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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第二章
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第二九話:「そちらもお元気で」

 そんな訳で(どんな訳だ)、所変わってギルド内。

 僕らは横一列に三人並び、向かいに彼が一人で座っている。

 どうしたものかと思案していると、彼が口を開いた。


「まぁ結論から言っちゃえば大丈夫っスよ」


 ……色々飛ばし過ぎな気もするが、とりあえず彼の説明を聞こう。


「その内警備隊が来るでしょうけど、ろくに捜査なんてしませんし、どうせそこらのチンピラ風情が捕まって終わりです。万が一あなた達に捜査の手が及んでも、一応俺王様に顔が利くんで握りつぶしてもらうよう言っときますから」


 良いのかそれで……。

 何と言うか、随分と雑だ。


「と言うか、肝心な事を聞いてませんけど」

「ん? 何スか?」

「結局、あれをやったのはあなたなんですか?」

「えぇ、そうですよ」


 即答。

 そして肯定。

 迷う必要など皆無とばかりに答える。

 彼からしてみれば、至極当然の事なのだろう。

 何を今更、とでも言いたげな顔をする。

 それでも僕は、理由を尋ねる。


「どうして、やったんですか?」

「どうしても何も、あなた達を守るためですよ」


 ほぼ予想通りの回答。


「妹に手を出そうとする不埒な輩を、ちょっと成敗しただけですから」

「人を殺す事が、『ちょっと』ですか」


 僕の言葉に、彼は自虐的に、フッ、と笑うと、


「まぁありきたりな台詞になりますが、他人を殺す以上は、殺そうとする以上は、いつでも殺される覚悟を持つべきって事ですよ」


 と言って、どこか哀しげな眼を見せた。

 が、それも一瞬の事で、すぐに表情をいつもの軽薄そうな笑顔に戻すと、


「それで、そっちはどうなったんスか?」


 と聞いてきた。


「不合格なら今すぐ連れて帰りますんで、遠慮せず言っちゃって下さい」

「……一応聞きますが、『連れて帰る』とは?」

「俺らの故郷……と言っていいのかは微妙ですけど、まぁとにかく、一族のいる所に帰ります」


 僕は大体予想していたが、それに彼女は血相を変えた。


「兄様、どういう事ですか? 私は何も聞いていませんが」

「うんまぁ、言ってないもんね」


 彼はあっさりと言う。

 余りにもあっさりし過ぎたその言い方は、逆にその言葉を嘘くさく感じさせた。


「……事情をお聞かせ頂けますか」

「だから、簡単に言っちゃえば首って訳よ」


 怒りを抑えながら聞く彼女に対し、彼は飄々と答える。


「お前の主があんなに堂々と王に向かって喧嘩を売ったのに、俺らはそれを止める事すら出来なかった。だから、そんな奴らはもう用済みの役立たず。お役目ご苦労お役御免て事だ」


 どこか達観したような口調。

 あるいは、この事を予測していたのか。


「あぁ、別にあなたを責めてる訳じゃないので、変な誤解は止めて下さいよ?」


 彼は僕に対してそう付け足す。

 僕はそれを黙って聞く。


「ま、そういう訳だから、不合格だったらお兄ちゃんと一緒に帰るぞ」


 口ではそう言うものの、その口調は既に不合格である事が前提のように語っている。


「で、結局どっちなんスか?」

「まぁ、合格ですよ。おめでとうございますなのか残念ながらなのかは判断しかねますが」

「そっスか。よし、んじゃ帰るぞ。———ってえぇっ!?」


 おぉう、ノリツッコミ。

 勢い良く身を乗り出して、僕に顔を近づけてくる。


「いやいや、マジですか?」

「大マジです」

「本当に?」

「本当の本当に」

「何かの間違いとかじゃなくて?」

「何にも間違ってませんよ」


 そこまで会話の応酬をすると、彼は気が抜けたように、ドサッと椅子にもたれる。

 その姿勢で何事かを呟いていたようだったが、フッと息を吐くと顔を僕の方に戻して、


「分かりました、俺も男です。約束は守りましょう」


 と言った。


「ただし、俺ともう一度約束して下さい」

「何なりと」

「アイツを……、妹を、絶対に見捨てないで下さい。それが出来なきゃ、俺がアンタを殺します」

「分かってますよ」


 それを聞いて、彼は満足そうにフッと笑った。


「んじゃま、俺は行きますよ」

「もうですか? 僕らは別にここを発つつもりは無いですし、ゆっくりされていっても構いませんよ?」

「いいですって。どうせ俺には泊まる所も無いですし、早々に退散させてもらいますよ。あなた達の仲を邪魔するのも悪いですし」

「……そうですか」

「でもどうしてもっつーなら、あなた達と一緒の場所に泊まるってのも悪くは———」

「死ね、変態」

「兄様、それ以上口を開くと本気で殺しますよ」


 僕の両側から強烈な殺気と嫌悪感が……!

 この場の不快指数が三〇は上昇したね。


「じょ、冗談だよ。何なんだお前ら、その異常な団結力は……」


 それは僕も大いに同感だ。


「じゃあ、俺は本当に行きますわ。男同士の約束、守って下さいよ」

「僕は女の子ですって……」

「まぁまぁ。細かい事は気にしない気にしない」


 茶化すようにそう言うと、彼は席を立って出口へと向かう。


「そんじゃまぁ、せいぜいお達者で」

「えぇ、そちらもお元気で」


 彼は後ろを振り返る事無く、軽く手を振って去って行った。



 勇者一行に 新たな仲間が 加わった !

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