第2章開幕 アマギ合流
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僕とバルトは<ヤタガラス>に戻り、ギガフォートレス<ケートス>が爆発を繰り返しながら海に沈むのを見届けた。
<ヤタガラス>の側では合流した機動戦艦<アマギ>が飛行していて<アマテラス>、<ツクヨミ>、<スサノオ>の三機はそちらに帰艦した。
これからどうしようかと思っているとデューイさんから通信が入る。
『こちら<スサノオ>。これで作戦完了だ、ご苦労だったな』
「お疲れ様でした。そう言えば避難していた『オキノミ』の住民はどうするんですか? 街は戦闘で建物や港が破壊されて人が住める状態じゃないですけど」
『彼らは軍の別働隊が保護する。付近の街に避難施設を造って『オキノミ』の修繕が終わるまではそこで生活して貰うことになるだろう』
「そうですか。それなら良かった」
良かったと言ったものの実際には全然良い状況じゃない。
戦闘で自分たちが住んでいた街が破壊されたんだ。彼らにしてみれば最悪の状況と言えるだろう。
それに今回はたまたま敵の中に良心的な人物がいたお陰で事前に避難することが出来たに過ぎない。
ジェノバのような破壊を楽しむ人物が今回の相手だったら『オキノミ』の人たちは全滅していたかもしれない。
そんな事を考えるとゾッとする。これが戦争なんだ。
『……その様子だと、今回の戦闘結果が最悪の状況と紙一重だったという事が分かっているようだな』
「フォルネスが街の人たちに避難を促していなければ地獄のような光景が僕たちを待っていたはずです。正直悔しいですよ。街を破壊した相手に心のどこかで感謝している自分がいるんです」
『それが戦争だ。悔しいこと、理不尽と思うことがこれからついて回るだろう。私たちはそれを呑み込んで前に進まなければならない。大切なのは今感じているその憤りを忘れないことだ』
「――はい。忘れません、絶対に」
デューイさんの話によれば既にサルベージャー保有のAFに対して調査が入っており『ノア11』領内で広まりつつあったOS強化装置は一掃されるとの事だった。
こうしてOS強化装置に関する事件は幕を閉じた。
――そして僕たちの戦いは次のステージへと進むことになる。
『カナタとバルトは機体に搭乗したまま待機。これより<ヤタガラス>は<アマギ>の後部デッキにドッキングし、そのまま搬入作業に入る。その際お前たちは機体を<アマギ>のAF格納庫に移動させてくれ』
「了解です」
『分かったぜ』
<ヤタガラス>は進行方向に対して百八十度回頭すると<アマギ>の後部デッキにドッキングした。
後部ハッチが開くとその先には<アマギ>の格納庫ブロックが続いていた。
「へぇー、輸送機と空中でドッキングすることが出来るのか。それで物資の搬入もスムーズに行えるんだなぁ」
感心しているとモニターに爺ちゃんが映る。その奥にはフィオナやバルトの仲間たちの姿もあった。
『わしらはこのまま<アマギ>のAF格納庫エリアに移動する。カナタとバルトは後に続いて来るんじゃぞ』
そう言うと物資搬入用の車両が進んでいくのが見えた。モニターを拡大して見てみると爺ちゃん達が搭乗している。
あれの後を追っていけば良いってことか。
「バルト、僕が先行するから付いてきて」
『分かった。それにしてもとっつぁんは元気だな』
爺ちゃんにしてみればここはかつて所属していた場所だ。古巣に戻ってきて嬉しいのだろう。水を得た魚のように生き生きしている。
爺ちゃん達の後を付いていくと前方の隔壁が開いていき広いエリアに出た。そこにはさっきまで一緒に戦っていた<アマテラス>、<ツクヨミ>、<スサノオ>の三機の姿があった。
それぞれハンガーに収まり点検が行われている。どうやらこの場所がAF格納庫で間違いないらしい。ハッキリ言ってメチャクチャ広い。街のAF工場よりも立派な作りだ。さすがは軍の戦艦内にある格納庫だ。格が違う。
僕とバルトは整備班の指示であてがわれたハンガーに機体を収容すると乗降装置で下まで降りてきた。
こうして下からハンガーに並び立つアマツシリーズの機体を見上げるとその圧巻さに奮い立つ。
「懐かしい光景ですね」
声がした方に振り向くと僕と同じようにAFを見上げながら歩いてくるフィオナがいた。言動の通り懐かしそうな目で各機を見ている。
「そうか、フィオナは大罪戦役当時のアマツシリーズを知っているんだよね」
「はい。試作機である<イザナギ>と<イザナミ>の試験データを基にこれらの機体が開発された頃は現場の活気が凄かったんですよ。この新型なら戦争に勝てる。アマツシリーズは希望のAFだって皆が言っていました。そして実際にアマツシリーズを投入したアマツ部隊は連戦連勝を繰り返し圧倒的劣勢だった戦況をひっくり返したんです」
「皆の希望を背負ってフィオナ達は戦っていたんだね」
当時の僕も<タケミカヅチ>のパイロットとしてアマツ部隊の一員だった。その時もこうして彼女と一緒に自分たちの愛機を見上げていたのだろうか?
感慨に耽っているといつの間にかフィオナがすぐ近くまでやって来ていた。
「戦闘お疲れ様でした。初めての海上戦であそこまで戦えるなんて凄いです。しかも<クラーケン>を二回も撃破するなんて、あの頃でもそんな事できる人はあまりいませんでしたよ」
そんな風に褒められると照れてしまう。その一方で当時を知る彼女に訊いてみたい事があった。
「……当時の僕だったらもっと上手くやっていたのかな?」
ちょっとぶしつけな質問だったかもしれない。フィオナは少し考える仕草をすると答えてくれた。
「そうですねぇ。確かに当時剣鬼と呼ばれていたカナタでしたらもっと相手を圧倒していたと思います」
「そうか……正直に話してくれてありがとう。僕もまだまだだって事か……」
「でも、<タケミカヅチ>はリアクター不調のせいで最大スペックを発揮できない状態ですし、武装はビーム兵装が主体なので元々水中戦は苦手なんです。その状況であそこまで戦えること自体が凄いことなんですよ。カナタはもっと自分の実力を誇って良いと思います!」
少し鼻息を荒くしながら詰め寄るフィオナの気迫に押されてしまう。って言うか顔とか身体が近い。あともうちょっとで触れてしまいそうになる。
彼女は本当にこういうところが無防備というか天然というか、これから先が心配になってしまう。
「ありがとう、フィオナ。でも距離が近いからね」
「へっ!? ああ、ごめんなさい。私ったらつい……」
顔を真っ赤にして距離を取るフィオナ。くそっ、可愛いじゃないか。どうして数秒前の自分は距離が近いとか余計な事を言ったんだろう。
指摘しなければ今頃素敵なハプニングがあったかもしれないのに。
「あの……カナタ……?」
「なんだいフィオナ?」
何やらフィオナがジト目でこっちを見つめている。この反応はもしかして……僕またやっちゃいました?
「何だか鼻の下が伸びてますよ。またエッチな事を考えていたんですか?」
「……カンガエテナイヨ」
「本当ですかぁ?」
「ホントダヨ。エッチナコトカンガエテナイヨ」
やっぱりまた顔に出ていたらしい。フィオナもフィオナで一通りこっちを弄ったら満足したらしく笑顔に戻ったので一安心だ。
それにしてもすぐに顔に出る癖を直さないといけないな。これじゃ、おちおちエッチな妄想に耽ることも出来ないよ。
これからはエロい事を考えていたとしてもポーカーフェイスを保てるように練習しよう。




