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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第四章
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第七五話:「無ければ無いで構わんが」

 明けて翌日。

 危惧された朝チュンは何とか避けられ、無事起床した。

 ……避けられたよね? 何もされてないよね?

 僕と同じか下手をすればそれ以上に朝に弱い王女は未だに寝てるとして、マスターの姿が見当たらない。

 部屋の隅で、座禅を組んで瞑想的な事をしていた黒装束の彼女なら何か知っているかと思い尋ねる。


「マスターってどこにいるか分かります?」

「少し出て来ると言っていました。恐らく散歩にでも行ったものと」

「そうですか。あとついでにもう一つ聞いていいですか?」

「私に答えられる事でしたら何なりと」

「昨夜僕に何もしてないですよね?」

「……勿論です」


 待て。

 その間はどういう意味の間だ。


「……ちなみにマスターは———」

「我が主への忠誠に誓って、何もさせていません」


 食い気味で来たよ。

 しかも「させてない」って言ったからね?

 それってつまり、何かしらはしかけてたって事だから。

 え、何、僕は彼女達と同じ空間でおちおち休んでもいられないの?

 ……考えたら負けだ、うん。


 と、若干現実逃避気味に思考を巡らせていると、宿の外からバキバキと木の倒れる音がした。


「……敵襲、でしょうか?」

「にしては随分呑気な気もしますけどね。一応様子見て来ましょうか」

「その役目ならば私が」

「あー、いいですいいです。多分危険は無いでしょうし」


 立ち上がろうとする黒装束の彼女を制止して、代わりに部屋を出る。

 そのまま宿の入り口を通り裏手に回った所で、倒木を起こした正体を視界に捉えた。


「……何してるんですか?」

「ん? 嗚呼、誰かと思えばお主か」


 悪びれもせずにそう言ってのけたのは、誰であろうマスターその人であった。


「何、少し身体が鈍って居った物でな。調整がてら此所等一帯の掃除でもと思った迄じゃよ」

「掃除どころかどう見ても環境破壊なんですがそれは……」


 辺りを見渡すと、あちこちに倒された大木が転がっていた。

 ストレス解消にしてもやり過ぎじゃないですかねぇ……。

 そもそもストレスが溜まるような生き方をしてる風には見えないけれど。


「呵々、お主には然う見えるか」

「……?」

「分からぬのなら其れでも良い」


 意味深な笑みを作ると、マスターはそのまま木を放置して宿へと戻って行った。

 いやほったらかしですか。

 せめて一ヶ所に集めておこうと近付いた所で、はたと気づく。

 倒された木ではなく、残った幹の方。

 その切り株の三分の一ほどが腐っているのだ。

 まさかと思い他のもいくつか見回ってみると、同じように腐ったり虫が食っていたりしていた。

 放っておけば、これらは遠からず倒壊していただろう。

 それも周りの木々や、下手をすると宿すら巻き込む形でだ。

 それを事前に察知し未然に防ぐ、その慧眼ぶりに僕は思わず舌を巻く。

 同時に、僕の彼女に対する印象にも若干の修正が施される。

 誰に頼まれた訳でもないだろうに自ら見えない部分に尽力するあたり、少なくとも似たような仕事に従事する———例えばギルドの職員のような裏方の人達からは好かれているのだろう。

 考えてみれば自然な事だ。

 あんな風に傍若無人に振る舞うだけなら、人を集め纏められる訳が無い。

 豪胆に見えてその実細やかな気遣いが出来るからこそ、ギルドマスターという地位に就けているのだ。


 ……まぁ個人的には、徒手空拳で大木を切り倒した事の方が驚きに値するけど。

 ついでにもう一つ付け足すなら、やはり倒すだけ倒して放置するのはどうかと思う。

 ———しょうがない。朝ご飯前に、僕も一働きしておくか。



===============



 片付けを済ませ、宿に戻って朝食をいただく。

 それを終えると早々に荷物をまとめ、宿を後にした。


「それで、どうするのよ?」

「何がですか?」


 道を歩いていると、不意に王女が口を開いた。


「一〇〇歩譲って一二魔天将を狙うって方針は理解したわ。危なくなったら私は逃げるけど」

「逃げちゃうんですか」

「逃げるわよ、一目散に。……って論点はそこじゃなくて」

「?」

「だから、一二魔天将の内、誰を狙うかって話よ。まさか闇雲に探し回って見つけた相手と、なんて考えじゃないわよね? それじゃ魔族領内をかけずり回るのと大差ないわよ」

「案ずるで無い。標的は概ね決まって居る」


 王女の疑問に、先を進むマスターが答える。


八位エイト一〇位(テン)。狙うなら其奴等じゃろう」

「理由は?」

「儂等に先立って出立した虚毒士と偉大魔導師。彼奴等を殺った其の二人ならば、未だ領境無いしは近辺に潜んで居る確率、引いては遭遇する確率も高かろう」

「……なるほどね、分かったわ」

「いいんですか?」

「えぇ。何なら想像以上に内容が具体的で驚いてる所よ」

「他に聞きたい事は有るかの。無ければ無いで構わんが」

「あ、じゃあ僕から一個いいですか?」


 そう発言すると、自然注目は僕に集まる。

 王女なんかは「また変な事言い出す気か」みたいな目で見てくるし。

 失礼な。


「昨日から聞きたかったんですけどタイミング逃しちゃって」

「何じゃ? 躊躇わずとも其の場で尋ねれば良かった物を」

「まぁそうなんですけどね……。そもそも一二魔天将って何ですか?」

「……」


 あ、黙った。

 うん? でも頭抱えてる王女はともかくとして、残りの二人には余り変化が無いような……。

 もしかしてこれはそんなに重要って程の話題でもないのかな?

 まぁ黒装束の彼女の方は、僕関連の事以外じゃそんなに感情を出したりはしてないんだけども。


「……ふむ、冒険者を志す者なら知って当然と思って居ったが、最早然う云う世代も存在するのかの」

「な訳ないでしょ。どっかの誰かさんが無知過ぎるだけよ」


 ですよねー。

 どうやら僕の勘違いだったようです。


「ハァ……。一から説明してあげるからよく聞きなさいよ」

はい先生(サー・イエッサー)

「その呼び方何かムカつくわね……。まず、私達人族と敵対し争っている魔族。その頂点が魔王と呼ばれる存在って事は知ってるわよね?」

「そりゃもう、それを倒すのが最終目標ですし」

「……その魔王に付き従う魔族の中でも、特に能力の優れている一二体を魔王自ら選別し直轄する。その個体を総称して『一二魔天将』。……と、向こうが勝手に名乗ってるのよ」

「へぇー、じゃあ四天王みたいな感じですかね」

「してん……何って?」

「こっちの話です。にしてもそんな強い人達が一二人もいるなんて、勝てる気が全くしませんね」

「真っ先に魔王を倒すって息巻いてたくせに何を今更。それに、必ずしも全員が強いって訳じゃないわ」

「? 強い順に選ばれるんじゃなかったんですか?」

「能力が優れているってのは、別に戦いに限った話じゃない。他の要素で優れているから選出されるって事も珍しくないわよ」

「そうなんですか? じゃあ案外———」

「まぁ大半は化物みたいに強い奴ばっかりだけど」


 だろうね知ってた。

 世の中そんな上手い話なんてそうそう転がってないから。


「ついでにもう一つ間違いを正しておくと、序列が若いほど強いって訳でもないわよ。戦闘員非戦闘員の区別もあるし、相性の問題だって存在するんだから」

「え? あぁでも、確かにそうですよね。まさか直接戦ってどっちが強いかを比べる訳にもいかないでしょうし、下手したら片方……いえ、一気に二人も構成員が減るって可能性もありますから」


 そう考えると、漫画とかによく出て来るこの手の組織はどうやって順番を決めてるんだろう。

 まぁ今はどうでもいい事だけど。


「ん? じゃあそうすると、序列はどうやって決めてるんですか?」

「その代の魔王の勝手よ。決まった順に入れられてく事もあれば、当代の魔王が適当に当てはめてく事もある。アナタの言う『まさか』ってのも、皆無って訳じゃないらしいわよ」

「マジですか……」


 激しくやる気が失せた。

 そんなの聞いてないですよ神様、魔王だけ倒せばいいんじゃないんですか?

 まぁ極論それでもいいっちゃいいんだろうけど、最低限居場所が分からなきゃどうにもならないし……。


「コスパを考えたら、最低一人は相手にするのが一番いいんですよねぇ……」

「その一人が最初で最後の相手であってほしいけどね……」

「そうだな、全くその通りだぜ。で、誰を相手にするって?」


 唐突に、第三者の声が割って入った。

 しかも、真後ろから。


「ッ!!」


 反射的に飛び退りながら、振り返って声の主の姿を捉える。

 逆さに映った景色の中には、頬に大きな傷のある青年が立っていた。

諸事情によりネットが丸々一ヶ月使用できずこのような事態となりました。

ついこの間一ヶ月空けてしまったばかりだというのに……orz

いやホントマジですいません。

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