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24・【鷹の目】

 アイロの指さす先にあるシャンデリアは、古ぼけていて何の変哲もないように見える。


「何だ? あそこに何かいるのか?」

「違う。あれが本体」

「なに?」


 そう言われて見ても、おかしな点は見当たらない。

 だが、アイロが嘘をつくとも思えない。


「よく見て、こんなに激しく戦っているのに、あ(・)そ(・)こ(・)だ(・)け(・)無(・)事(・)す(・)ぎ(・)る(・)」

「あ」


 大暴れする鎧によって、あちこちが破壊され、天井からも崩落が起き始めている。

 しかし、そのシャンデリアの周りは、確かに不自然なほどきれいに残っていた。


「なにより、揺(・)れ(・)て(・)な(・)い(・)。

 まるで、踏ん張っているみたいに」

「!」


 本当だ……!

 不自然なほど揺れていない!

 つまり、小さな魔物がシャンデリアに隠れているのではなく、シャンデリアそのものが魔物……!!

 

「流石だアイロ!! この混戦の中、よく見つけた!!」

「これは私の新しいスキル【鷹の目(ホークアイ)】」


 ホークアイか!

 サッカーでも同じ名前のシステムがある。

 高台から複数のカメラで三次元に分析するゴールラインテクノロジーだ。

 アイロには、それに匹敵する分析力があるというのか。


「でも、視界が散ってこれ使ってると、銃で狙えない。

 少し解除に時間がかかる」

「よしわかった!

 エルピ!! あのシャンデリアを破壊しろ!!」

「あいあいさー!!」


 エルピが鎧から距離を取り、両手にナタ剣を構える。

 ことそこに至り、シャンデリアの魔物も気づかれたことに気づかれたのだろう。

 急に揺れ始めた。

 そして――


「キィイイイイイ!!」


 シャンデリアがうごめき、ろうそくを立てるための上部の針がひっくり返って牙となって油のよだれを垂らし、装飾のクリスタルがらんらんと輝く目へと変じる。

 いわばシャンデリアのミミックだ。


「擬態してやがったのか!」

「手品はタネが割れたら無力なのです!!」


 エルピがナタ剣を一本ぶん投げる。

 ミミックは目を光らせ、シャンデリアのパーツである鎖を生き物のように動かした。

 それでナタ剣を絡めとってしまう。


 金属を操れるのか……!

 だから鎧はがらんどうなのに動いていたんだな!

 だとすればナタ剣も操れそうなものだが、神器の所有権を奪えないのだろう。

 続けて鎧の破片を浮かび上がらせ、即席の槍として放ってくる。

 無数の槍がエルピを襲うが――


「一手遅い」


 【鷹の目】を解除したアイロがそれを全て撃ち落とした。

 更に、アイロの護衛を解いてナダレが地を滑るように前に出る。


「エルピの!」


 ナダレが腹を見せるように刀を振り、それにエルピが合わせる。

 刀の振りに合わせてその腹を蹴って飛んだのだ!

 まるでスルーパスに合わせるような見事な連携に息を飲む。

 飛び上がったエルピへ鎖が伸ばされるが、彼女は笑った。


「【サーカスの火吹き男】!」


 絡めとっていた方のナタ剣が火を噴き上げた。


「ギイイイイイイイ!?」


 驚愕し、気を取られたミミック。

 その間に、なんとエルピは鎖の上を走って一気に距離を詰めていた!


「行け―――――――――っ!!」

 

 エルピはわざわざ一度振り返って叫ぶ俺を見て、にっこりと笑う。

 そして、もう一本のナタ剣をミミックの脳天に叩き込んだ。


「ギェエエエエエエエエエエエエエ!!」


 断末魔とともに、天井からミミックがずるりと抜けて落下していく。

 エルピはまるで柱を降りる消防士のように一緒に落ちて来ると、床との激突寸前、軽やかにジャンプ。

 そして空中で綺麗に横回転すると、バレエのようにふんわりと着地。

 深々と頭を下げた。

 しばらく下げていたが――


「あれ? 万雷の拍手はないんですか?」


 本当に不思議そうに、顔を上げた。

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