第三〇話:「大変不本意ながら、ね」
「さて、と。これからどうしますか?」
彼を見送った後、僕は二人に問いかけた。
「私は何でもいいわよ。どうせする事がある訳でもないし」
「私としては、鍛錬に身をやつした方がよろしいかと。近々、戦争が起こるという噂も流れていますので」
「へぇ、そうなんですか」
初耳だった。
やはり、国のトップはそういう事情に詳しいのだろうか。
「それは私も聞いた事あるわ。一部の大臣達が慌ててたから、何事かと思ったのよ」
「なるほど……。まぁ理由如何はともかくとして、修行は大事ですからね。どこかそういう事が出来る場所って知りませんか?」
そう聞くと、二人は難しい顔をする。
「王宮になら、そのような場所は腐る程あるのでしょうが……」
「まともに王宮に入れそうな人員のいなさったら無いわ」
「あぁ、何かすみません……」
何故か謝ってしまう僕。
八割ぐらい僕が悪いのだろうけど。
「となると、頼れる伝手は一つですか……」
「何か心当たりがあるの?」
「えぇまぁ。大変不本意ながら、ね」
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「事情は分かった。後は儂に任せておけ」
二つ返事で引き受けてくれたのは、誰であろう、ギルドマスターだった。
「にしても、お主が儂を頼ってくるとはのう。長生きはしてみる物じゃわい」
「最終非常手段でしたけどね」
いつものマスターの私室で、僕と彼女は向かい合って話している。
「良い良い。どのような形で在れ、儂はお主の力に成れれば嬉しいのじゃよ」
「では失礼します」
「こ、此所は少しは感動する所じゃぞ?」
「知りませんよ」
「年寄りは労る物じゃと言うとろうに……」
「ならそれなりの態度を見せて下さいよ。いい歳こいて僕を狙わないで下さい」
「相変わらずじゃのう。じゃが其の連れない所も又良い……」
「何ですか真性の変態ですか気持ち悪いです」
「儂は虐められて悦ぶ趣味は持ち合わせて居らぬぞ。お主だからこそ良いので有ってじゃな———」
「では僕はこれで。修行場所の件、よろしくお願いしますよ」
「……まぁ良い。明日、また儂を訪ねよ」
至極残念そうな顔をしている彼女を横目に、僕は部屋を出て行った。
ちなみに、滞在時間は数分足らず。
戻ってくると、二人が心配そうな顔で僕を出迎える。
「ど、どうでした? 我が主」
「いざとなれば、私があの人を脅……説得するから」
「そんな過激に走るくらいなら普通に依頼でも受けましょうよ。一応大丈夫だとは思いますよ」
別の意味で心配だけど。主に僕の身とか貞操とか。
あの人なら、代償に何を要求するか分かった物じゃないし。
まぁ、最悪逃げるか。
「だから、武器を構えるのは止めて下さいね?」
「「何の事でしょう?」」
……息が合ってるから良いか。
「まぁ使えるのは少なくとも明日からなので、今日は暇になる訳ですけど……、どうします?」
「そうね。依頼は朝受けちゃったし、また受けるのもアレよね」
「となると、休むか遊ぶかの二択になる訳ですが」
え、選択肢それしか無いの?
そんなにルーズなの? この世界。
もうちょっと何かあるでしょう。
「そうね。それに、遊ぶにしても半日しかない訳だから、そう大した事は出来ないし……」
「半日で、しかもこの人数で出来る事となると、相当限られた物に……」
何? ツッコまないの?
と言うか遊ぶ事はもう確定なの?
そして何故あなた達はそんなに一生懸命頭を捻ってるの?
これは僕がおかしいの?
「そういえば、アナタは何がしたいの?」
ここで僕に振るのか。
「そうですね……」
どうしようか。
僕としては休みたい所だけど、二人は何か遊びたいみたいだし。
上手く二つを両立させる物となると……。
数秒考えた後、僕は一つの案を思い付く。
まぁ、黒か白かで言えば、限りなく黒に近いグレーゾーンなんだけど。
この二人なら何とか大丈夫だろう。
「観光とか、どうです?」
「観光……、ですか?」
聞き返された。
予想通りではあるけどね。
「ほら、僕ってここに来て日が浅いじゃないですか。だからこの街の事とか知りたいなぁと思って……。駄目ですか?」
「全然良いわよ!」
「むしろそれしか無いでしょう」
……何なの君達。流石に僕でも引くよ?
もうそろそろ慣れて行かないといけないとは思うんだけど。
僕は密かに肩を落とすのだった。
二週に渡って書き溜めた分を投稿します。
楽しみに待っていて下さった方、ありがとうございます。
「さっさと更新しろよ」と思っていた方、誠に申し訳ありませんでしたこれで勘弁して下さい。




