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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第二章
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第三二話:「答えなくて良いんですか?」

 マスターが姿を消してから約三〇分後。

 そろそろ退屈にも拍車がかかってきた所で、ギルドの扉が開く音が聞こえた。

 その音に反応して振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。


「どちら様ですか?」


 女性は所謂メイド服(ミニじゃないよ、ロングだよ)を着ており、見た目はどこからどうみても侍女然としている。

 感情表現の乏しそうな表情と口調で、彼女は静かに言った。


「王宮の使いの者です。お迎えに上がりました」



===============



 お互いの挨拶もそこそこに、僕らは王宮へと向かっていた。


「彼女を見た事はありますか?」


 僕は小声で、隣を行く王女に声をかける。


「無いわ。でも、使用人なんて大抵皆同じ格好をしてるし、どこかで見かけた事はあるかもね」

「いいえ、ございません」


 前を行く彼女からの、予期せぬ返答が来る。

 ギリギリ聞こえるか聞こえないかぐらいの声量だったはずだけど。

 まぁ、この人も王宮に勤めてるんだから、それなりに腕は立つのかな。特に興味は無いけれど。

 そんな僕の心情を知ってか知らずか、彼女は言葉を続ける。


「私は一介の使用人故、貴女方のような身分の方々と関わる事は殆どありません。それでなくとも、私の担当は第一王女様ですので」


 彼女の口から『第一王女』という単語が出た瞬間、王女の顔色が変わったような気がした。


「……ねぇ、お姉さまの様子はどうなの? 大丈夫なの?」

「以前とお変わりありません」


 言葉だけ見れば好意的に取れなくもないのだが、彼女の平淡な口調と、それに混じるほんの僅かな寂しさのような物を感じ取った僕には、どうやっても良い意味には取る事が出来なかった。

 案の定、王女の彼女に対する反応は、芳しい物ではなかった。


「……そう」


 小さく呟かれたその言葉は、既に何かを諦めたようなその言葉は、風に紛れて消えて行った。


「到着されました」


 ピタリと足を止め、彼女は言う。

 それと同時に、巨大な扉がゆっくりと開き出した。

 扉が開放され、動きが完全に止まった所で彼女は再び歩き出す。

 僕らもそれに続いて行く。


 王宮の中は相変わらず、豪華絢爛を絵に描いたような仰々しさだった。

 この前の事で少しは懲りて自重するかと思ったが、やはり人間、本質まではそうそう変わる物では無いらしい。

 ま、どうだっていいけどね。

 それよりも、僕にとっては大変不快な出来事がある。

 それは何かと言うと———、出会う人出会う人が、ことごとく僕に視線を向けてくるのだ。

 悪意だったり好奇心だったり奇異の眼だったり、こもっている感情は様々だけど、皆一様に僕を捉えてくるのだから、気になってしょうがない。目立つのは好きじゃないんだってば。

 え? 今までの自分の行動を振り返ってから言えって?


「あぁ、そういえば……」


 彼女が足を止め、僕を振り返る。


「国王に挨拶はされていきますか? よろしければご案内いたしますが」


 それを僕に聞くか。

 僕がしでかした事ぐらい、彼女の耳にも届いているはずだけど。

 ……あぁ、なるほど。そうかそうか、考えてみれば当たり前の事だ。

 彼女は僕に聞いたのではなく、僕の隣にいる王女に聞いたのだ。

 なら僕が答える必要は無いな。


 ……。

 ………。

 …………。

 ……何で誰も喋らない。


「答えなくて良いんですか?」

「何で私が?」


 小声で尋ねる僕に、王女は不思議そうな顔で聞き返す。


「今聞かれたのはアナタでしょ?」


 え、やっぱり僕なの?

 黙ったままの彼女を恐る恐る見ると、バッチリ僕と目線が合った。


 うん、僕ですね、はい。


「いえ、遠慮しておきます」

「そうですか」


 気分を害した様子も無く、彼女は歩みを再開した。

敬語率、一人称の『私』率が上昇して来ましたが、まぁ何とかなるでしょう。

ちなみに『私』の読み方は『わたし』でも『わたくし』でもどちらでもOKです。

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