汐梨の談
「では私から動物繋がりでひとつ、怖かった話です」
【汐梨の談】
『ゴトゴト、ゴトゴト』それは天井を駆け回る音。
またネズミが運動会をしているみたい。そんな風に家族と言ったりしてたものです。
あちらこちら改築しているとはいえ、なにしろ曾祖父の代からの古い家でしたから、ネズミぐらい住んでいても不思議では無かったでしょう。
正直なところ恥ずかしいくらいのボロ家でしたが、それでも長年住んできただけに愛着のある家でした。
私が高校に入った頃です。建て替えをすると聞いたときは、嬉しくもあり寂しくもあり……。
「へぇ、汐梨ちゃんが高校生のころかぁ、可愛かったんだろうなあ」
「あ、いえ、別に大したことは……」
「おい紫乃、話の腰を折るのは悪い癖だぞ」
「あ、ごめんね、続けて」
【汐梨の談・続き】
慣れ親しんだ我が家で過ごす最後の夜。
染みの形まで覚えている天井に感傷を抱きつつ、眠りへとつき始めた頃です。
『ガタガタ、ガタガタ……』
それはネズミの運動会とは比べ物にもなりません。天井を軋ませる大きな音に私はもちろん兄までが吃驚のあまり部屋から……
「汐梨、お前に兄貴いたのか?イケメン?写真とかある?」
「…………」
「はい、すまん、続けてくれ」
【汐梨の談・続きの続き】
……さすがに泥棒とまでは思っていませんでしたが、だからと言って放置したままでは寝れるものではありません。
得体の知れない大きな生き物が私たちの真上にいるのは確かなのです。
父が脚立を用意すると、兄は懐中電灯を片手に天井裏へと上がってい……
「汐梨っち、それアライグマっしょ?」
「…………」
「この話聞いたことあるし、つかこれ3回目かもだし、アライグマ」
「…………」
「あのね千夏、話の腰を折るのはアンタの悪い癖だから」
「おい、人の話は最後まで黙って聞くもんだぞ」
「えーっ」
「グダグダじゃないですか……」
再三再四の持ちネタ、よもやのオチばらしに赤面の忍びにも勝らん凹……
「……ナレは結構ですよ」
はい。




