4・乱闘慣れ
「バカな!!??」
【スキル:エクスプロージョン】を、あっさり切り裂いて現れたエルピに、ツィニキートが憤慨する。
そりゃあ、神器を得てすぐ【スキル】を発動できるなんて、神童と言っていい。
調子に乗ってもおかしくないし、普通は無双できてしまうはずだ。
それが破られたのだから、そうもなるか。
「卑怯だぞ!! 訓練は一対一だろ!!」
ワイロは卑怯じゃないのかい?
そう言ってやりたいが、言ったとて、という話でもある。
「っていうか、誰ねその女!!?? どこの女と!!??」
なんかハイ・ヴォルクが憤慨している。
「ボクはマスターの武器! 人型神器なのです!」
片足を上げて、Y字にしたままくるくると回るエルピ。
「人型神器? そんなものあるわけねえだろ! このイカレ仮装が!!」
ツィニキートは追及するより怒りのまま斬りかかるのを選んだ。
だが、大振りなそれは当たらない。
「ほっほっほっ」
エルピはバク転を繰り返し、間合いを取りながら翻弄する。
「舐めやがってーーーー!!」
怒り狂うツィニキートは、爆発を次々と放った。
一振りするたびに、爆炎がエルピに向かって飛んでいく。
だが、直線的すぎる。
「エルピ! サイドに開け!!」
「りょりょのりょ!!」
エルピは、大きく足を開いて回転し、その遠心力でサイドに飛び出す。
華麗かつ素早いその動きに、ツィニキートは追いつけない。
爆発の【スキル】は見た目こそ派手だが、それゆえに、着弾が自分からは見えないという致命的な欠点があるようだ。
爆炎に遮られたその先に、エルピはもういない。
「くっそーーー!!」
外から間合いを詰めようとするエルピを迎撃しようとするも、その動きはフェイントで爆炎が彼女を捉えることはない。
中を伺いながら奥に向かう、なかなか巧みなフェイントだ。
ピエロだけあって人の心理を読むのが上手いのかもしれない。
肉体の【強化】系スキルも発動しているであろうツィニキートを完全に手玉に取っている。
ところで、明後日の方向に飛んだ爆炎は野次馬を吹っ飛ばした。
流石に初級スキルで死にはしないだろうが――
「長引かせると被害が出る! 早く決めちまえ!」
「あいあいさー!」
エルピは両腕を交叉し、黒鉄のナタを構える。
「必殺~!」
「殺すなよ!」
「必殺だけど殺しませんよ~からの、断頭台シュート!」
エルピの両手からナタが放り投げられる!
それは空飛ぶ回転のこぎりのようにも見えた。
「ひいいいい!?」
飛んでくる刃物に驚愕し、悲鳴を上げて逃げ出すツィニキート。
だが、その先は塀だ。
逃げ場を誤ったツィニキートの首に、二本のナタが襲い掛かる。
「あ、あひいいいいい!!??」
が、ナタはぴったり柄の部分を交叉させてツィニキートの首を壁に縫い付けた。
流石にヒヤリとしたが、狙い通りらしくエルピは得意げに笑っている……。
ナタの刃が壁に刺さっているので、とても抜け出せないだろう。
そもそも、そんな元気があるかどうか……。
……というか、かわいそうに。
……ズボンに大きな染みができている……。
「あちゃー、やりすぎちゃいましたねー」
帽子の上から頭をかくエルピ。
「ああ、やりすぎだ。やりすぎはたいていロクな結果を生まん」
昔、とある試合で大量リードしたら、対戦相手のメンバーやサポーターはもちろん、賭けをしていた奴らが多数大損してキレて襲い掛かって来たことがあった。
調子に乗ってバイシクル決めた瞬間、発煙筒が投げ込まれたからな。
南米の下部だと珍しくはないが。
「ええと……これって、サバウロの勝ちなのか?」
ゲータがぽつりと言う。
「おい、煽るな」
そんなつもりはないのだろうが、これはよくない流れだ。
「特待寮のエースに勝ったってことか……?」
誰かが言った。
それに呼応するように、一般寮生たちの歓声が上がった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「【スキル】持ちに勝ったああああああああああああああ!!」
「ツィニキートざまああああああああああああああああ!!」
大騒ぎが始まる。
特待寮生に勝てることは珍しいが、別に皆無というほどでもない。
前にも言ったが、腕もさることながら金持ち相手に勝つのも面倒が多いというのもあって、遠慮している面もある。
だが、【スキル】持ちに勝ったというのは、意味が違う。
いわゆるジャイアントキリングというやつだ。
おまけにツィニキートが嫌われていたというのも大きいだろう。
入学してまだ一月足らずで、奴の横暴に被害を受けた一般寮生は多いのだ。
だからと言って、このノリはまずい。
「調子に乗るなよ貧乏人どもが!!」
「そうだ!! あんなもの反則だ!!」
「人型の武器なんかあるわけがない!! どうせあいつが雇った傭兵だろう!!」
「そうだそうだ!!」
案の定、特待寮の奴らが騒ぎ始めた。
「サバウロはそげな卑怯なことばせん!!」
「俺らに傭兵雇うカネなんかねーよ!! 矛盾してんだよバーカ!! 自分たちの言ってることもわからねーんですかぁ? おっかしいな~特待生なのにね~~!!」
「だからやめろゲータ!!」
お調子者だとは思っていたが、こいつもだいぶ溜まってたんだな!!
止めに入ったが、時すでに遅し。
「貧乏人があああああああああああ!!」
特待寮の一人が、槍を持って飛び出した。
「やるかあ!!??」
するとこちらからも喧嘩っ早い奴が飛び出す。
それに呼応するように、双方からどんどん人が飛び出して来る。
意外とハイ・ヴォルクも真っ先に飛び出している。
ボーゲ教官は……我関せずといった様子だ。
こうなると、もう止められない。
特待寮と一般二寮の乱闘が始まった。
下手に武器を持っている分、サッカーのそれより危ない。
「ふーっ……仕方ないか」
「マスター、どうしたんですか?」
「みんながケガする前にぶちのめす」
乱闘には慣れている。
南米仕込みの削りテクニックを教えてやろう。
「なんか、楽しそうですねマスター」




