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新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

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ヤサカニアンロック

「カナタよ……女性に対するコミュニケーションがなってないのう。どうやらわしの育て方が間違っていたようじゃ。今度綺麗なお姉ちゃんが沢山いる店に行って会話術を磨こうとするかの」


「フィオナとの会話聞いてたの!?」


「当たり前じゃ。既にこの格納庫内はわしのテリトリーと化しておる。ここで起きる不純異性交遊の気配は見逃さんよ」


 軍に合流してから遠くに感じていた爺ちゃんだけど、こういうところは以前と変わっていないので少し安心してしまう。

 

「不純異性交遊なんてしてないよ。これからアディショナルブースターの訓練をするから……」


 コックピットシートに座ってシミュレーターを立ち上げようとすると爺ちゃんもコックピットのシステムを立ち上げた。

 

「ちょ、何するのさ……ってこれは……?」


 モニターに<タケミカヅチ>の機体図が表示され、両肩、両前腕、両膝部が点滅しているのが見える。

 これが何を意味しているのか分からないでいると爺ちゃんが真面目モードで説明を始めた。


女子おなごとの楽しいコミュニケーション講座は今度にするとして今回はコレについて説明する。――この点滅している部位が何を表示しているのか分かるか?」


「いきなりそんな事言われても……ん、待てよ? 両前腕部のこれってもしかして……ヤサカニ?」


 確証がないものの答えると爺ちゃんは満足そうに笑う。


「その通りじゃ。ヤサカニはジェネレーターの余剰エネルギーと機体周辺のD(ディバイン)粒子を吸収蓄積するユニットじゃ。これは前腕部だけでなく両肩、両膝にも内蔵されている。つまり<タケミカヅチ>は六基のヤサカニを搭載しておる」


「六基も!?」


 前腕部のヤサカニに蓄積されたエネルギーを使ってナルカミやライキリのビームブレードを使用した事があったが、それだけでもかなりのエネルギー量があった。

 それがあと四つもあるなんて驚きだ。


「驚いているようじゃが大事なのはここからじゃ。これまでの戦闘では両前腕のヤサカニだけ使えるようになっていたが、ここの設備で全てのヤサカニのアンロックに成功した。これで<タケミカヅチ>は六基全てのヤサカニを使用できる状態になったのじゃ」


「それって凄いんじゃ……」


「その通り! これでようやくこの機体が本気を出せるようになったということじゃな。リアクターとジェネレーターの不調はもっと設備が整った場所でなければ修理できんが今はこれで十分じゃ。――で、本題はここからじゃ」


 今度は機体の武装が表示される。その中に見慣れないものがあった。


「何だこれ……『チドリ』?」


「そう、チドリは六基のヤサカニに蓄積された全エネルギーを高出力プラズマとして放出する武装じゃ。攻撃範囲は機体周囲半径二百メートルというところじゃな」


「そんなとんでもない武装が内蔵されているなんて……つくづく<タケミカヅチ>はとんでもない機体だね。――というかアマツシリーズの性能が異常だよ。明らかに量産型と桁違いのポテンシャルを持ってる」


 これほどの性能があるにも関わらず<タケミカヅチ>はリアクターの不調のせいで完全な状態ではない。

 これで完璧に直ったらどれほどの性能になるのか想像できない。


「アマツシリーズは<ノア11>が『地球』を脱出して新天地を目指して宇宙航行していた頃――つまり科学技術が最も発展していた当時の技術を復活させ、そこに『ネェルアース』で独自に発展させた技術を組み合わせて造り上げた高性能A(アサルト)F(フレーム)じゃ。量産型からすれば化け物と思える性能差があるんじゃよ。それ故、まるで魔術のような常識を超えた存在としてシャーマニックデバイスという異称が付けられたのじゃ」


 確かに不調な<タケミカヅチ>と<カグツチ>にしても現時点で圧倒的な性能がある。それに<スサノオ>と<ツクヨミ>もまだ底が見えない性能を誇っている。


「大罪戦役でアマツ部隊が全滅したっていう事は、こんな化け物みたいなAFを持ってしても『ノア3』のAFに苦戦を強いられるって事なんだよね。信じられないよ」


「『ノア3』とて我々と同等の技術レベルがある。それ故同レベルのAFを開発することも可能ということじゃ。重要なのは向こうには<クロノス>のバックアップがあるということじゃな。それで総合的な戦力に差が生じる。我々が勝利するには少数精鋭による一点突破しかないのじゃよ」


「その為のアマツシリーズなんだね」


 状況を知れば知るほど『ノア11』側の劣勢が分かり、当たり前だと思っていた平和がいつ崩れてもおかしくないものだと理解した。

 いや、既に平和が崩れる音が聞こえている。『ノア3』は既に水面下で戦争に勝つ為の下準備を進めていた。

 例のOS強化装置が取り付けられたAFが一斉に暴走したら、それらを鎮圧するのは難しい。

 その混乱に乗じて敵の高性能AFが攻め込んできたら手の打ちようがない。


 ――ここが正念場なんだ。


「チドリは全てのヤサカニのエネルギーを使う為、ジェネレーター出力が低い現状では使用後パワーダウンを引き起こす。あくまで最後の手段と考えるんじゃぞ」


「分かった。そういう状況にならないように今はアディショナルブースターによる高速戦闘が出来るようにならないとね。訓練を再開するよ」


「うむ、じゃがあまり無理はするんじゃないぞ」


「ありがとう、爺ちゃんも無理しちゃ駄目だよ」


 爺ちゃんは<ヤタガラス>に乗ってからずっと作業に追われている。次の目的地でもきっと戦闘になる。

 それまでに各機をベストな状態にするために最善を尽くしているんだ。

 だから僕もその時に後悔しないように少しでも強くなってみせる。


 深呼吸をしてコックピットハッチを閉じるとシミュレーターを立ち上げて訓練を再開した。


 ――そして時間は過ぎていき、<ヤタガラス>はついに『オキノミ』の空域に到着した。

 そこで僕たちの目に飛び込んできたのは幾つもの黒い煙を上げて炎上している港町の姿だった。


「――やはり先手を打たれていたか。『ノア3』側が証拠隠滅のために破壊工作を行っているようだな」


 デューイさんは苦々しい表情でモニターに映る街の映像を見ていた。苦労して手に入れた例のOS強化装置の流通ルートが潰されてしまったのだ、無理もない。

 しかし実際問題として『オキノミ』は現在攻撃を受けている。救援に向かわなければ全滅は必至だろう。


「――全機出撃だ。あそこで暴れている敵機を殲滅する」


「「「了解!」」」

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