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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第一六話:「殺してあげるから」

 町の外に出た僕は、人目につかない所に移動する。

 別に隠れる必要があるのかと問われれば無いと答えるのだが、まぁ何となくだ。



 今回僕が受けた依頼は、群狼(クラスタウルフ)の討伐。

 この魔物は、単体ではそれほど強くはない。戦闘に慣れている者なら、一撃で倒せる程度だ。

 では、何故この魔物の討伐がBランクに指定されているのか。それはひとえに、数の多さにあると言えるだろう。

 この魔物は、常に群れで行動する。

 少ない群れで一〇匹、多い群れでは、三、四〇匹は固まっている。

 おまけに、群れの中の一匹が統制をとっており、連携も抜群だ。

 群れを仕切っているリーダーは、他の個体と比べて段違いに強い事もあり、その個体に限り、闘狼(バトルウルフ)と呼称される事もある。

 また、群狼とよく似た種類の魔物に、軍狼(アーミーウルフ)と呼ばれる魔物もいる。

 こちらは、性質は群狼とよく似ているが、一体一体の強さが群狼の比では無く、熟練の冒険者でもやられる事がある。

 なのでこちらは、Aランクに指定されている。



 長々と話してしまった訳だが、僕が隠れている事の、何の説明にもなっていないじゃないかと思わないでくれ。

 それはこれからちゃんと説明する。

 さて、この群狼だが、生息地がかなりここから遠いのだ。

 普通に行けば、片道四日はかかる。

 普通はそれでも問題ないのだが、いかんせん今は依頼の期限が迫っているのだ。

 ちんたら歩いて間に合わなければ、違約金を払う事になってしまう。それだけは何としても避けたい。

 なので、神様からもらった能力その……、いくつだっけ? まぁとにかく、『転移』を使ってひとっ飛びしたいのだが、他人に見られると、多少まずいかなーという気持ちがある。

 だからこうしてこそこそしている訳だ。

 ちなみに、通常はバカ高い料金を払って『魔法石』という物を購入し、それに魔力を込める事で転移するという物だ。

 料金は、一個銀貨五〇枚。一度で何人でも跳べるが、一個で一度しか使えないと言う代物だ。

 ギルドから借金出来るし、高ランクな依頼を達成すればそれで元が取れる額だが、それでも敷居が高い事に変わりはないのだ。



 そんな訳で、僕は路地裏まで来ると、『転移』を行使する。

 と言っても、そんなに難しい事をする訳ではない。

 頭の中で、行きたい場所を思い浮かべればそれでいい。

 目指すは東の森。

 一瞬の浮遊感の後に、僕は、周りに鬱蒼とした木が生い茂る硬い地面の上に立っていた。

 まさしく、いかにもな場所だ。

 まずは群狼を探す所からだ。

 彼らの見つけ方は簡単だ。

 (ウルフ)系に限らず、野生に生息している魔物は、血の臭いに敏感だ。

 僕らの世界でいえば、鮫なんかは(地上水上の差はあるだろうが)数キロ先の血の臭いを嗅ぎ取れるそうだとか。

 魔族がそうでないかと言えばそんな事はないのだが、野生の魔物の方が、その傾向が強いという事だ。

 おまけに、狼系は同族以外と群れる事は好まないので、他の魔物がよって来る事もない。

 適当に当たりを付け、その方向へ進む。

 少し進んだ所で立ち止まり、懐から小振りのナイフを取り出す。

 それを人差し指に当て、軽く押す。

 プツ、という皮が切れる音がして、一筋の赤い血が流れ出す。

 それは指を伝って流れ落ち、硬い地面に吸い込まれる。

 流れ出る血を眺めながら、その場に立ち尽くす。

 遠くの方で、狼の遠吠えが聞こえた気がした。



 数分後、僕は大勢の狼の群れに囲まれていた。

 数は一〇、二〇……、そこで数えるのを止めた。

 数えるのも嫌になる程の大群だ。

 そういえば、血止めをしていなかったなと切れた指を見て思う。

 指を口元まで持ってくると、舌を出してそれを舐める。

 僕のその行動が気に食わなかったのか、それとも自分が耐えきれなくなったのか、群れの一匹が僕に飛びかかってきた。

 僕は、無造作に手に持っていたナイフを振るい、同時に小さく呟く。


「ごめんね」


 ヒュン、という風を切る音が耳に届く。

 狼は、僕に飛びかかった体勢のまま、僕の脇を通り過ぎ、硬い地面に頭から突っ込んだ。

 地面に倒れ伏した狼の身体に、縦一直線に赤い筋が入る。

 一瞬遅れて、勢い良く血が吹き出す。

 近くにいた僕にも返り血がつくが、僕はそんな事は気にしない。

 今まで散々浴びてきたのだ。

 生暖かくて、血生臭くて、赤黒くて、鉄の味のそれを。

 獣だろうが、魔物だろうが、人だろうが。

 幾度となく浴びてきたのだ。いまさら、どうという事はない。

 断末魔すらあげなかったその死体を、僕は感情のこもらない眼で見下ろした。

 その様子に、辺りの空気が張り詰めていく。

 強烈な殺気と、同族を殺された恨み。その中に、『僕』という存在に対する、ほんの僅かな恐怖が見え隠れする。

 グルルル……、という唸り声が、幾つも辺りを響かせる。

 その光景に、僕は何の感慨も無く見つめながら言う。


「いいよ、おいで。全員纏めて、殺してあげるから」


 その言葉を合図に、何十匹という狼の群れが、一斉に僕に飛びかかってきた。

更新が少し遅れました、十八話目です。

どうすれば人気が出るのか試行錯誤する(だけの)今日この頃。

やっぱあれですか、情報の差ですか?←

答えが分かる方、教えて下さい!(切実)

もちろん評価を下さった皆様、感想を下さった皆様、お気に入りに登録して頂いた皆様、何より読んで下さった皆々様には感謝で頭が上がりません。

普通の感想もお待ちしております。あと、要望があれば、登場人物紹介とか世界観設定とか書きます。

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