7・黒戒騎士団
「人型神器の件は上でも大騒ぎになっていてな……」
ファルソーダ先生は俺を引き連れて校舎内を歩きながら、短い髪をがしがしとかく。
周囲の学生も野次馬的な視線を向けている……。
「すいません」
「お前が謝るこっちゃねえだろ。あんなもん予想できるか」
「でも乱闘は責任がありますし」
「それはそうだ。反省しろ」
ゴン、とげんこつが頭に落ちて来る。
おお、懐かしい衝撃だ。
令和の日本にはもうなかったからな……。
「覆面どもは学内警察に引き渡しといたから、そっちはいいとして……」
学内警察というと日本の感覚だと想像もつかないが、海外ではスクールポリスが常駐しているというのもよくある話だ。
国武専も、武器を扱う学校であることから、学内に警察機構を持つ。
比較的独立性が高く、貴族寮はともかく特待寮の力も及びにくいとはされる。
これで鎮静化してくれればいいが。
「そもそも私が来たのはお前に呼び出しがかかったからでな」
「呼び出しと言うと?」
「もちろん人型神器の件だ。だが、前例がなさ過ぎて、その呼び出しにすら正式な名称がつけられんのだ。規定されている調査でも査問でもないしな……。
一番近いのは【伝承神器】発見時の手続きくらいだ」
「げっ」
【伝承神器】は、極めて特殊な神器だ。
普通、神器は個人に授けられるものであり、そのため、持ち主の死とともに箱に戻る。
箱はそのままでは神器にはならず、粘土のように形を変えるだけ。
すなわち、国武専でテストに使われているあれだ。
それを神器ダンジョンに戻しておくと、新たな人間用の箱になる。
これが、神器のサイクルだ。
だが、【伝承神器】はこれを逸脱する。
規格外の性能を誇り、持ち手が亡くなったあともこの世に残り続ける。
世界あるいは神が、この世に残すに値すると決めたとされるもの。
「めんどくさそ~……」
「面倒くさそうではない。面倒なんだ。
何しろ、黒戒騎士団が乗り込んで来たからな」
「はぁ!?」
黒戒騎士団は、一般に想像される騎士である国権騎士団とは異なる。
特高警察のような存在で、国権騎士団を白騎士、黒戒騎士団を黒騎士とも呼ぶ。
子どもをしつける際にも、「黒騎士が来るぞ」というように恐れられている。
「だから、気をつけろよ。下手なことは言うな」
「は、はい」
「奴らを刺激したら、命はないと思え」
そうして、呼び出しを受けた会議室に近づいたその時――
「ほんげゃーーーーっ!?」
会議室のドアをぶち破り、人間が吹っ飛んできた。
「な、何だ!? 誰だ!? あっ、ボーゲかお前!?」
たしかにぶん殴られたのか顔の形こそ変わっているが、ボーゲ教官だ!
「何が起き――」
続いてドアの無くなった部屋から姿を現したのは、ピエロ姿の少女。
「あ、マスター」
「お前かよおおおおおおおおおおおおおお!!! 何やってんだあああああああああ!!」
エルピは、拳をさすりながら、悪気なく笑う。
「いやー、マスターでもない癖に、ボクを開こうとするんですもん。そりゃあ、ぶちのめしますよ」
「マスターだと!!」
と、続けて中から飛び出して来たのは、漆黒の――ボンテージに近い――制服を着て、制帽を被った長身の女。
どう見ても、黒戒騎士団員だった。
ああ、詰んだ……。
「どういうことか説明しろ!! 即答えろのろまで愚図のドン亀のミニブタ野郎!! ケツから口まで腕を突っ込まれて生まれて来たことを後悔させられたくなければ今すぐ答えんかこの貧弱もやしキュウリなすび野郎が!!」
黒戒騎士団員は、マテラッツィもかくやという怒涛の勢いで暴言を吐いてきた。
「何だ貴様!! 口を家に忘れて来たのかそうかそれなら取りに帰ることを許してやらなくもないぞただしその場合は死体袋に詰めてだがな!! 嫌ならさっさと答えんかこのでくの棒を超えたうどの大木唐変木がらくた野郎!!」
いや、流石に答える暇がないって!!




