ひたむき
「じゃあ、これから明日に向けて準備をしていこうか。」
「準備?」
「そう、わざわざ明日まで準備の時間作ったんだからさ。」
私は、そう言われても。何をすればいいのかまるで想像できなかった。
心の準備さえ出来ているのなら正直今から配信しても問題ないとさえ思っていた。
「じゃあ、これから何回も雑談の練習するとか。」
「え?」
照は驚いた様に私の方を覗き込む様に見た。
「それは今までに何階とやってるんじゃないの?」
責めるわけでもなく心から疑問に思っているかの様な声に思わず私は赤面した。
「じゃ、じゃあなにすればいいの?」
「そもそも、何で配信するか考えているの」
「え?YouTubeとか?」
「じゃあ、そのためのアカウント持ってるの?」
「アカウント?」
「そこから説明しないといけない?」
「ご、ごめん。」
考えなしの自分に恥ずかしさと腹立たしさが同時にやってくる。
「じゃあ、もう一つ聞くけどなんでYouTubeでアップしようと思うの」
「えっと……色々な人が見てくれてそうだし。」
「そう、だからその分ライバルも多いよ。」
「うん。」
「わかりやすく言うと1時間で何時間分の動画がYouTube上にアップされていると思う?」
「えっと、24時間ぐらい?」
「36000時間、1500日分、4年以上だね。」
「4年分!!」
大きめに言った数のさらに上をいかれ混乱した。
「世界中の話だから、全員が全員ライバルでもないけどそれでもの量でしょ。」
「そんなに……」
「そんな中を勝ち抜くにはどうすればいいと思う?」
「えっと……」
「時間は待ってくれないよ。」
頭を捻っても答えが出ない様な質問に私は感情のままに答えた。
「…が、頑張る!」
「頑張る?」
照はその質問に目を丸くしてこちらを見た。
「頑張る!!!」
「ははははははははは」
照は部屋中響き渡る様な声で爆笑した。
「そ、そうだよね。頑張るしかないよね。
ははははは。
それしかない当然の事だよね。
ははははは。」
ひとしきり笑い転げると、照は口を押さえながら向き直った。
「ごめん。馬鹿にしたわけじゃないんだよ。なんとなくうれしくなってさ。」
「嬉しい?」
「そう。その直向きさが飛鳥のいいところだったよなって。みゆもそうじゃないの?」
「そうかもね。」
みゆの方を振り返ると嬉しくてたまらないように口元が緩んでいた。
私の中では私がとても直向きとは思えないが二人に褒められで気が付かないうちに微笑んでいた。




