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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第二章
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第二八話:「文句無しの合格点ですよ」

「クソッ、何なんだアイツらは!」


 街の片隅で、俺達は集まっていた。


「この俺に向かって舐めた口利きやがって……!」

「ま、まぁ落ち着けよ。相手はたかが小娘数人だぜ?」

「その小娘に、揃いも揃って手も足も出なかっただろうが!」


 俺は声を張り上げる。

 その手には真新しい包帯が巻かれていた。


「許さねえ、許さねえぞ。絶対捕らえて、精神がボロボロになるまで犯して、手足ぶった斬って、最大級の苦しみを与えて殺してやる……ッ!」


 と。

 そこへ、新たに声がかかる。


「おいおい、物騒な話してんなぁ」


 その男は、短髪の黒髪に、見た事も無い奇抜な格好をしていた。


「誰だ、テメェ?」

「誰でもいいだろ。どうせ関係無えんだし」

「ハッ、違えねぇ。まぁ今は取り込み中だ、出直して来い」


 そう言って俺は、奴を追いやる仕草をする。

 が、それに反して、奴は戻ろうとはしなかった。


「んだよ、鬱陶しいな。消えろっつってんだろ」

「いや、そっちに俺に用事がなくても、こっちはアンタらに用があんだよ」

「あぁ?」


 コイツは何を言っている?

 俺達が首を傾げている間も、奴はゆっくりと語り続ける。


「アンタらさ、その大人数で女の子を襲うって計画立ててんだろ?」

「それがどうした? それこそテメェにゃ関係無えだろ」

「見知らぬ他人ならまぁ俺も見て見ぬ振りしたけどよ……」


 そこで一旦言葉を切ると、奴は口調をガラリと変えて、


「妹が襲われるって分かってて、助けに行かねえ兄はいねぇだろ」

「……ッ!」


 俺達を強烈な殺気が襲う。


「お前ら、やっちま———」


 仲間にかけたその言葉を、最後まで言い切る事は出来なかった。

 気付いた時にはもう遅かった。

 いつの間に近づいたのか、奴の持つ小刀が、俺の喉に根元まで突き刺さっていたからだ。


「グ……ッ!」

「遅えよ、クソが」


 奴が小刀を引き抜くと、そこから勢い良く鮮血が溢れ出した。

 俺はそれが、まるで現実味が感じられなかった。

 奴は、まるで興味が無いとでも言うかのように俺には一瞥もくれず、たじろいでいる周りの仲間達に嗜虐的な笑みを見せる。


「一人も逃げられると思うなよ」


 誰かが悲鳴を上げる間もなく、一方的な蹂躙が開始された。

 俺はそれを、最後まで見届ける事無く意識を失った。



 ================



 結論から言えば、彼女はとても優秀だった。

 特に、暗殺の技術と、死を恐れていないかのような行動力は、僕を遥かに凌いでいた。

 さながら機械のように自らに課せられた指令を着実にこなす姿は、一分の無駄も隙もなく、僕から見ても圧巻の一言だった。


「いかがでしょうか、我が主」

「えぇ、文句無しの合格点ですよ」

「我が主にお褒めの言葉を頂けるなど、光栄の至りでございます」


 そう言って、彼女は深々と頭を下げる。


「ふ、ふん。ちょっとはやるようね」


 一方で、王女は何故か引け腰の上から目線。

 そんな風では、締まる物も締まらない。


「実力も確認できた事ですし、街へ戻りますか」


 そう二人に声をかけ、元来た道へと引き返す。

 ちなみに『転移』は使っていない。

 街からそれほど距離が離れていないからというのもあるが、僕が力を見られたくないからというのが一番の理由だ。

 前にも言ったように、別に僕の力を隠す必要は無いので、これは単なる僕のエゴなのだが。



 街へと戻ってくると、何やら様子が騒がしかった。

 その騒ぎは少なからず僕の興味を引いたので、何事かと人々の話に耳を澄ます。


『おい、聞いたか? 連中が殺されたらしいぞ』

『あぁ。どうやら相当惨い事になってたらしいな』


『やぁね、ここもどんどん物騒になってきちゃって』

『でも殺されたのはあの厄介者達だぜ』

『そうそう。殺された所で困る奴なんか一人もいないって』


 どうやら話を聞く限りでは、殺人事件が起こったようだ。

 まぁ、世界によっては日常茶飯事になっている事もあるので、大して驚きは無かったが。

 だがその被害者というのが、どうやら僕達にとって良くないらしい。

 その殺された人というのが誰であろう、先程僕らに絡んできた男達のようだったのだ。

 彼らと僕らの諍いはかなり多くの人に見られていたので、僕らが彼らを殺す動機は充分。真っ先に容疑者として槍玉に挙げられてもおかしくないのだ。(この世界の法律がどうなっているかは知らないが)

 こういう科学技術が発展していない世界では、一度疑われてしまった者の無実を証明するのはとても難しい。

 何故なら、血液や指紋といった物的証拠は殆ど意味をなさず(と言うか解析できず)、状況証拠だけで犯人を決めつけてしまう事が多いからだ。

 加えて、科学とは違う摩訶不思議な力のお陰で、殺害方法やアリバイなども簡単に実行できてしまう。

 それは即ち、『誰がどうやって殺された』という事や『いつどこに誰がいた』などという情報が、一切無意味になるという事である。

 逆に言えば、それだけ他人に罪を被せる事も容易なのだ。

 勿論例外もあるが、どうやらこの世界はそうではないらしい。


「ねぇ、何があったの?」


 一人状況を分かっていない王女が、僕にそう尋ねてくる。

 答えるのは簡単だが、素直に伝えてしまってよい物か。

 僕が少しばかり逡巡していると、


「血の匂い……?」


 微かに、だが確実に、それを感じた。

 僕の後ろにいた彼女は、更に強く感じ取れたようで、


「誰だ、そこにいるのは!」


 僕らの後方、建物の陰に向かって声を張り上げた。

 それにつられて僕もそこに意識を集中させると、人の気配があるのが分かった。

 それも、先程男達と揉めていた時に感じた気配と同じ物を。


「え? え?」


 やはり一人だけ状況について行けていない王女。


「ちょっと! どういう事か説明しなさいよ!」


 説明を要求してくるが、それに構っていられる余裕は無い。

 彼女の方は、既に臨戦態勢に入っていた。


「もう一度だけ言う。そこにいるのは誰だ」


 質問を繰り返す彼女。

 それで出てくるなら苦労はしない、と思っていた僕だったが。


「おい待て待て。いきなり何言ってんだよ」


 予想に反して、その人物はあっさり姿を現した。

 それは……。


「……兄様?」

「……お兄さん?」

「何よ、アンタ」


 三者三様の反応を受けて彼は一瞬たじろいだように見えたが、すぐに平静を取り戻して、


「一人だけ異常に手厳しいなオイ」


 チラリと王女を見てそう言った。

 それから僕に視線を移すと、


「まぁ立ち話もなんですし、ギルドでも行きましょうや。詳しい話はそこで」


 と、僕らを促した。

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