20・懺悔と首なし騎士
首なし騎士が、古代ローマの戦車のようなものに乗って突っ込んで来る。
その戦車を引いているのは、二頭の骨の馬である。
前世のデュラハンとは見た目が多少違うが、そもそも世界が違う。
だが、はっきりしているのはあれが並のモンスターではないということだ。
なんなら、ドラゴンゾンビより――
「逃げてもええで」
鎌を構えたサルルバーンが言った。
「逃げはしませんが、場所が悪すぎます!」
デュラハンが到着する前に、手近な部屋に飛び込む。
そこも魔物の詰め所らしく、蜘蛛の巣こそ張ってはいるが、十分な広さがあった。
狭い廊下で戦車と戦うのは無茶だ。
ここなら、まだ戦いやすい。
俺とヒロインズは先に入ったが、サルルバーンがついてこない。
「サルルバーンさん!」
部屋から顔を出してみると、サルルバーンが壁を蹴って戦車の突進をかわしているところだった。
「ゴメンな」
「え?」
「こんなヤバイ敵がおるのに送り込まれたのはボクのせいや!」
何を言ってるんだ……?
答えが出るより前に、サルルバーンはそのまま上からデュラハンを狙っていく。
鎌とデュラハンの持つ円錐の槍が激突し、火花が散る。
「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
デュラハンが空洞を通る風のような声――おそらく胴体から出ている――を上げ、槍を振り回す。
その勢いたるや。
「うおおおおっ!?」
サルルバーンが吹っ飛ばされる!
「ごふっ!?」
狭い廊下で、そのまま壁に叩きつけられるサルルバーン!
石壁に磔にされるように背中を打ち付けられて、あれでは呼吸もままならない!
「まずい! アイロ!」
「わかってる……!」
部屋から飛び出したアイロがデュラハンを連続で銃撃する。
全て命中したが、多少怯ませる効果しかない。
それも仕方ない。
急所である頭がないのだ。
また、神器ある世界の歪さというか、この世界には火薬銃はないが、光線銃は存在する。
だが、それは基本的には鎧を貫通出来るほどの威力はないのだ。
「名誉挽回。ボクの出番だね!」
「ああ、頼む!」
代わって飛び出していくエルピ。
あの鉄板のようなナタなら、鎧にも十分ダメージを与えられる。
「ナダレ! エルピの援護を頼む!」
「あーい、承知ぃ! でも、拙者が決めちゃうかもよぉ?」
「それならそれでいい! とにかく相手の守備に的を絞らせるな!」
「任されよ~!!」
続けてナダレが飛びこんでいく。
FW二枚を前線に張り付かせるようなやり方だが、攻撃こそ最大の防御。
サルルバーンが痛んでいる間、そちらから注意を引きはがさないといけない。
こんな時、俺自身に出来ることがなくてじれったいが、その分、冷静に状況を見極めないといけない。
「敵のチャージに気をつけろ! タックルが来たら、エリア外に出てもいい!!」
「他の部屋に逃げ込めってこと? りょーかい!!」
エルピが両手にナタを持ち、くるくると回転して突っ込む。
と、見せかけて体勢を低くし、骸骨馬の脚を払った!
「うまい!」
馬の前脚一本が砕け、これで戦車は突進力をかなりい失ったはずだ。
「OOOOOOOOOOO!!」
怒りのデュラハンが槍をエルピに突き出す。
咄嗟に壁に張り付いたエルピの真横を、唸りを上げて槍が通過する。
「あぶあぶ!」
「カウンターに気をつけろ!! 一発でやられるぞ!!」
その槍の引き戻しの隙を使い、今度はナダレがカウンターを仕掛ける。
「今度はこっちなのよぉ!」
ナダレの刀が一閃。
反対の馬の片足を斬り飛ばす。
これで二頭とも動きが制限される!
やりやがった!
と、思った次の瞬間――
「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
デュラハンが絶叫して戦車を飛び下りた。
そしてそのまま両足で二頭の馬を踏み潰す。
骨が砕ける激しい音が鳴りやまぬうちに、ナダレに向かって突っ込んだ!
「しまっ――」
ナダレの反応も間に合わない。
デュラハンは槍のリーチの内側とみて、そのまま体当たりをした!
「ぐあっ!?」
「ナダレっ!?」
勢いよく吹っ飛ばされたナダレが、交通事故のような勢いで俺の顔の横を飛んでいく。
それに気を取られた隙に、デュラハンがこっちに突っ込んで来ていた!
全身に寒気が走る……!
いち早く気づいたアイロが銃撃を繰り返すが、その勢いを止められない。
「させないですよぅ!!」
壁を跳ねて回り込み、立ちふさがるエルピ。
だが、デュラハンはそれを待っていたのだ……!
思い切り地面を踏みしめ、激しい振動を起こす!
そして、エルピの体が浮いたところに、槍を突き入れた!
「エルピ!」
だが、エルピはにやりと笑った。
なんと、空中で箱に変身。
一気に小さくなることで、槍をかわした!
「A?」
何が起きたかわかっていないデュラハン。
箱のまま、少しだけ展開させてその勢いで転がり、デュラハンの懐に入り込むと、一気に変形!
死角となった――首がないのでそんなものがあるのかはわからないが――真下から、ナタで切り上げる。
クリティカルヒットと言っていい一撃が、デュラハンの鎧を大きく切り裂いた!
「GAAAAAA!?」
「必殺フェイントアタック!! の、巻!!」
思わず拍手をしてしまう。
【スキル】とは無関係の、あまりに見事な攻撃!
常人の発想を超える自由さ……ファンタジスタ!
「いいぞ!!」
「へへん、もっと褒めて……ってええっ!?」
エルピが切り裂いた個所から、凄まじい勢いで、黒い靄が噴き出した――




