」


 フィオナが懐かしそうな目で<クラミツハ>を見ながら言った。


「<カグツチ>は広範囲に展開した敵部隊を重火器によって面制圧する機体です。一方の<クラミツハ>は狙撃によるピンポイント攻撃に特化した機体なんです」


「……それってつまり<カグツチ>の攻撃をかいくぐってきた敵機に白兵戦を仕掛ける<タケミカヅチ>と似たコンセプトって事?」


「はい、その通りです。<クラミツハ>と<タケミカヅチ>の二機は連携を想定して開発されているんですよ」


「そうなの?」


「はい。<タケミカヅチ>は白兵戦特化の機体である以上、乱戦になると敵に囲まれる危険性が高くなります。<クラミツハ>はその背中を守る為の機体なんです。スナイパーライフルによる長距離狙撃の他、各種ライフルによる中長距離戦に特化しています。<スサノオ>ほどではありませんが汎用性にも富んでいるので戦況に応じた戦い方が可能なんですよ」


「それは頼もしい……」


 確かに今まで背後に回り込まれないように気をつけながら戦ってきたので、背中を直接守ってくれる味方がいたら助かる。

 意識を攻撃に集中することで戦いやすくなる。


「それではフィオナには<クラミツハ>に乗って適合するか試してもらおうかの」


「分かりました。それでは行ってきますね」


 フィオナは臆することなくすたすたと歩いて行き<クラミツハ>のコックピットに乗り込んだ。

 それから間もなくメインカメラである緑色のデュアルアイが発光し起動に成功した。


「ふむ、どうやら<クラミツハ>は無事フィオナに適合したようじゃの」


「さすがはフィオナ。元々アマツシリーズのパイロットだっただけの事はあるなぁ」


「そうだな。<イザナミ>って機体は<クイーン>に取り込まれているから、試作機のもう一機……確か<イザナギ>だったか。それのパイロットだったんだろ?」


「そうなるね。だとするとフィオナはアマツシリーズの二機に適合したって事か。何かコツでもあるのかな?」


 バルトと一緒になってフィオナのパイロットとしての才能についてあれこれ話していると爺ちゃんの表情が一瞬だけ曇った気がした。

 最後のアマツシリーズが使えるようになったのにどうしてそんな顔をするのだろうと不思議に思ったが、再び爺ちゃんに視線を向けた時にはそんな様子はなかったので気のせいだったのかも知れない。


「おー、<クラミツハ>動いてるじゃない。さすがフィオナね」


 感嘆の言葉を言いながら歩いてきたのは紺色の軍服を身に纏ったセルティ大尉、デューイ中尉、ルーンのアマツ部隊の三名だ。


「おはようございます。本日から本格的に軍属になります。よろしくお願いします」


「よ、よろしくっす!」


 見よう見まねで敬礼をして挨拶すると三人は敬礼で返してくれる。さすがは本物の軍人なだけあって動きや腕の角度がピシッとしている。

 それに比べると僕とバルトの敬礼は素人感が出ていて格好がつかない。


「そんなにかしこまらなくて良いわよ。軍人と言ってもあたし達は独立愚連隊みたいなもんだからね。部隊内で敬礼やってる奴なんてうちにはほとんどいないわよ」


「そういうもんですか……」


「我々アマツ部隊を含め<アマギ>のクルーは能力優先で集められた為、人格を始め軍人としての自覚が乏しい問題児ばかりだからな。あまり気にする必要は無い」


「そうですねぇ。まあ、そのせいかアタシ達は他の部隊から腫れ物扱いされてるんですけどねぇ」


 和気あいあいと「自分たちは軍人としてまともではない」と話している三人を見て心底この部隊は大丈夫なのかと思ってしまう。

 

「へぇ、そいつはいい。オレも堅苦しいのは苦手だからな。独立愚連隊……結構じゃねえか」


 バルトは一瞬で順応してしまった。僕はまだ切り替えるのに時間が掛かりそうだ。

 部隊メンバーで話をしているといつの間にかコックピットから降りてきたフィオナが合流した。

 

「皆さん楽しそうですね。私も交ぜてください」


「部隊の仲間として堅苦しいのは無しって話をしていたところよ。――さて、これで新生アマツ部隊のメンバー六名が揃ったわね。今まで三人だったから一気に人数が倍になったわけだけど、部隊としてちゃんと機能するかはあんたらルーキー三人がどれだけ早く成長するかに掛かってるわ。ビシバシしごいていくからそのつもりで」


「「「了解!!」」」


 機体のオーバーホールが完了するまでそれに相応しい体力と技量を身につける必要がある。

 <タケミカヅチ>の作業が終える二週間しっかり訓練をして強くなれるだけ強くなってみせる。

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