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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第三章
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第閑話:「最高に心地良い時間だった」

 つい先程の事。

 俺の屋敷(正確には俺のではないが、いずれはそうなると確信している)に、新しく俺の教育係が来た。

 いい加減止めればと思うのに、よく飽きないジジイだ。

 まぁ俺にはどうでもいい事だけどな。

 どうせ報酬につられてのこのこやって来た頭の弱い連中だろうと高をくくっていたら、意外や意外、綺麗な女の子だった。

 その程度で狼狽えるような俺でもないけれど。



 元来俺は、人間という生き物があまり好きではない。

 どころかむしろ大嫌いだ。生理的に受け付けない。

 あんなに醜く愚かで哀れな生物など、そうそういないだろう。

 かくいう俺もそんな生物の一人だが、それはこの際置いておこう。


 話は変わるが、俺は俺自身がこんな性格になった事について、反省も後悔もしていない。

 第一これは、あのジジイがそうなるように俺に教育を施したからだ。

 経済学。心理学。帝王学。

 交渉術。護身術。読心術。

 汚い所も嫌という程見て来た。

 こんな人生を送って心が歪まない奴なんていない。

 そんな奴は、最初から心が壊れてる。

 ともかくそんな訳で、俺は人が嫌いだ。


 話を戻そう。

 まぁそんなこんなで色々と紆余曲折あってこんな風になった訳だが、今問題にしているのは俺の人格ではない。新しく入って来たアイツだ。

 あの女は、俺とよく似ている。

 歳の割に人生経験が豊富そうだったり、何だかんだで人との関わり合いを避けていたり。

 理由は全然違う。どころかむしろ全くの逆なんだろうが、そんな事はどちらでも構わない。

 俺が———この俺がだ———珍しく他人に興味を持った。

 明日には気が変わっているかもしれないけれど。

 吹けば消えるような程度なのかもしれないけれど。

 それでも俺は、アイツを観察してみたいと思った。



===============



 次の日も、アイツは懲りずにやって来た。

 懲りずにと言うか、全く堪えてる様子がなかったが。

 まぁそれならそれで一向に構わない。

 一体いつまであの鉄面皮が保つか見物だからな。

 どちらが先に折れるか、勝負といこうじゃないか。

 ……何か目的が変わっている気がするが気にしない事にしよう。世の中割り切りというのは大事だ、うん。


 とは言え、向こうもこちらも得に何かするという事はしない。

 俺が歴史書を読んだり兵法を勉強している間、アイツがずっと俺の方を見ているだけ。

 時たま質問を投げかけてくるが、全部無視か生返事で返す。故に何を聞かれたかなんざ、ろくに覚えていない。

 俺はそれでいいと思ってるし、アイツも受け入れているようだから問題は無い。

 ただ、長時間同じ空間にいて何もしないというのは、さすがに俺でも気まずさを感じてしまう。

 こういう点が、多人数よりも一人の方が気楽な所だ。


「なぁお前」


 仕方無いから俺から声をかけてやった。

 向こうは少し意外そうな顔をして、


「僕ですか?」


 と聞き返してきた。

 他に誰がいるんだよ。この場に話せる奴なんて俺とお前しかいねぇだろうが。

 それとも何か? 俺の眼に映らない新種の不可視系生物でも存在してんのか?

 ……おっと口が滑った。言ってないけどな。


「何でお前、俺の相手なんかしてんだよ?」


 こんな聞き方をしておいてなんだが、自分で自分に驚いた。

 まさか俺の口から、自分を卑下するような言葉が出てくるとは。


 確かに俺は、自分が最低の人間だという事は自覚している。

 けどそれは自分の中で完結してる事であって、他人に見せるような事はしない。

 弱みを見せれば、敵につけ込まれる元になるからだ。口が滑ったどころじゃ済まなくなる事もある。


「そうですね、強いて言うなら報酬が良いからだと思いますよ」

「ハッ、報酬ねえ」


 思わず笑ってしまった。

 勿論この笑いは、嘲りや蔑みなんかじゃない。

 と言うか、そんな事をしても意味は無い。

 基本、俺の中の他人というのは、落ちる所まで落ちている。

 上がる事はあっても(滅多に無いが)下がる事は無いと言っていい。

 言うまでもなく、俺はアイツを欲望に忠実だなどと罵ったりはしない。人として当然の行いだ。

 むしろ、正直な分好感が持てる。

 報酬が多いなんてのは当たり前の事だ。

 俺みたいな厄介者の相手を押し付けられるならば、あのジジイは喜んでいくらでも差し出すだろう。

 実際、この依頼の本当の目的はそこにあったりする。

 本人から直接聞いた訳じゃないが、それぐらいの事は容易に想像できるというものだ。

 ただ、当のアイツがどこまで見抜いているかは不明だ。

 なので、挑発も含めて次の言葉を紡ぐ。


「お前の前にも、報酬につられてのこのこやって来たバカどもは大勢いたよ。そしてその全員が、三回とこの館の土を踏む事はなかった。お前はいつまで保つだろうな?」


 なるべく憎たらしく、悪感情をより強く感じ取れるように言ったつもりだ。

 それでもアイツはポーカーフェイスを崩す事無く、そして俺の予想の斜め上を行く回答をしてみせた。


「残念ですが、僕の一存で辞めるどうこうは出来ませんよ」

「は?」

「だって、人から頼まれた以上、最後までやりきらなきゃみっともないでしょう」


 この時ほど、アイツを理解不能だと思った時は無い。

 一体どんな思考回路を辿れば、そんな奇想天外な答えに行き着くのだろう。

 俺はアイツという人間が分からなくなった。見失ったと言っても良い。

 そしてそれ以上に、最高の快感を味わった。アイツという人間を知り尽くしてみたいと思った。

 多分、俺は一生をかけてもアイツの考えている事は理解し得ないだろう。それはこの瞬間に悟った。

 それでも出来る限りアイツの心理に———真理に辿り着いてみたいと思ったのだ。



 その後のやり取りはよく覚えていない。

 気分が高まりすぎて、何を話していたのかすら曖昧だ。

 だけど、最高に心地良い時間だったという事は覚えている。

 アイツが帰った後も、しばらくはその余韻に酔いしれていた。

 一体何年ぶりだっただろう、翌日が待ち遠しいと感じたのは。


 しかしアイツは、次の日館を訪ねて来る事は無かった。

聡明な読者の方々には言わずとも分かるかと思われますが、一応ここで断言させていただきます。

男をハーレムに組み込むつもりはありません!←


にしても、帝王学ってどんな事を習ってるんでしょうね。

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