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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第三章
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第五八話:「力尽くで、通してもらいます」

「一応先に聞いておきたいんですけど」

「何だよ?」

「このひとは大人しく渡しますから、この場は見逃すって選択肢はないですかね」

「! おいお前、俺を見捨てる気か!!」


 何か騒いでいるが聞こえない振りをする。


「なくはない。が、却下だ」

「何故?」

「攻略ルートに入れないから」


 実に明解で分かりやすく、最低な答えだった。


「今ここでお前を見逃せば、良くて次へのフラグが建つだけだ。そんな回りくどい事はしたくないんだよ! 俺は今すぐお前を手中にしたいんだ! 美少女と遭遇、即攻略! これ常識!!」


 どこの国の常識だ。

 ……あぁうん、我らが故郷日本でしたね。


「ハァ……」


 僕は大きくため息を吐き、


「分かりましたよ。じゃあ……」

「ん、何だ? 降参か? ありっちゃありだが俺的にはもうちょっと———」


 一振りの、刀を取り出す。


「———力尽くで、通してもらいます」

「———いいぜ、相手してやんよ」


 刹那、その場から彼の姿が掻き消えた。



===============



 気付いた時には、拳がすぐ目の前に迫っていた。


「……ッ!」


 全力で首を横に振る。

 拳の先が僅かに頬をかすめ、鋭い痛みが走った。

 が、気にしている余裕はない。

 がら空きの胴に、刀の柄を渾身の力で叩き込む。

 直撃を受けた彼の身体は吹っ飛び、城壁に派手な音を立てて突っ込んだ。

 壁面に一斉に亀裂が走り、その一部が瓦礫と化して崩れ落ちる。

 砂煙が舞っているため様子は分からないが、恐らくはまだ倒れていない。

 呼吸を整え、彼がいるであろう場所を注視する。


「お、おい。戦うのは良いが、俺の城を壊してくれるなよ」


 ……この期に及んで、まだ『俺の』か。

 おめでたいな、と思いながらも、別の事を口にする。


「それよりも自分の心配をしたらどうですか。巻き添え喰らって怪我しても知りませんよ」

「……」


 無言で出て来た窓に引き返す。

 その程度じゃ大して変わらないと思うが、本人がいいなら良いか。僕がそこまで世話する義理もないし。


 と、それを待っていたかのように砂煙が揺らめく。

 そしてその中から、ゆったりとした動きで彼は現れた。


「痛ってーなぁ。つーかマジかよお前、今の躱すとかどんだけ化物だよ」


 さして効いていなさそうな口ぶりで言う。

 事実、服こそ汚れ所々破れているものの、目立った傷を負っている様子はない。

 そう、例えば。

 ()()()()()()()()()()()()()


「……こっちの台詞ですよ。結構本気でやったってのに無傷とか、勇者ってのはそんな化物揃いなんですか」


 確かにこの程度で彼を倒せるなどとは思っていなかった。

 彼は勇者であり、だからこそ僕も加減を考慮せずに攻撃できた。

 けれどそれなら骨の一、二本くらいは折れていてもおかしくはない、というか折れているはずなのだ。


「知らねえよ。つーかそもそも、俺の他に勇者なんていんのか? いたら俺の存在意義無くなっちまうってのに」

「さぁ、どうでしょうね」

「……なんか知ってそうな言い方だな、お前。まぁ……、どうでもいいか」


 言って、再び彼は動く。

 が、今度は見切れる。

 またも一切の躊躇無く顔面を狙って来た左手を、峰で軌道を逸らしながら避け前に出る。

 すれ違い様に返す刀で両脚を斬り裂くと、更に数歩進んで距離を取る。

 例によって例のごとく胃の底から猛烈な勢いで這い上がって来る吐き気を、強引に抑え付け意識を保つ。


「グ……ッ!」


 一瞬呻き声が聞こえる。


「両脚の腱を斬り落としました。死にはしないでしょうが当分戦闘は———」


 言いかけた所でゾワリと、強烈な悪寒が全身を駆け巡った。

 反射的に刃をかざして頭を守る。

 ほぼ同時に、上から巨大な岩でも落ちて来たかのような衝撃が襲った。

 伝わった衝撃をダイレクトに受け止めた腕が悲鳴を上げる。


 このままじゃ、あと数秒も保たない……!


 瞬間でそう判断した僕は、全身の力を振り絞って衝撃を弾くと、無理な体勢も構わず大きく後ろへ跳んだ。


「今のも止めるのかよ。ホントにお前何者だ?」

「……通りすがりの勇者Bですよ」

「……マトモに答える気は無えってか」


 苛立ち混じりに呟く彼の身体のどこにも、一筋の刀傷や一滴の血すら付いてはいなかった。

 それを確認して、ようやく僕は彼の能力の正体に思い当たる。


「不死身……、ですか」

「何だ、さすがに気付くか」


 一転、狂気的な笑みを浮かべて彼は続けた。


「その通り。これが俺の能力、『不死』だ。お前がどんな攻撃をしようが、俺には効かねえんだよ!」


 己の勝利を確信した口調で、ヘラヘラと笑いながら近付いてくる。

 彼も、『()』か……。

 まぁ、個人の主義に一々口を出す気はない。


「お前に勝ちの目なんか最初から無かったんだよ。ここまでやりゃあ充分改心フラグは建っただろ。まだ無駄な抵抗を試みるか、負けを認めて俺に従うか、好きな方を選びな」

「……ハァ〜……」


 それを受けて僕は、先程よりも盛大に、心底気怠そうに溜息を吐いた。

 構えを解き腕をダラリと力なく下げて、覇気の失せた目で呟く。


「……古今東西ありとあらゆる漫画やアニメに見られるいわゆる『不死身』というのには、大きく分けて三つのタイプが存在します」

「……?」


 指を三本立て、その内の一つを折りながら続ける。


「一つ。致命傷や即死級のダメージを負っても、即座に回復するもの。これが一番メジャーなタイプで、大半の不死キャラはこれに当てはまるでしょう」


 二本目を折る。


「二つ。たとえ死んだとしても、蘇るもの。これは漫画やアニメで考えるよりは、RPG系に代表されるようなゲームの類を思い浮かべた方が分かりやすいですかね」


 最後の一本を折る。


「三つ。『死』という概念そのものを、剥奪されたもの」


 誰かが、息を呑む音が聞こえた。

 それは果たして、彼か、僕か。


「殴られても、蹴られても、斬られても、撃たれても、焼かれても、沈められても、骨を折られても、血を抜かれても、喉を噛み切られても、四肢を引き裂かれても、頭蓋を砕かれても、心臓を貫かれても、———何があっても、絶対に死ぬ事は無い」


 否。

 死ぬ事が『無い』のではなく。

 死ぬ事が『出来ない』のだ。

 本来生物として逃れ得ないはずの運命(ルール)を、捩じ曲げた者。


「……ッ、何が言いてえんだよ」


 顔を歪ませ僕を睨む。

 その眼光に込められたのは、怒りと嫌悪。そして僅かな恐怖。


「分けたからって、それで何が変わるってんだよ! お前が俺を倒せないって事実には、欠片も影響を与えねえだろうが!!」

「観察できた特性からして、あなたのそれは多分一つ目のタイプでしょう。怪我が瞬間的に治るなら、どんなリスクもあってないようなもの。恐らく無意識下でやっているのでしょうが、肉体を省みない無茶を行え、結果あれだけのパフォーマンスが可能になった」


 淡々と語る。

 それが彼の神経を逆撫でしている事など、充分に理解した上で。


「さっきからゴチャゴチャうるせえんだよ! 戦うのか諦めんのか、さっさと選びやがれ!」

「それは勿論、戦いますよ。戦って、あなたを倒して、先に進みます」

「……調子乗ってんじゃ、ねえぞコラァ!!!!!!」


 三度、彼は目にも留まらぬ速さで僕に迫る。

 全身の筋肉を限界まで圧縮し、一気に解き放つ。

 繊維が断裂し、その度に再生する。一瞬のうちに、何度もそれが繰り返される。

 彼の表情に苦痛の色は無い。

 そこにあるのは、目の前の気に入らない相手を一刻も早く消し去りたいと思う、その一点のみ。

 振り絞られた左脚が鋼鉄の強度を持って鞭の如くしなりながら、触れたものを根こそぎ破壊する。


 ———けれどもう、それは見慣れた。


 直後。

 大地が悲鳴を上げて、爆発した。



===============



「ハァッ……、ハァッ……、ハァッ……」


 吐く息が荒い。

 汗が滴り落ちる。

 それは疲労か、あるいは———。


「……チッ、胸糞悪りィ」


 誰にともなく吐き棄てる。

 己が跡形も無く壊した場を一瞥すると、不快そうな顔で立ち去ろうとする。

 その背に向かって、という訳ではないが、()言葉を発する。


「この世に不死身キャラは数いれど」

「———ッ!」


 彼の顔が驚愕に染まる。

 信じられないものを見たかのように、その瞳は動かない。

 現実を、受け入れない。


「彼らが倒されなかったという結末はありません」


 実際、あそこまでの速度に乗った肉体は、鋭利な刃物と何ら変わりない切れ味を持つ。

 同じ物質で構成されている身体を、抵抗を感じる事無く切り裂くくらいには。


「では何故彼らは倒されたのか。それは、彼らにも弱点は存在するからです」


 現にそれをまともに喰らった僕の服は、前半分が斜めにザックリと断裁されている。

 けれどその下の、僕の柔らかい肌に傷は無い。

 正確にはうっすらと残っているが、時が経てば自然に消えるだろう。

 消えなかったらまぁ、その時は神様にでも治してもらおう。


「例えば、外部からの負傷には強くても、内部で発生するダメージには弱い。こんな風に」


 ガツッ、と。

 刀身の入っていない鞘の先で、無防備な彼の顎を打ちつける。


「脳震盪とか」


 フラリと体勢を崩して倒れかけた彼の腕を無造作に掴みその付け根を、関節部分を蹴りとばす。


「脱臼とか」

「あ……ッ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!」


 痛みにのたうち回る彼を、僕は冷めた眼で見つめる。


「再生ってのは極論、自然治癒の延長線上にあるものですからね。自然治癒しないものには効果が無いのも当然です」


 それよりも、あとで服を新調しないとな。

 ボロボロなのを着るのは嫌だし、何より胸元が見えるのは恥ずかしい。

 だから僕に露出の気は無いってのに。


「そして、不死身キャラへの攻略法は大きく分けて二つ。細胞一つ残さず消し飛ばすか、心をへし折るか。例外が無い訳じゃないですけどね」


 ザクリと、彼の掌を貫く。


「あなたがもう少し経験を積んでいて、自分の能力を意識的に使いこなせるようになっていれば、もしかしたら違う結果になっていたかもしれませんね」


 更に新たに三本の剣を取り出して、ザクリ、ザクリ、ザクリと。

 昆虫の標本のように地面に磔にして身動きを封じる。


「そうそう、不死身キャラの弱点についてもう一つだけ教えておきます。これは全てに当てはまるという訳ではありませんが……」


 彼は陸に揚げられた魚のように口をパクパクと動かしているが、そこから声は出てこない。

 それが何だか可笑しくて、つい笑みがこぼれた。

 そして、僕は言う。


「彼らって大抵、メンタルが凄く脆いんですよね」


 一閃。

 振り下ろされた大剣は、彼を真っ二つに叩き斬った。


 断末魔は、聞こえなかった。

ライバルだと思った?残念、かませでした〜wwwwwww

だから男をハーレムに入れる気は(ry


……はいすいません調子乗りました。

しかも最長文字数ぶっちぎりのトップですね、本当すいません。



本編中の『不死身』について、もう少しだけ補足を。

一つ目はDBのセルや魔人ブウなどを始めとして、ハガレンのホムンクルスや化物語の完全体キスショットや春休み時の阿良々木暦など、挙げればキリが無いのでこの辺で。個人的にグラトニーの攻略法は凄いと思いました(小並感)

二つ目は本編でも言われている通り、漫画よりはゲームを思い浮かべた方が出て来やすいかと。強いて挙げるならSAOのアルヴヘイム編以降やログホラ、めだかボックスの球磨川禊、厳密には微妙な所ですがReゼロなんかもこの分類かと。

三つ目は本当に例が少ないのですが、NARUTOの飛段や『神様のいない日曜日』の死者などが、ここの分類に当てはまります。

それぞれを一言で表すなら、『死なない』、『生き返る』、『生き続ける(死に続ける)』と言った所でしょうか。


なお、本編及びこの後書きにて書かれている事は全て作者の独自解釈ですので、矛盾している所も多々あるかと思われます。気になる箇所があればぜひ、感想をお寄せ下さい。


……ここまで書いておいてなんですけど、後書きは二次創作の範囲内なんでしょうか。もしその場合は作者にご一報入れていただくか、胸の内にしまっておいていただけるとありがたいです。



……後書きも余裕で最長文字数更新したな。

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