6・才能とどや顔と
「ひとつお見舞いしちゃおうかねぇ」
ナダレが刀をくるりと返し、刃と峰を入れ替える。
「働くのは好きじゃあないんで、自分から当たりに来てくれると助かるなぁ」
「ふざけんな!!」
ハンマー男が突っ込んでくる。
その突進は、なんらかの【身体強化】スキルを発動させているのがわかる。
よく見れば、体に光の粒子が纏わりついているからだ。
光の強さ的に、初級のスキルと思われる。
なぜ戦闘中にそんなことを冷静に見れているのか。
それは――
「ほい」
格が違うからだ。
「かっ!?」
ハンマー男は大きくハンマーを振り上げたところに、顎を剣先でコツンと跳ね上げられ、即座に昏倒した。
最小限の動きで、脳を揺らされたのだ。
ちょっと動きを見ただけでわかる、ステージの違い。
1部リーグ……いや、下手したら代表クラスと草サッカーくらい違う。
「は?」
ナイフを持った男が呆気に取られているうちに、すたすたと無造作に近づいていくナダレ。
「え? あっ」
そのこめかみを剣先がかすめた……ように見えた。
実際には数ミリ当たっていたのだろう。
ナイフ男も何もできないまま昏倒する。
「お、おい、嘘だろ!? 起きろって!!」
三節棍を半ばで斬られ、短い棒と化していた男だけが残され、慌てふためいている。
「やべえよ! もうカネはもらってんだぞ!!??」
賭け試合でギャングの指示を破ってしまった選手のように、かわいそうなくらい狼狽えている。
そんな状態で振り下ろされる剣を防げるはずもなく。
「あがっ」
あっという間に、三人とも叩きのめされてしまった。
「す、すごい……」
思わず声が漏れる。
エルピの技術も凄かったが、ナダレのそれからはセンスを感じさせる。
異常な力の抜け感というか。
これは、他人が教えるのが難しいものだ。
こういう選手にはごく稀に出会う。
すぐ上のカテゴリに上がり、とんとん拍子で代表まで行った奴とか――
「どうかねぇ、マスターくぅん」
どや顔も代表クラスだ。
普通に美人なのに、喋り方やどや顔にエグみありすぎる。
「た、助かった。ありがとう」
「初回サービスだよぉ。しばらく休みはもらうからね。よろしく~」
くるりと宙返りをすると、逆再生のように折りたたまれ、小さな箱に戻る。
クセは強いが有能。
監督の腕が試されるタイプだな……。
……監督か。
色々思い出すが、今はそれよりこの始末をどうするかだ。
謹慎しているはずの男と、倒れている覆面の男たち。
「おい、お前何してる!」
鋭い声が響いた。
この声には覚えがある。
「あー、いい。だいたいわかった……」
頭を抱えているのは、ベリーショートで引きしまった体の女性、ファルソーダ先生。
我らが担任だった。
騒ぎを聞きつけたのだろう。
それだけ感覚が人より優れているということでもある。
「ボーゲの野郎……!!」
先生は怒りのままにそばにあった寮の壁を殴りつけた。
ぼごっと穴が開く。
「……そいつらがやったことにしてくれるか?」
俺は、目の前でファウルを見たのに流すホームゲームの審判のように、頷いた……。




