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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第二章
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第二三話:「僕は関係無いでしょう」

「―――という訳で、改めましてご挨拶を」


 テーブルを挟んで、僕は彼らと向かい合う。王女は、僕の横に座っている。

 二人のうち、男の方が口を開く。


「辺境の土地で、しがない暗殺稼業を営ませてもらってます。あ、こっちは俺の妹っス」


 ペコリ、と女性の方が頭を下げる。

 つられて僕も同じ動作をする。

 隣の彼女に、動く気配はみられない。

 何やら不機嫌そうだ。


「まぁそれでですね……。回りくどいのは苦手なんで、単刀直入に言わせてもらっていいっすか?」

「えぇ、何か?」

「実は、妹の事で相談が……。いえ、もちろん分かってます。さっき会ったばっかの得体の知れない奴の言う事なんか、聞く気も起きないっスよね」


 苦手と言っておきながら、充分回りくどいじゃないか。

 というか、嫌な予感しかしないな。


「構いませんよ。どうぞ仰って下さい」


 僕がそう促すと、彼は恐る恐るといった風で話し始めた。


「その、ですね、妹がどうやら、惚れちまったようでして……」

「良いじゃないですか。お年頃のようですし、お兄さんとしては心配かもしれませんが、見守ってあげましょうよ」


 僕がそう言うと、彼は少し複雑そうな顔をして、


「そういう事じゃないんですけどね……」


 と、小さく呟いた。

 僕は、それに気付かない振りをして、再び尋ねる。


「それで、どうして僕にそれを言うんですか? 僕は関係無いでしょう」


 後半の部分を強調しながら言うと、彼は言いにくそうにしながら答えた。


「えぇっと、ですね……。その惚れた対象というのが、あなたでして……」

「ごめんなさい」


 間髪入れずに即答する。


「えぇえぇ、そうですよね。いきなりこんな事言われても戸惑うっスよね、分かります。勿論こちらとしては無理にとは言いません。ですが、俺も妹の気持ちは最大限尊重してやりたいんです。どうしてもと言うなら俺からも言いますが、どうか前向きに考えて―――って、えぇっ!?」


 面倒くさいな……。


「も、もう少し考えてくれても良いじゃないっスか」

「嫌ですよ。どう考えても、いい方向に転がりそうにないでしょ」


 早いうちに断っておかないと、また結局なあなあになってしまうので、僕は話を畳み掛ける。


「大体、あなた達はさっきの王様に仕えてるんじゃないんですか?」

「えぇまぁそうなんですが、一応、俺たちの間にも掟みたいなモンがありましてね。説明すると長くなるんで、要点だけ纏めますと、『惚れた相手にとことん尽くせ。金だ何だは二の次だ』っつー事でして」

「なるほど。つまり、金で雇われているあっちよりも、自分が惚れた対象である僕の方が優先順位が高いと、そういう事ですか」

「まぁ、言っちまえばそういう事っス」


 と、今まで黙っていた女性の方が口を開いた。


「我が主」

「とりあえず僕はまだ主にはなってないですけど、何ですか?」

「私は、雨の日も風邪の日も、健やかなる時も病める時も、目の前にどんな困難が立ちはだかろうとも、誠心誠意、我が主に尽くす所存です」


 結婚式の誓いの儀ですか。


「我が主が『殺せ』と命じれば誰でも殺しましょう。我が主が『死ね』と命じれば、今すぐにでもこの首を差し出しましょう。私は、我が主の傍にいられれば、それで幸せなのです」


 重い! 愛が重い!

 とてもじゃないけど、受け止めきれる自信がないよ!


「我が主の傍にいられるのならば、私は何も求めません。何も望みません。捨て駒のようにぞんざいに扱い、家畜のように無礼に扱い、奴隷のように使い潰して、ボロ雑巾のように使い捨てて下されば、私はそれで満たされるのです。私は―――」

「わ、分かった、分かりました! 分かりましたから、一旦落ち着いて下さい!」


 慌てて彼女を静止させる。

 放っておくと、永久に語り続けそうだから怖い。


「お話はとりあえず分かりましたし、あなたの気持ちも充分理解しました」


 ですが、と言って、一旦言葉を切ると、


「こちらにも色々事情があります。なので、少し考える時間をください」


 と言って、返事を延ばしておく。


「待つとはどれくらいでしょう? 三年までなら待つ用意はありますが」

「そんな待たなくていいですから。明日の同じ時間に、またここに来て下さい。それと、お兄さん」

「ん? 俺っスか?」

「この後ちょっとお時間いいですか? 話し合いたい事があるので」

「あぁ、全然大丈夫っスよ」

「兄様。我が主に手を出したりしたら、殺しますよ」

「い、いや、出さねえから」


 そう言って目を逸らす。

 ……念のため、気をつけておこう。


「付き合わせてしまって悪かったですね。あなたも帰っていいですよ」


 隣でずっと黙っていた彼女に声をかける。

 すると彼女は、いきなり立ち上がって、彼に杖を向け言い放った。


「師匠に何かあるといけないから、私も同伴させてもらうわ。文句はないわね?」


 言った後、視線を一瞬こちらに向ける。

 ……何だったんだろうか?


「僕はどちらでも良いですが、どうしますか?」

「……まぁ、俺も別に構いませんけど」

「じゃあ決まりね」


 そう言うと彼女は、再びどっかと椅子に座り込んだ。


「では、私はこれで失礼させていただきます、我が主」


 彼女は、そう言い残してギルドを去っていった。


「んじゃあ始めましょうか。何ですか、話したい事って?」

「……予想はついてると思いますけど、妹さんの事です」

「……やっぱりっスか。それで、何から聞きたいですか?」

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