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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第閑話:「小さい言うな!」

 私の父親……いや、父親と呼ぶのはよそう。

 あの人———王は、最低の人間だ。

 人を人とも思わぬ無能。

 学業も政治も軍事の才も、何一つ持っていない。

 それなのに、王としての威厳は充分以上に持っている。

 逆に言えば、先代から受け継いだのはそれだけだ。


 言うのが遅れたが、この国では血筋が全てだ。

 よっぽどの事を為さない限り、身分が変わる事は無い。いっそ清々しい程のカースト制度だ。

 平民の子は平民。貴族の子は貴族。そして、王族の子は王族。

 その人の人生は、生まれた瞬間に全て決まると言っても過言ではない。

 だから、この国の長い歴史の中で、賢明な王、無学な王が出るのは、当然と言えば当然だ。

 そして、歴史に残るのはいつも、賢明な王。

 今代の王は、間違いなく後者。歴史に名を残す事はまず無い。

 平民達だって、そんな事は薄々理解している。

 だから、今代の王には何も期待していない。


 とは言え別に、私はその事であの人を責めるつもりは無い。

 誰にだって向き不向きはある物だ。

 あの人には、王の資質は無かったというだけの話だ。

 では何故私が、あの人を最低だと断ずるのか。

 簡単な事だ。

 あの人には、王である以前に、親である資格が無い。親である自覚が無い。

 あの人は私の事を———私に限らず、他の兄弟姉妹や、自分の妻でさえも———ただの一度も、名前で呼んだ事が無い。

 私を呼ぶ時には、『お前』か『第三王女』。その二択だ。

 他の人たちも、似たような物だろう。

 恐らくあの人は、自分以外の全ての人を、自分に奉仕するための存在としか、見ていないのだろう。

 私は、その数多いる有象無象の、ほんの一欠片でしかないという事だ。

 そのくせ、私が平民達と関わりを持とうとすれば、一丁前に危機感を持つ。

 心配せずとも、その内勝手に潰れてくれるのだから。



 ……とまぁ、長々と語ってしまった訳だが、私が言いたいのはそういう事ではない。

 遠からずこの国は、いずれ滅びるだろう。

 その時に備え、私は力が欲しいのだ。

 自分だけでも、生にしがみつけるように。

 それに見合うだけの努力はしてきたはずだ。

 私の事を、自分勝手だと思う人もいると思う。

 だが、この国ではそれが正常なのだ。

 正常だと思う事それ自体が異常。そんな事は分かっている。

 分かっていても、どうしようもないのだ。

 他の兄弟達の事は知らない。興味も無い。

 大半が、王族というぬるま湯に浸かりきって腐りきった愚か者達だ。助ける義理は無い。

 私を含めた、それなりに危機感を持っている数名は、それぞれ各自で手を打っている。

 だから、心配するような事は……。いや、何でもない。


 とにかく、そういう訳だから、私は力を欲しているのだ。

 街を出て、魔物退治に勤しんでいるのもそれが理由だ。

 そして今日、私は彼女に出会った。



===============



 彼女を見て、私は一目で確信した。

 そして思った。

 彼女を手駒に出来れば、自分はどれだけの力を手に入れられるだろう、と。

 そうすれば……。

 だから私はすぐに動いた。


 まずは印象付け。

 そのつもりだった。

 けれど、私のそんな考えは、一瞬で吹き飛ばされてしまった。

 自分の見立てが間違っていた事を思い知らされる。

 気付けば私は、彼女に弟子入りを求めていた。



 彼女を師匠とするにあたり、いくつかの障害があった。

 その最たる物が、あの人だ。

 あの人は必ず何かを仕掛けてくる。

 そしてその読みは、ある意味では当たり、ある意味では外れた。

 あの人は、私の予想を遥かに超えた難題を、彼女に課した。

 それがあの二人。


 あの二人は、あの人の護衛の中でも、特に優れている。

 何でも、彼らは人族領の中でも辺境中の辺境に拠を構えている、一流の暗殺一族だそうだ。

 彼らが動く理由は二つ。

 金か、力か。

 金を積まれれば誰でも殺すし、力ある者には己の命を懸けて付き従う。

 あの人は当然前者。

 とは言え、あの一族が力で誰かに従っている所など、誰も見た事が無い。

 彼らが本気になれば、高々一族数十人で、一国を落とせるという噂もあるくらいだ。

 だからそれは、都市伝説程度の扱いだった。

 それなのに———、いや、まずは順を追って話そう。


 とにかく、人界最高峰の暗殺者達を一瞬で黙らせたその技量には、流石の私も舌を巻いた。

 かと思えば、あの人に対して刃を向けての説得(おどし)

 つくづく、彼女が怪物だという事に、遅ればせながら私は気付いた訳だ。

 そして、周りの世界が止まっているのにも構わず、彼女は悠然と王宮を出て行った。


 一体どれだけ、時間が経過しただろうか。

 ふと我に返れば、周囲には次第に喧騒が戻っていく所だった。

 何やら混沌とした状況になっていたが、それに構っている暇はない。

 最低限の礼儀として、あの人に一礼をすると、私は王宮を出て、その足でギルドへ向かった。

 その時の私は、気付くべきだった。

 あの風景の中に、足りない者があった事を。



===============



 ギルドに着くと、私は彼女を捜す。

 とは言っても、私の身長では辺りを見渡せないので、自然周囲を徘徊する事になる。

 とりあえず受付まで歩を進めようと、大柄な男たちの間をすり抜けながら歩く。

 こういう時には、身体が小さいのは便利だ。

 と、考えていたら、パシッ、と腕を掴まれた。


「小さい言うな!」


 振り向き様に杖を振るう。

 それを優しく受け止めながら、私の手を掴んだ人物は言う。


「誰もそんな事言ってないじゃないですか」


 呆れたような、気怠そうなその敬語口調は、間違いなく彼女———師匠の物。


「全然来ないから心配したんですよ?」

「あなたが色々やらかすからでしょーが!」


 戸惑った様子の顔を浮かべながら、師匠は言う。


「まぁ、依頼達成の報告は終えましたから、とりあえずゆっくり話しましょうか」


 そう言って、師匠は角のテーブルに向かう。

 そこで座っている人物を見て、思わず私は言葉を失った。

 そこにいたのは、見慣れぬ———見知らぬではなく見慣れぬ—――ここにいるはずのない人間達だった。


「ん、王女様? 何でこんな所に?」

「もしかして、我が主の待ち人とは彼女の事で?」

「そうですが……、僕はあなたの主になった覚えはないですよ」


 師匠と話していたのは、全身真っ黒の一組の男女。

 あの人の護衛のはずの———彼らだった。

という訳で、無事に(?)第一章を終わらせる事が出来ました。

皆さんが今回の話を読んでくれている事を信じて、今話は筆を置かせていただきます。

それでは皆様、また次回!(多分)

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