第一章 5 ―― 弥生との関係 ――
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いたためられないニュースの内容に、嫌気が差しそうになっていたところに、連の頬は緩んだ。
竹内 正樹 ――
映し出される名前と番号。蓮の同じクラスの友人であり、数分前に助けのメッセージを送ってきた人物でもあった。
どうやら断られた腹いせか、直談判をするつもりなのだと蓮は悟った。
「もしもし?」
テレビの電源を切り、蓮は電話に出る。
『おう、蓮、俺やっぱ無理っ』
第一声に正樹の悲鳴が轟く。
が、彼の声に切羽詰まった緊張感の欠片は感じられない。
つい、蓮は嘲笑してしまう。
「何が無理だよ、どうせ、する気ないんだろ?」
『バカ言うなって。俺だって一応頑張ったんだぞ。十分…… 五…… 分。いや、あれ? 三分?』
「それですぐに助けってか?」
『だって仕方ないだろ、この前のテスト、ぜってぇ、赤点だぞ。テストがダメなら、提出物くらい出して株上げとかないとヤバいんだって、俺』
「それは僕だって一緒だよ。こっちだって自信ないんだからさ」
互いに自らの英語の無理難題さを愚痴り、己の未熟さを罵る。自分を罵倒している惨めさから片頬を歪め苦笑する。スマホ越しでは点数の低い仲間を得たように、正樹がケラケラと高笑いをする。
彼の危機感のない笑い声に蓮は不安になりうつむいた。
「お前さ、よくそんなに笑えるよな。まぁ、僕も人のこと言えないんだけどさ。これだと二人ともヤバいよ」
『ホント、最悪だよな。まぁ、いつもだったら放っておくんだけど、今回ばっかりは出しておこうと思ってさ』
一泊、間を置いてから神妙な声を籠らせて呟いた。彼の追い込まれた様子に蓮も「まぁね」と相槌を打つ。
普段、正樹や蓮にしろ、提出物を送れて出すのは日常茶飯事であった。だが、今回は赤点覚悟のテストの埋め合わせなるプリントは絶対に出さなければならず、二人とも真剣に取り組んでいた。
『でも、お前はいいじゃんか。立花がいるんだし』
突如、正樹は弥生の名前を出す。
「――ん? あいつが何?」
困惑気味に蓮は首を傾げる。
『だって、立花って頭いいんだろ。だったら、お前は見せてもらえるじゃん。実は俺もそれを期待してんだよ。ついでに見せてもらおうって』
「あ~、それ、絶対にダメだ」
期待に声を弾ませる正樹に蓮は間髪入れず断言する。
『なんでだよ。お前だってそれぐらいは考えてたんだろ。いいじゃんか』
すかさず正樹は怒った様子で声を荒げる。
うるさくてスマホを耳から放し、正樹の文句が治まってからスマホを耳に当てる。
「あいつはそういうのって嫌いなんだよ。自分のことは自分できっちりやれって、変なところで強情な奴なんだ」
『嘘だろ? お前ら付き合ってるんじゃないの?』
「付き合ってるとかは関係ないの。だから無理。僕だってもう何回も連絡してるけどダメだったし」
答えながら蓮はうつむきながらかぶりを振る。
弥生の強情にそっぽを向く顔を意識の片隅に思い浮かべ、胡坐を掻いてプリントを眺めた。
『そうなのか?』
耳元では途方に暮れて、傷心した様子で嘆く正樹の声が空しく木霊する。
『なぁ、じゃぁ他に当てはあるか?』
「そう言われてもなぁ。ってか、そういうのは、お前の方が得意じゃん」
提出物の空欄をどう埋めるべきか、しばらく議論が続いた。とはいえ、誰かにプリントを見せてもらえる当てはあるか、という話が主ではあったけれど。




