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第12話 手紙

ユイが死んだ。



 連絡が来たのは朝だった。



 スマホの通知。



 短い文章。



『佐々木ユイさんが亡くなりました』



 それだけだった。



 私は画面を見つめる。



 意味が分からない。



 理解したくない。



 理解できない。




 だって。



 数日前まで。



 普通に話していた。



 笑っていた。



 星を見ていた。




 なのに。



 死んだ?




「嘘」



 声が出た。



 でも。



 誰も否定しなかった。




 私は学校を休んだ。



 布団に潜った。



 スマホの電源を切った。




 何も考えたくなかった。




 でも。



 考えてしまう。




 最後に交わした会話。



 最後に見た笑顔。



 最後に見た後ろ姿。




 全部。



 最後だった。




 私は泣かなかった。




 泣けなかった。




 だって。



 怒っていたから。




「なんで」




 呟く。




「なんで私に言わなかったの」




 余命。



 病気。



 苦しみ。




 何も知らなかった。




 親友なのに。




「なんで」




 そして。



 もっと嫌な感情が浮かぶ。




「なんでめぐるくんだったの」




 自分でも最低だと思った。




 でも。



 消えなかった。




 ユイは死んだ。



 なのに。



 私はまだ。



 そのことを気にしていた。




 数日後。



 学校へ行く。



 机の上に封筒が置かれていた。




 私の名前。



 見覚えのある字。




 ユイだった。




 手が震える。



 封を開ける。




 一枚の便箋。




 アユへ



 それだけで。



 視界が滲んだ。




 たぶんこの手紙を読んでいる頃には私はいません。


 だから先に謝ります。


 ごめんなさい。



 胸が苦しい。



 続きを読む。



 私は嘘をついていました。



 知っていた。



 そんな気がしていた。




 めぐる先輩のこと。


 本当は好きじゃありません。



 息が止まる。




 先輩は優しい人です。


 でも好きではありません。



 文字が揺れる。



 読めない。



 それでも読む。




 私が好きだったのは最初から一人です。



 心臓が大きく鳴る。




 病院で歌ってくれた日から。



 あの日。



 翼をください。



 あの歌。




 私はずっとアユが好きでした。



 世界が止まった。




 何も聞こえない。



 何も見えない。




 ただ。



 その一文だけが。



 頭の中で響いていた。




 でも言えませんでした。


 だって怖かったから。



 私は可愛いと言われてきました。


 でも本当は何もありません。



 歌しかありませんでした。


 でも歌もアユの方が好きでした。



 涙が落ちる。




 アユは私を羨んでいたかもしれません。


 でも私はアユを羨んでいました。



 勉強ができて。


 強くて。


 優しくて。


 自分の足で立っていて。



 私はずっと。


 アユになりたかった。



 便箋が濡れる。




 だから天文部へ入りました。



 読む手が止まる。




 星が好きだったからじゃありません。


 アユが好きだったからです。



 嗚咽が漏れる。




 ごめんなさい。


 めぐる先輩を利用しました。


 アユを傷つけました。



 でも。


 それでも。


 最後まで好きでした。



 涙で文字が滲む。




 最後の一文。




 アユ。


 もう一度だけ。


 あなたの歌が聴きたかった。



 手紙が落ちる。



 床に広がる。




 私は動けなかった。




 気づいてしまったから。




 ユイは私を見ていなかった。



 私はユイを見ていなかった。




 それでも。



 好きだった。




 その事実だけが。



 どうしようもなく苦しかった。




 窓の外を見る。



 夕焼けだった。




 そして私は。



 何年ぶりか分からないほど久しぶりに。



 声を上げて泣いた。


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