8・口カテナチオ
「まず名乗るのが礼儀というものだろうこのミニブタが! はぁんそうかお前も名乗っていないだろうと言いたいのか生意気な新玉ねぎ野郎がそうかだったら教えてやろう! 吾輩は黒戒騎士団のジャスタネールだどうだ言ったぞなぜまだ答えないんだ貴様反逆野郎!!」
「答える暇ないです! あなた、どこで息継ぎしてるんすか!!」
「馬鹿者喋りながら呼吸するぐらい難しくないぞこの愚かな吾輩ですら苦も無く習得したのだから今すぐ覚えろさんにいいちはい大丈夫どうした返事が無いぞサーと言え貴様舐めているのか舐めているのなら吾輩の靴を舐めさせてやろうか嫌むしろご褒美だな吾輩の靴を舐めたがるブタが多くて困る!!」
ダメだ。マジで止まらない。
壊れたラジオみたいになってる。
ファルソーダ先生も入れず困っているし、エルピに至っては我関せずとジャグリングしている。
語気を強めて僅かな隙が出来た時に体をねじ入れるしかない。
カテナナチオをこじ開けろ。
「どうしたブウブウ鳴かないの――」
「俺はサバウロ!! 人型神器の持ち主です!!」
「よろしい! 貴様にも喋れる口があったということか喜ばしいぞブタのような臭い息だったら許さないところだがそうでもないのでひと安心だというのも――」
「調査に呼ばれたそうなので答えたいのですが何を聞きたいのですか!!」
「グッドだツチブタ! 初めからそういう態度に出ればこちらも優しく対応してやろうというものだがずいぶん時間がかかったなここは時間の進みが遅いのか? おお、そういおう神器の【スキル】とは言うまい――」
「俺の神器は人型に変形してなんか好き勝手動くだけです!!」
「えー。ちゃんと命令に従いますよう」
「命令に従う! 素晴らしき哉これに勝る美徳なしと言えようからならばその神器はそれだけで評価に値しようが残念ながら前例なきがゆえにそれを額面通りに聞いてやるわけにもいかんのだツチブタ! ゆえに吾輩が来たのだ貴様がミニブタかツチブタか豚肉か見定めるためにな命が惜しければ正直に答えるがいいぞ!!」
「貴方の中のブタランクはわかりませんが、とりあえず座って話しませんか!」
「貴様吾輩に意見できる立場と思っているのかだがしかし吾輩は狭量ではないというところも見せねばなるまいからその申し出は受けようではないかおいそこで寝ているお前茶でも入れてこい!!」
倒れていたボーゲのケツをブーツで容赦なく蹴り飛ばすジャスタネール。
「ほぎゃ!!」
「黒戒騎士団たる吾輩の前で寝そべるなどいい度胸だ気に入ったぞなどと言われると思ったか逆張り豚肉!! とっとと働かねばベーコンにして豚小屋に投げ込み共食いさせてやるぞわかったか!!」
「わ、私はこいつの神器に襲われて――」
「喧しい!! 人が話している途中で割り込んでくるなど常識も知らんのか礼儀知らずの腐った豚肉野郎今すぐ茶を入れてこないとそのカツラを引きはがし残る僅かな毛も抜きつくしてくれるぞ!!」
「ひぃ!? 入れます入れてきます~~~~!!!」
ボーゲは泣きながら走って行った。
小声で「何でカツラだとバレたんだ……」とか言ってたが、まぁ……みんな知ってる。
俺は令和を生きていたから敢えて指摘したりはしなかったが……。
「で、では、中にどうぞ」
ようやくファルソーダ先生が会話の隙間に入ることができ、ジャスタネールを中に戻した。
「なんかめんどくさそうなので、ボクはパスしますね」
「は?」
「他の二人に働かせればいいじゃないですか。ボクばっかり働くの、納得いきません。っていうかギャラリーのいないところはプロとして嫌でーす」
ぷくう、と頬を膨らませたかと思いきや、次の瞬間今度はフーセンガムを膨らませ、それがパンと弾けたら箱に戻っていた。
「……野郎」
問題児の代理人になった気分だ。
っていうか、何のプロだ。
ナダレの奴もボイコットを宣言してたし、残るは青い箱だが……。
「今の聞いてたよな?」
つついてみるが、青い箱は反応しない。
「だよなあ……」
「……別に、働かないとは言ってない……」
「えっ!?」
期待すらしていなかったので本気で驚いてしまった。
青い箱、お前は俺の味方か。
「でも、うるさい人苦手……だから、本当に必要な時だけ助ける……」
箱から聞こえて来る物静かな女の子の声は、それで途切れた。
「……まぁ、頑張るか」
「おい、何をしている早く入らないかそれとも同じ部屋の空気は吸いたくないとでも言うつもりかいい度胸だな気に入ったツチブタうちの実家に来て姉たちと寝ていいぞよりどりみどりだ嬉しいだろうわかったらさっさと入ってこい!!」
なんだかよくわからないが、ボーゲのおっさんよりは評価が高いうちに、何とかお茶を濁さないとな……。




