第一四話:「何も考えてないんですね……」
「さて……。此れで我がギルドの副マスターを、お主が結果的に追い出した事になったのじゃが」
「えぇっ、僕のせいですか!?」
再びギルド内。
マスターの私室で、僕は彼女と会話を交わしていた。
「さっきあんな格好良い別れ方しておいて、その責任を僕に押し付けますか?」
「仕方無かろう。実際の所は兎も角として、表面上だけを見れば然うなるのじゃから」
「それを何とかするのがあなたの役目でしょう?」
僕は彼女に突っかかるも、彼女は飄々とした態度で、
「其れは出来ん」
と、言ってのけた。
「何故ですか?」
「そもそも此のギルドは、儂の強さと、彼奴の人望、と言うか統率力で持って居った様な物なのじゃ。ギルドを支える柱の半分が無くなったとなれば、崩壊も免れんかのう……」
「何を一人で悟ったような口調になってるんですか」
もう駄目だ。この人は終わっている。
多分この人は、その場のノリと勢いだけで生きている人だ。
それが良い方向に働き、結果、今彼女はここにいるという訳だ。
恐らく、このギルドを支えていたのは、彼女以外のここの職員だろう。
少なくとも、彼の人望云々はあるとしても、彼女の強さに惹かれたという事は無い。
確かに惹かれた者はいるかもしれないが、柱になる程の人数はいないと断言出来る。
彼を中心に、この終わってしまっている人をフォローしていたのだろう。
柱どころか、大黒柱となっていた人が抜けたのだから、それは崩壊もあり得る。
僕は溜息を一つ吐くと、
「それで、本当に崩壊したらどうするんですか?」
「其の時は其の時じゃ。成ってみてから考えるわい」
「やっぱり、何も考えてないんですね……」
言って僕は、再び息を吐く。
「では僕はこれで。失礼します」
そう言って立ち去ろうとする僕を、彼女は呼び止めた。
「少し待て」
「何ですか?」
振り返らず進む僕に、彼女はとんでもない事を言い出した。
「お主が彼奴の代わりをやらんか?」
その言葉に、僕の足はピタリと止まった。
「代わりと言うよりは代理じゃの。彼奴が戻って来る迄の間、彼奴の仕事をこなしてくれれば良い」
僕は、今日何度目になるか分からない溜息を吐くと。一拍置いて、
「お断りします」
と言う。
「まぁお主なら然う言うとは思っておったが、一応理由を聞いておこうかの」
「理由も何も、何で僕がそんな面倒な事をしなきゃいけないんですか。僕にだって、やらなきゃならない事はあるんです」
僕の言葉に、彼女はさして驚いた様子も無く、
「其れは残念じゃの」
とだけ言った。
「逆にこっちが聞いても良いですか?」
「何じゃ? 何でも答えてやるぞ」
「どうして僕を選んだんですか? こんな得体の知れない新人よりも、もっと良い人は沢山いるでしょう」
「其の程度の事か。ならば、答える迄も無いと思うがのう」
そう言って彼女は、僕を見て舌舐めずりをすると、
「儂が、お主を気に入って居るからに決まっておろう」
「……良い意味の方である事を祈りますよ」
それだけ言って僕は、振り返らずに部屋を出て行った。
どうも、今回は少し短い十六話目です。
いくら物語の進行が遅いとはいえ、流石に前回の急展開は反省しております。
展開的にも少し……、いやかなり無理があった事は自覚しております。
ですので、前回で見放さず、これからもこの作品と作者を見守ってやって下さい。




