咲百合の談
「それじゃ口直しだ、私からもひとついくかな」
【咲百合の談】
ソロキャンプは彼の細やかな愉しみ。
都会の喧騒を忘れ自然に抱かれながら静寂の夜を過ごす。そんな彼の安らぎに嫉妬していたのかもしれない。
私は勇気を出して彼のテリトリーへと飛び込んだ。
二人で初めて過ごす星空の幕屋。恋敵はどこまでも美しく闇を飾り、そして切ないくらいのサイレンス。
焚き火に映える彼の容貌はいつになく逞しくも穏やかで、手にしたカップの中のラムがロマンスに揺れてしまう。
立ち昇る煙は扇情の香となり、臆病な私の中に隠れていた獣性を……
「なんだかイライラしてきたんですけど?」
「ノロケかよ、要は男とキャンプでヤッてきたって話っしょ?」
「千夏さん、言い方……」
「咲百合、オチまでスキップしてくださいよ」
「お前ら身も蓋もねえな……」
【咲百合の談・続き】
まあ、確かにテントの中で盛り上がっちゃったんだけど……。
『ガサガサッ!』
突然、テントの近くで音が……いや、テントを擦っていくような音だったな。
すげぇビックリしてよ。彼が慌てて様子を見に出たんだけど、結局なにもいなかったんだよな……。
あ、終わりな。
「それ覗きなんじゃね?ヤッてたんだしさ」
「それはそれで怖いかも……」
「動物じゃない?ほら、最近クマとかよく出るらしいしね」
「クマなら咲百合は死んでますよ」
「んー、動物とか覗きのような感じでもなかったんだけどな……」
心の解けたるに隙居るは夜音の怪。
果たして咲百合が燃やしたる情欲の行方は如何に相成ったか。それはまた別の話。




