第二五話:「違いますから」
翌日、朝。
天気は忌々しい程に清々しい晴天。
時間の概念が希薄なこの世界では、時計など当然無い。
なので、自分の体内時計に従うしかないのだが、いかんせん僕にはその感覚がいまいち分からない。
多分(地球換算で)八時ぐらいだと思うけれど。
元々僕は、そんなに朝は強くない。
あくびを噛み殺しながら横を見ると、半裸で寝そべる女の子の姿。
ラノベの主人公なら何かあってもおかしくない状況だが、僕はあいにくとそんな展開は望んでいない。
軽く揺さぶって王女を起こす。
が。
「う、ぅ〜ん……」
起きない。
え、この子も朝弱い人?
……まぁいいか。
朝食を食べ終わったらまた起こしに来よう。
そう思い、着替えて階段を下りる。
「おはようございます」
そう声をかけると、カウンターの奥から返事が返ってくる。
「おう、遅かったな。ん? 連れの小っちゃいのはどうした?」
「まだ寝てますよ」
そう言いながら、僕は席に着く。
同時に、目の前に朝食が置かれる。
今日の朝食は、どうやら洋風のようだ。パン(のようなもの)と、コーンスープ(のようなもの)。
一〇分程で食べ終えると、再び部屋へ戻る。
扉を開けると、王女は相変わらずだらしない格好で寝ていた。
一瞬、顔に水をかけて起こそうかとも思ったが止めておいた。
だって布団が濡れるからね。
「ほら、起きて下さい。朝ですよ」
「ん〜、あともうちょっとだけ……」
「駄目です」
「う〜……」
王女は渋々といった調子で起きてくる。
そして、自らの姿を見て固まる。
どんな姿かと言えば。
服がはだけて半裸状態。
ベッドの上。
結論、事後……?
「違いますから」
表情でそれを読み取った僕は、何か言われる前に牽制を入れておく。
「そっ、そうよね! そんな事ある訳ないじゃない。全く私ったら早とちり……、ホントに何もしてない?」
「してません。そんな事より早く着替えて下さい、行きますよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
王女は急いで身なりを整えようとする。
「あ、そう言えば朝ご飯は? まだならその、一緒にどうかな、なんて……」
「先に頂きました。あなたが寝ている間に」
「な、ちょ、起こしなさいよ!」
「起こしましたよ。起きようとしなかったのはあなたじゃないですか」
「うぅ……」
王女は、とぼとぼと肩を落としながら部屋を出て行く。
少し悪い事をしてしまったかな、と思いながら、僕はそれを見送った。
結局、宿を出たのはそれから約三〇分後の事だった。
==============
ギルドに着いたのは、日も昇ってきた所だった。
とは言っても、約束の時間には程遠い。
当然待ち人がいる訳もなく、軽い依頼でもこなして来ようかと思……ったのだが、そこで信じられない人物を見た。
カウンターのすぐ近くのテーブルに、何故か椅子に座らず、直立不動でいたその人物とは———。
「おぉ、我が主。まさかこんなにも早くいらっしゃられるとは」
「……」
いやいや、僕も人の事は言えないとは言え、いくら何でも早すぎるでしょ。
約束の時間どころか、まだ正午も回ってないよ? 午前中もいい所だよ?
「えっと……、どうしてここにいるんですか?」
僕がそう聞くと彼女は、何を言っているんだという顔で、
「奴隷が主より先に努めるのは当然の事でしょう?」
と返して来た。
いやいや、えぇ〜。
どんどん彼女の地位が低くなっていく。
というか自分で貶めてるよこの娘。
薄々気付いてはいたけど、この娘あれなの? Mなの?
「……ちなみに、どれくらい前からいたんですか?」
「何、さほど誇るような時間でもありません。ほんの三刻程です」
『刻』というのは、今で言う江戸時代頃に使われていた時間の単位だよ。
ちなみに一刻は約二時間。
この世界でも大幅にずれてはいないから、三刻というのは単純計算で約六時間だね。うん、凄い。
「どころの話じゃないですよ!」
思わず叫んでしまう。
僕の大声に、ギルド内にいた他の人(と言ってもほんの数人だが)が一斉にこちらを向く。
だが、大声を出したのが僕だと分かると、またすぐに自分たちの会話に戻る。
僕はと言えば、動揺を抑えている真っ最中だった。
『僕も人の事は言えない』なんて、大きな間違いだった。
僕とは全く比べ物になっていない。
それにしても、僕のキャラが崩れるとは……。
一体いつぶりだろうか。
遅まきながら、僕は気付いた。気付いてしまった。
この世界は久々に、色々な意味でキツくなると。
更新が随分久しぶりになってしまい、申し訳ありませんでした。orz
楽しみにしていただいていた方々には大変ご迷惑を、って、そんな人いませんよねw←
今回のあとがきはそれだけです、はい。




