25・あとしまつ
ミミックを倒した後、流石に俺たちは廃魔城を後にした。
本来は最後の玉座の間にまで行かなくては完了にはならないのだが、あまりの危険度の高さに撤退を決めたのだ。
【スキル】覚醒という目的は達したので、最低限の結果は得たと言っていい。
サルルバーンは、「いくらなんでも敵が強すぎる。たぶん、僕をうとましく思うとる奴が仕組んだんやろな。殺そうとしてたとしか思えんわ」と、あっけらかんと言った。
怒りがないのか、それとも通り越しているのかはわからない。
「先輩がそんなに恨まれているとは……」
「出る杭は叩かれる……とは言うが、まぁ気に食わん奴は多いはずや。
僕に学年主席取られた貴族寮の奴らとかな。
巻き込んでゴメンな」
と、頭を下げて来る。
「いえ!
俺は俺で恨まれてますから……」
「やろなあ。
人型神器なんか使こうとるんやし」
真摯な謝罪をしたと思ったら、ケロッと元に戻る。
切り替えの早さは一流の証明だが、それにしたって早い……。
まぁ、切り替えれずに報復してカードをもらうような方がよっぽど厄介なタイプだからいいが……。
「とにかく、僕はこれを仕掛けた奴を見つけ出して、きちんとお返しはしとくわ。
君はどうするんや?」
「さぁ……流れに任せますよ」
腰のブロックをさする。
ブロックヒロインたちは、戦闘で消耗して眠っている。
彼女らを引いてから、怒涛の流れに巻き込まれているわけだが、だからと言って放り出す気はない。
つまり、流されるしかないのだ。
「流れねえ……
案外、君の方が流れを作っとるんかもしれへんよ?」
「え?」
「僕の経験上、才能ゆうんは周りを捻じ曲げて行くもんやからな」
「そう、ですかね……」
言われて、心臓が跳ねた。
そうだ。
ブラジル代表クラスの奴なんかがまさにそうだ。
そのチームの戦術なんか、そいつに合わせて変わって行く。
伝統のチームですら、そのスタイルを変えるのだ。
才能とはそういうものだ。
だからこそ、自分がそのレベルにあるとは到底思えないが……。
「気ぃつけや。
敵ばっかやないで。
周りに影響を与えすぎるんも、幸せなことやないからな……」
「……肝に銘じます」
話ながら帰路につき、寮の前で別れたが、床についてからもサルルバーンの言葉を反芻していた。
「……才能……か。
これがそうなのかはわからないが……今まで持ったこともなかったから、どうしたらいいかわからないな……」
*
数日後、貴族寮の寮生数名が退学処分になっていた。
これは滅多にないことだ。
サルルバーンを亡き者にしようとした者たちだったのだろうか。
ともあれ、これで彼も安心できるのではないか。
そう思っていたのだが――
「卒業後は国戒騎士団行くことになったわ」
校内でばったり出会った彼はそう言った。
「え?
国権騎士団が内定してたんじゃ……」
「……そうやったんやけどな。
ちょっとやりすぎたわ。
取引みたいなもんやな……」
サルルバーンは笑っていたが、その笑みにはどこか影があった。
「ま、キミも上手くやるんやで……
キミを送り込んだんは、どうも僕とは別口みたいやったから……」
「……!」
この時、サルルバーンが忠告してくれた裏にあるものは、直後新たな陰謀を仕掛けて来ることになる――




