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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第一三話:「期待しないで待ってますよ」

 翌日、僕は町の広場に立っていた。腰に、一振りの剣を携えている。

 相対するは、ギルドの副マスター。その背には、彼の身長程もある大剣。

 周りには、どこから噂を聞きつけたのか、大勢の見物人達。その殆どが冒険者だ。

 その最前列、特等席には、マスターがどっかと腰を下ろしている。

 副マスターは、その様子を見て、ハァ、と溜息を吐く。


「ったく……、ウチのマスターは気分屋で困るぜ。お前もそう思うだろ?」

「えぇ、そうですね」


 と、僕は苦笑しながら答える。

 彼は再び息を吐くと、


「まぁ、もう決まっちまった事だし、やるからには俺も全力でやるがよぉ……」


 そこで僕をジロッと見ると、


「一応忠告しとく。怪我したくなきゃあ、さっさと降参しろ。俺だって、無意味な争いは嫌いなんだ」


 と言う。

 僕はそれに答える。


「確かに僕も、無駄な争いは嫌いです。でもこれは、僕にとっては無駄じゃないんですよ」

「……ハァ。マスターの言葉を否定するつもりは無えが、正直俺は、お前をそこまでのヤツだとは思ってねえ」


 辺りの空気が張りつめる。


「だが、悪ィが俺は、手加減ってモンが苦手なんだ。再起不能になる前に負けを認めろ。さっきのは、そういう意味の『忠告』だ」


 強烈な圧迫感を感じながらしかし、僕は平然とした調子で言う。


「そうですか。僕は得意ですよ、手加減。そういう事は、今まで散々してきましたから」

「……思い上がるなよ、ガキが」


 圧力が更に鋭さを増す。

 ……これは、ちょっと本気出すかも。

 高揚する気分を抑えながら、僕は彼を見据える。


「お主ら、準備は良いかの?」


 と、マスターが問いかける。


「はい」

「えぇ」


 と、僕らは同時に答える。


「では……、両者構え」


 その言葉で、僕らは自分の武器に手をかける。

 それまで騒がしかった周囲が、一瞬で静寂に包まれる。

 聞こえるのは、人々の呼吸音のみ。

 マスターの腕が、頭上に掲げられる。


「始めっ!」


 言葉と共に、彼女の腕が振り下ろされる。

 同時に、僕らは相手に向かって走り出す。

 数メートルあった距離は、一瞬でゼロにまで縮まる。

 彼は、剣を抜くと、勢いに任せてそのまま僕目掛け振り下ろす。

 僕は、鞘を滑らせて、下から彼の剣目掛け振り上げる。

 このまま二つの剣がまともに打ち合えば、単純に質量の差で、僕の方が負けるだろう。

 だが、僕は構わず振り抜く。

 交錯は一瞬。

 キィン、という甲高い音が鳴り響き、刀身が真っ二つに折れる。

 折れた剣先は宙を舞い、数メートル横の地面に突き刺さった。

 僕と彼は、剣を振り抜いた姿勢のまま静止している。

 しかし、僕らの顔は対極的だった。

 僕の方は、普段と変わらぬ冷静な表情。

 対して、彼の表情は、驚愕の色に染まっていた。何故なら———、


「何……、だと……?」


 ———彼の剣は、根元から先が無くなっていた。

 一方で、僕の剣は、ひびどころか、刃こぼれ一つしていなかった。

 残身を解くと、僕は剣を鞘に戻す。


「ふむ……、勝負在りじゃな」


 彼女がそう言うと同時に、周囲に喧騒が戻ってきた。


「何が起きたんだ、今の……」

「アイツが何かしたのか?」

「それより、まさか副マスターが負けるなんて……」

「どうなってんだよ、オイ……」


 辺りの話し声を無視し、僕が立ち去ろうとすると、


「待てい」


 と、マスターの声が僕に届いた。


「何ですか?」


 と、僕は振り返る。


「然うじゃな。儂としては満足じゃが、見世物としては、少々盛り上がりに欠けたのう」

「元々そのつもりではやってないんですけど……」

「おや、然うじゃったかの。まぁ良い。兎に角、約束通り、お主のランクはBに引き上げておこう」


 そう言うと彼女は、今度は彼の方に向かって行く。

 僕はそれを、自然と目で追っていた。


「どうじゃ、彼奴の力は?」


 その言葉に反応したかのように、彼は顔を上げてマスターの方を見る。

 自然と僕の目にも顔が見えるようになるのだが、その顔は実に晴れ晴れとしていた。


「素晴らしいの一言です。俺如きでは、全く歯が立ちませんでしたよ」

「然うじゃな。彼奴はお主、否、儂の数段上に居るじゃろう」

「ハハ、そこまでですか。なら、俺じゃ到底敵うはずも無かったですね」


 そう言うと、彼は僕の方を向く。


「マスター、一つ相談があります」

「うん、何じゃ?」

「しばらく、ギルドを離れようと思います」


 彼女はその言葉に驚く事無く、


「然うか」


 と一言だけ言った。


「各地を回って修行をしてきます。そんで、強くなって必ず、貴女の元に戻ってきます」

「期待して待っておるぞ」

「はい」


 そう言うと彼は、折れた剣の刀身を拾い上げると、残った柄と共に鞘に入れ、マスターに手渡した。


「では」

「もう行くのかい?」

「はい。準備を終えれば今すぐにでも」

「然うかの。達者でな」


 彼はマスターに頭を下げると、今度は僕の方に向かってきた。


「次会う時は、もうちょっとましになってやるよ」

「期待しないで待ってますよ」

「ぬかせ」


 そう言って笑うと、彼は僕らに背を向けて去って行った。

約一週間ぶりの十五話目です。

やはり平日の更新は厳しいという事で、今後はしばらく、土日祝日の更新となりそうです。

遅くなりますが、これからもご愛読をよろしくお願いします。

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