2話 歩かない理由
第二章 歩かない理由
瑠夏は、ハイハイをするようになった。
つかまり立ちも、できるようになった。
そんなある日、兄のお嫁さんから相談を受けた。
「健診で、歩くのが遅いと言われたんだ」
赤ちゃんに関する知識なんて、当時のわたしにはほとんどなかった。
どのくらいの月齢で歩き始めるのかも、まったくわからなかった。
兄のお嫁さんは、病院を紹介されたらしい。
そこで医師の診断を受けた結果、発達障害の疑いはなく、足に障害があるわけでもないと言われたそうだ。
「この子は、まだ歩く意思がないだけなので安心してください。気になることがあれば、またご相談ください」
そう言われたと聞いて、少しほっとしたのを覚えている。
二歳を過ぎたころだっただろうか。
瑠夏は、自分の足で歩くようになった。
こんなにも愛おしい瑠夏が歩けるようになった。
それだけで、ただただ嬉しかった。
わたしにとって、瑠夏は初めての姪だった。
その頃、兄のお嫁さんは第二子を妊娠していた。
瑠夏を抱っこ紐で連れて、外を歩いたこともある。
ベビーカーを押して、何気ない道を一緒に進んだこともあった。
ただそれだけの時間なのに、
なぜか少しだけ、自分が大人になった気がしていた。
瑠夏は大人しい子だったけれど、いつもニコニコしていた。
わたしが瑠夏を連れて歩いているところを、母の友人が運転中に見かけたらしい。
「まるで昔のドラマを見ているようで、涙が出た」と言っていたと聞いた。
当時のわたしは童顔だったし、他の人から見れば、どこか不自然に見えたのかもしれない。
絵本をたくさん買って、何度も読み聞かせをした。
あの頃のわたしにとって、瑠夏の成長は、ただ眩しいものだった。




